短編2
◇蒼影の追憶_3:(コラボA/波瀾万丈&双碧の花篝夢主)
組手をした時も、屋根で言葉を交わした時も、豊穣祭の時も、出雲の地下でも、何回も、何回も。
警鐘を鳴らしていたのだろう。
(でも……“気づいていたことに気づけなかった”。きみの欠点は、その、強すぎるほどの理性。)
直球に見える言葉にわずかに罠を仕掛ける巧みさ、ものは言い様と茶化す時でさえ、人の裏をかく物言いを生み出すのは、まぎれもない理性。それが、哉伊の中に潜む動物的警戒心を抑え込んで、今回のことに気が付けなかった。
アナに手を引かれながら走っている最中、煌々と浮かぶ満月を見上げる。
あの、屋根で見た月と変わらない。世界に蒼だけを残すその月は、いつかこの双蒼の手をとってくれるだろうか。す、と満月に手を伸ばしてみても、やはりいつも通りに届かない。
伸ばしても誰にも取られることのない手は、虚空を掻くばかり。
(どうして………誰も………)
「──……気づかないかなあ」
哉伊は、覚えているだろうか。あの、上田が最初に襲撃を受けた日のできごとを。
神楽殿であの男と刃を交えた、佐助、才蔵の傷を治癒の力で治して、哉伊の折れているらしい左手を見せてほしい、と、ボクが手を差し出した時のことを。
あの時、哉伊は折れた左手ではなく、無事な右手を突きだしてきた。そして、治癒の力を使いすぎていたボクの胸ぐらを掴んで、引き寄せて。あろうことか、頭突きをかましてきたのだ。『気に食わねぇ』と言いながら。
既に力の使いすぎで体力のなかったボクはその一撃で気を失ったけれど、気絶する間際。ふらりと後ろに倒れかかって空を掻いたボクの右手を、哉伊が引き留めた。
『文句は後で聞いてやる』
その言葉を最後に、ボクは意識を闇の底に手放したけれど。君の、少し熱い右手は、ボクの右手を、確かに掴んでいた―――
「なにか言ったナナシ?」
アナスタシアの声で、はっ、と現実に引き戻された。満月の夜はどうにも、過ぎた日々を追憶してしまう。
「……なんでもないよ、急ごう。才蔵が追ってきているはずだ」
「分かってるわ」
そう言うと、ナナシの腕を引くアナスタシアの握力が少し強まって、直ぐにスピードが増した。
――金と、蒼。
ふたつの星は、真っ黒い、
どこか青みを残した、漆黒、
そんな森の夜陰に向かって、
消えていった。
その夜陰目掛けて、
強烈な光と、鮮烈な火炎が、
迫っていたが、
それはまた、別のお噺―――
(完)
あとがき
ながくなりました!!
とても!!
今回のコラボ小説は、
1、お互いに台詞(ト書き付き)を書く
2、1を交換する
3、もらった台詞に地の文をつける
というコラボだったんですが、ちょくちょく台詞変えたし追加したしト書きにないエピソード追加したし、いつも通りに地の文書いていたらすげぇ長くなりましたてへぺろ!!!
長くなるから台詞は60個までにしようって、お互いに台詞書く前に制限かけたのに増やしたとかバカなのかなバカですね!!汲々はバカです!
組手と頭突きはト書きも台詞もなかったのに付け足しましたちぇけら!
こんな感じでいいのか甚だ不安ですが!!
ありがとう鴇!! こんなシリアスの中でも哉伊はなんだかギャグ顔で舞台に立ってた気がするよ!!
Thank You Reeding!!
2014.03.20. 汲々
以下コラボ挿絵。
(ちなみに勝手に追加したシーン)
(クリックで大きめ画像)
背景色アリ版↓
らくがきで申し訳ないです。
鴇、コラボしてくれてありがとう!
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