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仮にドエス─4
はあ……っ茶野くんに会って、新作コスおすすめして、ええと影浦さんまだご飯かな……。
「ってなんで捜してんのおおおお!!」
ハッ……!
これはもしや、もう調教済み!?
「さっきの騒ぎさあ、影浦さん彼女バカにされて暴力したんでしょ!?」  
「でもさ、彼女ならなんで処女なの? そんな噂だったじゃん? 意外とピュア男子?」
ヒィイ角の向こうからえらい誤解な会話がああ処女は合ってますけど!!
こ、ここは彼女じゃないんですよ〜て、否定した方が……?
「どっちにしろポイント没収じゃん?」
「でも、デコ腫れたくらいしか怪我もなかったし、風間さんが忍田さんに事情について進言したとかでさ、
そんなに取られないんじゃない?」
風間さんそっか……事情を説明してくれたんだきっと。
私も行かなきゃ!


「ああ、風間から事情は聞いてる。若い隊員が多いからな。じゃれあいで済ませてやってもいいが──
交際してる女性を庇うという男気のある行為だったとしても、手を出したのは事実だ」
本部長の判断はやっぱり──。
「厳重注意と千ポイントの剥奪とする」
「そんな……でも! 影浦さんは悪くな……っ手を出しちゃったのはやっぱり、悪かったですけど、でも、
私が原因でもあったので、じゃあ、代わりに私の給与をカットとかできないんですか……っ!?」
「それは全く見当違いの処分だ、船津広報員」
うう、そんな……!
私だってこれでもボーダーだから解るけど、でも……!
影浦さんに、暴力とかして欲しくないって思って……。
さっきも影浦さんにダメですそんなのって言ったけど、そう思うけど、でも……!
実際に処分があるなんて、思い知らされる──悪口言った人たちが悪いのにって、
でも、暴力は……
あああ頭の中が混乱して、でも、なんか悔しいよ──。
「船津広報員」
「……っはい」
はっとして顔を上げたら──
忍田さんも沢村さんも微笑ましい感じで見守ってらっしゃるような……。
「そんなにも案ずる君だから、そんな君を見下されて、影浦も手を出す程に見境を失ったんだろう」
「え……」
「風間君も言ってたわ、処分云々を解っていながら影浦隊員は許せなかったんだろうって」
沢村さん──。
「そんな影浦自身が許さないだろう、君の給与差し引きなどな」
影浦さん、あんなにつっけんどんなのに、沁みるよ、ぶっきらぼうな気持ちの奥の何かが。──
私、いつも怖がったり、うるさくしてるだけなのに──。
「こう言うのは何だが、影浦の実力なら千ポイントをじきに取り戻せるだろう。──影浦は
過激な面もあるが、君が手綱を引いてやれば少しは落ち着くかもしれない」
え──そんな、まさか、
「手綱ですかそんなあああ!! ムリムリ絶対ムリですよ私如きが影浦さんをコントロールするなんてええ!!」
「だが、交際してるんだろう」
「してませんー! あ、あの、誤解でして……それらの噂というか……」
「なんだそうだったのか」
あれ、一瞬しんとして──けど、忍田さんはあっさりそう言って、
沢村さんはくすりて笑ってる──!?
「あ、あの……」
「影浦君は貴方の為に怒って、貴方は彼の為にここに来た。庇いあったのは事実よね」
「そ、そうなるんでしょうか……知り合ったばかりでして……影浦さん、私なんかの為に
怒らなくてもよかったのに……」
なんか年上のお二人に微笑ましいかんじで見られてるような……!
「ああっ、根付さんから及び戻しが……っ」
「ああ、戻るといい」
「此度は不躾にすみませんでした! 失礼致します……っ」
はあ……っ結局庇うことはできなかったけど──。
──庇いあったのは事実よね。
気持ちを汲んでそう言ってくれたんだろう沢村さんの言葉がありがたかった。──
──君を見下されて、影浦も手を出す程に見境を失ったんだろう。
忍田さんの言葉が残る。
影浦さんの顔思い出したら、なんかまたきゅってなった──胸が。




