仲直りっていうか……また話せるようになってよかった。

「あー昨日の？　今度呼べって言われたんだけどードコよ？」
「週末じゃないと集まり悪っ」

クラスの誰かのそんな会話──けど、星海くんはこういう話し方しないなあ、もっとクールなかんじ。
でも、たまに表情崩して、年相応？　なとことか、好きだなあ。──

「星海は？　合コンとかヒマないっしょ？」

なな、興味深い話題がここに──！？

「ねえよ。あっても行くか！」

クラスの男子にカタブツ？　なんてからかわれて星海くんがちょっと応戦してた。
合コンかあ──。
もしも合コンに──もしも、万が一──！　そんな充実した社交場に私がお呼ばれしちゃうなんて事があったら──！？

──鈴花ちゃんてどんなんがタイプ？
──はっ……はい！　星海くんみたいに宇宙で一番凄い人を……尊敬しています！
──尊敬ちゃうくてな、タイプ訊いとるやん。
──はっ……はい！　星海くんみたいにまっすぐ、目を見て……自信を……自負がある人を尊敬します！
──あかんな、この子。

うん、あかんされてもいいくらいの星海くんに対する憧れ……！

「船津サンは？　女子メンツも後一人足りないんだけど、そういうの興味ないっけ？」

なな、なんとお呼ばれされている──！？

「わ、私は……っそういう社交場は……っというか、私は……っ」
「ぶはは社交場て！　やっぱ来ない？　カラオケ行くくらいだと思うけど」
「いいやあのしかし……っ」

な、慣れてない……！　合コンなんて行ったこともない……！

「あのしかして、ウケる」
「そそ、そう、なんだ……」

笑われている！？
でも、ウケたのならいいのかな？

「でも、私、尊敬してる人がいて……その人に一生懸命というか……っやっぱり合コンとか考えられず……ご、ごめんなさい……っ」
「んな気合い入れて断んなくても」

またちょっと笑われてしまった！？
いきなり誘って悪かったな、って気さくに言ってくれた彼に感謝……！
ちょっと落ち着いたら即効だった。

「誰だよ」
「……っえ？」

星海くんにそう訊かれたのは。──星海くんはまっすぐ見てる、睨むくらいに。

「……っ尊敬してるヤツだよ！」
「星海くんだよ！」
「……っおう」

頷いてもそっぽをちらっとして、私を睨む。

「尊敬してるだけなら別に惚れたとかいうワケじゃねえだろ」

惚れる──！？
瞬間、なんか感情がぶわってなって、星海くんから目が逸らせないくらい。──
なんだろう、すっごい、ドキドキしてきた。──

「そっか……こんなに、大好きなのに、大好き以上……？」
「何っ……言ってんだ！」
「ごめんなさいー！」

なんだろう、今までで、過去最上級のこのドキドキは──。

「惚れ……ってすき、だよね……ならそうなのかな！？　だって大好きなんだよ！」
「声でけえ──！！」
「ごめんなさい──！！」

はぁ……っ先生来てしまった。
授業、集中しないと……っ！
ちらっと見たら目が合った。
星海くんはぷいって逸らしたけど、いやな感じじゃない、最近わかってきた、照れてる感じの──。
かわいいな、バレーやってる時はかっこいいな。
やっぱり大好きだな。──




お昼に友達とお弁当食べてたその日、星海くんが食堂から戻ってきた。──

「あっ……ごめん星海。座っちゃってた」

私の友達は星海くんの席に座ってたから、慌てて立ち上がった。

「別に構わねえけど……船津、まだ食ってたのかよ。そういや俺が食堂から戻ってきて、まだ食ってる時、しょっちゅうじゃねえか」
「そうそう、鈴花食べるの遅くってさ」

友達はちょっと笑ってる。

「よ、よく噛んで食べないと……！　ダイエットの為にも……！」
「最近ちょくちょく気にしてんよね。前より太ったワケでもないんでしょ？」
「そうだけど……っ少しはね、身軽にならないと！」