事件があったけど、結局は陰口叩いた人も眉を顰められたみたいで──。
私は基地を歩いてればたまに視線を感じる程度。
「影浦さん、今日、防衛任務入ってるのかな……」
ハッ!
知らないうちに捜してるとか〜!
やっぱ順調に調教済み!?
とか、あんまばたばた騒げないっていうか……。
影浦さんが怒った理由に心が動かされたのかな、やっぱり。
暴力はダメだけど〜! でも!
私のこと、ただの奴隷パンツとか思ってないのかなあ。
とか自惚れたら怒られそう! ヒィイ!
でも、昨夜も全然乙女ゲ進まなかったなあ──。
影浦さんのこと、考えちゃって。
「うわ、影浦さんじゃね」
「げっ……ポイント少し取られたってマジ?」
そんな会話が聞こえて、角の向こうに顔を出したら──。
「あ! いたぁああ!」
ソファに座ってる影浦さん。
なんか、駆け寄っちゃう──。
「影浦さん……っ」
「あ?」
「うわー! 今日も順調にやっぱり怖い!」
やっぱりビビッちゃうこの眼光にぃ〜!
「ノッケからうるせえんだよ何か用か」
「なにって、影浦さん……あのですね……まだ誤解してる人たちも多いんじゃないでしょうか……あの、私達が付き合っているのではという……」
「で? どっかのバカが誤解したから何だってんだ? おまえ如きが俺に影響するワケねーだろが」
うう! キレてらっしゃるー!
「すすすすみませんでしたぁあー! でも、いいんですか……? 私も今度見かけたら否定
しておきますけど……できる限り」
「ほっとけ」
「えええー! 否定しないと私に彼氏できないじゃないですか! って、あれ……?」
思わず言っちゃったけど──。
でも、誰かに恋したいとか、きゅんきゅんな彼氏をいつか……! とか、いつも思ってるのに……
はて、今はあんまり思わないような……。
「オイ、ボケてんじゃねーぞバカ処女パンツ、誰がおまえと付き合うってんだ? ああ? オイ、言ってみろ」
「ヒィイ酷い! 怖くて酷い! そこまで言うことないじゃないですかー!」
うう、その眼光が、口元が怖い……!
「おい、こっち来いテメー」
「う、なんですか……既に一メートルくらいの距離に居るのに!?」
「もっとだよ」
──あっ……腕、引き寄せられるとか、嘘、
「なぁああああーっ!?」
うあぁあ影浦さんに突進する形でソファにずどん──とか何? 何!?
「ななっ……影浦さん、痛く、な……っうあ、腕、離……っ」
して欲しいの欲しくないの自分!?
離してくれないし思いっきり寄りかかっちゃってる体勢だしどうしたらああ!
「暴れてんじゃねーよ、言うこと聞けるよなあ?」
「間近に狂気フェイスヒィイ怖いー! て、あれ……うあ、誰かが見てる……! ちょっと本格的に
誤解されちゃうじゃないですか!」
「誤解がなけりゃ言い寄ってくる奴いんのかよ?」
「う……いるわけが……うう……でも、影浦さんに寄りたい女の子は居るかもしれないじゃないですか〜!」
もう目が回るよ顔が熱いよ心臓ばくばくだよ、そう、目、回りそうなのに……。
「おもしれーなあ」
間近なニヤリをばっちり見てしまったああ!
心臓が……っ!
「おもしろいって……ナニがですか〜!」
影浦さんは私を掴んだまま、寄りかからせたまま──ぐるっと首を回して、通りすがりとか、
ぎょっとしてるっぽい誰かを見た。
「あいつら全員、おまえにゃ俺の歯型がついてると思ってるわけだ」
「うう! 傷モンになった覚えはありません!」
「してやろうか、なあ」
「なな……」
が、がしがし、か、噛みつかれちゃうの!?
あ、影浦さん、ぱっと解放してくれた──けど、
「じゃあなバカ処女パンツ」
「え? はい、また……! って、あれ? バカ処女パンツ呼びに慣らされてるー!?」
ヒィイ! 影浦さんはアホ女、って言いたげニヤリ残して、すんなり行っちゃうし……。
あ、やっぱりこれから防衛任務なのかな。
「はあ……っもう、刺激が……」
強すぎる影浦さんとの会話っていうか……絡み!?
はあ……っ影浦さんは私如きが影響するかバカって言ってたけど……好きな子とか居……たら、
私なんかをからかう暇もないよね、それに──。
──君を見下されて、影浦も手を出す程に見境を失ったんだろう。
忍田さんがそう言ってたみたいに──。
ほんとは少しは気に掛けてくれてるのかな、ただのバカ処女パンツ枠だとしても。
それともただ、無粋なこと言ってる人たちが不快だっただけ?
バカにされたことなんかどうでもいいけど、気になってしまって──。


明日、聞いてみようかな──。


「あ? 覚えてねーんだよんなモンいちいちよ」
「うぁあ……やっぱりなんか予想してたお答えー!!」
影浦さんを発見して、恐る恐る聞いてみたけどやっぱり!
「わかりましたよ……誰か他の人に聞いてみることにします、風間さんとか……」
え……なんで、影浦さん、いきなり、
「あの、そんなに、怒ること、ですか……?」
ていうか怖い! ギリギリ歯から音がしてきそうで怖い!
「おまえんなモン気にしねえっつったよなあ?」
「そりゃそうですけど……っでも、影浦さんが何であんなに怒ったのか知りたいんです!」
はぁ……っどうにか伝わったかな?
「おまえにカンケーねーだろが?」
「あるじゃないですか〜!! もう! だいたい私の悪口で影浦さんがあんなに……っどうして……って
思ったら、具体的にどんな醜聞叩かれてたのかな、とか……」
あ、一瞬しんとして──しつけーなこの女! って思われてんのかな。
「はーっ……バカか」
「バカですけどおお!!」
あ、影浦さん、めちゃくちゃ、まっすぐ見つめて、くるし──引き込まれそう。
「あの……」
「あの女処女だのなんだの自分で叫んでたぜ、なんかキモくね? なのに影浦と付き合ってるっつーしヤられてんじゃねーのかどっちにしろ笑えるぜ──んな事言ってたって、言えば満足か? ああオイ?」
あ──なんでだろう、この気持ち、
「ごめんなさい……影浦さんだっていちいちぶり返して喋りたくなかった、ですよね……」
何やってんだろ、自分──なんでだろ、影浦さん、きっと、
「あの……っ私がいくら気にしないって言っても、気遣って、くれて、覚えてないって言った、んですか……?」
何でだろう、そう思えるのは──。
──君を見下されて影浦も手を出す程に見境を失ったんだろう。
そう、きっと、そんな人だから。
「ごめんなさい、自惚れて、ますか……っでも、正直、影浦さんの気持ちは嬉し、いっていうか……っあの、暴力ダメ
とか思うけど、でも……っ怖いだけの人じゃないって、私は思っ……」
「おまえマジで自分のことどーでもいいのな」
「えっ……それは……」
影浦さんは、くしゃっと髪をかき乱して──呆れてる?
やってられっかって感じ?
「キメェだの何だの言われても、おまえ自身は気にしてねーんだろーが結局」
「えっ……だってキモ? いはショックですけど、で、でもキモイとこもありますかね……っ
うう、この歳で処女ってキモイんですかね……そんな事ないって信じてますけどおお!!
た、確かにどんびきされるかもですけど、でも、うーん、他にキモイ言ったら、たまに一人で
ぐふふとか笑ってる時ありますし……やっぱキモイですかね!? っしょ、処女なのは事実ですが……
ああっ! 影浦さんと付き合ってないのも事実ですが!」
うう、影浦さん、ただ見つめてくるし〜!
なんか、そんなに見つめられると緊張しちゃうよ……。
「あの、だから、私は、ちょっと叩かれたくらいじゃ気にしないので……っ」
「キレた俺がバカみてーだってか?」
「そんなこと絶対に思いません!!」
あ、やば、おっきい声出しちゃったし──。
一瞬、しんとして──
「あ、の、でも、私はどうでもいいですけど……影浦さんまでバカにされたのは……嫌だなって
思いましたけど……」
なんでだろ、そこだけ、やっぱり伝えたい。
私の為に怒ったなんて、認めないんだろうけど、それでも、影浦さんちゃんと、
「いじわるでも、バカにしたとしても、私を見下したり、しないので……影浦さんは」
伝わるかな、伝わって欲しい──なんでだろ、怖がるより、伝わって、今は。
間近で見詰め合っても、怖くなんかない──今は。
「必死すぎんだろおまえ」
「なっ!!」
途端に影浦さん、いつもの調子だし〜!!
「そ、そりゃ、必死になりますよ! 私は叩かれたってどーでもいいけど、怒った
影浦さんの気持ちまでどーでもいいなんて思いませんから〜!!」
「うるせーなマジで」
「うあああなんでですかああごめんなさい!」
やっぱ怖い!
「えっ……」
距離、近──。
「うるせーんだよ、ガンガン叫びやがって、バカか」
「なっ……バカですけど!? あっ! 言っちゃった自分で!!」
なな、今度はお腹を抱えて笑ってらっさるー!?
「俺のクソ能力なんか、あってもなくても、カンケーねーわおまえには」
「え……能力……ってなんですか?」
「だーからあってもなくてもカンケーねーっつってんだろバカ処女パンツ」
「あああまた言いましたね!!」
あ、影浦さん、行っちゃう──。
「いっつもいつも丸わかりなんだよハラん中が」
くっと笑って──。
むむ? 
「確かに単純ですけど……」
あ、影浦さん、くはって笑って、行っちゃう。
うーん、怖いとこもあるけど、怖くないとこも、見えるっていうか……そんな影浦さん。
私みたいな”バカ処女パンツ”の悪口言ってた人に怒った影浦さん。
つっけんどんだけど、やっぱり私をからかっても、見下したりはしない──そんな影浦さん。
能力ってなんだろう──。


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