ふう、残りちょっとだ、後一口、二口……っ！

「……っはあっ！　ごちそうさまでした！　おいしかったあー！」

お茶を飲んだり、水のみ場行ったりした後、そろそろ授業だねって言って友達は席に戻ってく。

「ダイエットってなんだよ」
「え？」

星海くんがちらっと睨んでる？

「ダイエットって……あの、食事制限をしたり、お菓子断ちをしたり、運動したりすることで……」
「そうじゃねえよ！　んでダイエットなんかしてんだって訊いてんだ！」
「えっ……と、それは……あの、言い辛いっていうか、恥ずかしいんだけど……」

でも、星海くんの眼力の前じゃ全部見透かされそう。

「あの、星海くんがこないだ言ってたでしょ？　廊下で私がハンカチ貰って、授業ギリで戻ってきた時に……私が走るの遅くて謝ったら、それならそれで担いでやるって……」
「……おう、言ったな……ってソレが原因かよ！」
「う、うん……っ実際に担がれる場面はないと思うけど……っでも、想像したら、私そんな軽くないのにって思っちゃって……思っちゃったら、気になりだしちゃって……」

星海くんは微妙な顔、してる──。

「バカか」
「えええ！」
「お前が今のままでも十分担げんだよ俺は。ナメんじゃねえ」

そ、そっか、それで微妙な顔をしたんだね！

「ナメてないよ私が勝手に気にしただけ！　そうだよね星海くんあれだけ凄いサーブ打てるんだもん、パワーもめちゃくちゃあるよね！」
「当然だろが。だから無茶なダイエットとかすんじゃねえ」
「無茶はしてないよ！　プリンとか断ってるだけで……」
「お前は何でもかんでも突っ走りそーでしんぱ……」

──い、してんだよって小さく聞こえた。

「ありがとう。太らない程度に気をつけるくらいにしておくね」
「おう」

心配してくれたなんて、星海くん、いい人すぎるよ……！

「でもね！　今週二キロ減ったんだよ！　多分初期ボーナス的なアレで……っだけど！」
「体脂肪減らなきゃ意味ねえ！」
「そうだよね……っやっぱり運動かあ……腹筋をね！　二十回できるようになったんだよ！」
「自慢になってねえからなそれ！」
「わ……わかってるけど……！　進化を褒めたい……自分の……！」
「ったく、無茶して首だの痛めるんじゃねえぞ」
「はい！　隊長！」

あっ！　思わず隊長って呼んでしまった……っいつもは心の中でなのに！

「なんだ隊長って！」
「だって星海くんみたいな隊長にカツ入れられたら、頑張れるよー」

うん、せっかく二十回できるようになったし、三十回目指しちゃおっかな！
褒めてくれるかなあ、ふん、よくやったな船津、とか言ってくれるかな！？

「ムキムキになっちゃったらどうしよう！？」

あれ？　星海くんは顔を背けてしま……っあれ？　ひょっとして。

「わ、笑ってる！？」
「想像させんな……っ船津、おまえ……」
「だ、だいじょうぶだよ！　そんなにもムキムキにはなれないよ！」
「……っプロテインとか飲みだすんじゃねえぞ」
「やっぱり笑ってる！？　飲まないから……っうわああ先生きたっ」

起立礼したけど、その間も星海くんはちょっとツボに入っちゃったみたいに笑い堪えてる。

「星海どうしたー肩震えてるぞー」
「……っいえ」

先生にきりっとそう答えて、事なきを得て、私をちらっと見て、また噴出しそうになってた。
──けど、ノートに何か書いて、それを私にぱっと見せた。

──そのままのお前でいいからな？　わかったか！

そう、おっきく書いてあった。──
思わず笑顔になっちゃうよ。星海くん、そう思ってくれて。──
ほわほわする。満たされる、すごく嬉しい。──

授業が終わった後にありがとうって言ったら星海くんはちょっと耳たぶを赤くしてた。
きざなこと言っちまった、なんて口を尖らせながら。