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追いかけたい背中──倉持 上の続き 2
よし、よし、ついに安寧の地をゲット〜!!
休み時間〜友達と席替え!

御幸君カッケーしてた友達は御幸君とちょろっと喋ったっぽい? よかったじゃん──。
あ、倉持くんが御幸君のとこに。
晴れて御幸君の前の席になった友達ともちょこっと喋ったっぽい。
私は苦手がってるけど、友達は物怖じしないタイプだし、倉持くんを怖がったりしないし、よかった──。
お目当ての御幸君ともちょっとだけ楽しく喋ってるみたいだし。
よし、そろそろ次の授業だし。
「えっ……」
倉持くんが私の席の方にずんずん近づいてくる。
私は、冷や汗なんてもんじゃない。
な、何故に!?
忘れてた、失念してた──。
友達にチェンジしてもらったこの席、ここ、倉持くんの隣だったァアア!!


は、はひ……。
思わずヘンな声が出ちゃう。
ここは安寧の地なんかじゃなかった〜!
私の友達は「あ、そういえばゴメン忘れてた倉持隣だったわ」て顔してて察したみたいだけど、席替えを激しく希望したの私だし、友達は全然悪くなんかない。
けど、休み時間に避けたら今度は授業で避けられない。
左サイドに倉持くんが〜!!

まあ授業中はなんてことないし。
落ち着き取り戻して、よし、休み時間になった。
さっさと離脱離脱──。
別に話しかけてはこないと思うけど、また御幸くんのとこ行くのかもだけど。
まあ、黙ってりゃ害もないし。
とりあえず次体育だし、ロッカーからジャージ……うわっ。
「うわあ!」
て、声に出ても、自分で唖然とするくらい──。
いきなり立ち上がった私のすぐ傍を通過しようとしたクラスメイトが居て、ぶつかってしまって、
「……っおい!」
後ろに転びそうになって、気がついた一瞬、耳元に倉持くんの声。──
「……っ大丈夫かよ?」
大丈夫、何事もなく大丈夫って宣言したいのに、その前に顔が顔が、赤面してないかな、大丈夫かなコレ──!?
倉持くんに腕ぐいっと引かれて、その膝の上におしり、乗せちゃってる。
隣の席から咄嗟に飛び込んで私を受け止めてくれた倉持くん、マーベラス──!

「いぎ……っ」
うわあああヘンな声出た!
「ご、ごめん……っうわぁああああ」
「いや、いいけどよ……あのままじゃ、自分の椅子にアタマぶつけそうだったろ」
そ、そうか、確かに──!
倉持くんはぱっと私を放して、何事もなかったように「平気か」って言ってくれて──ありがたいけど、けど、一瞬だけど、
細いだけかと思った脚とか、しっかりした感触があって、
腕も逞しくて──胸板も。
耳元に声、感じちゃったし。
うわあああああ。

「お、おも……っ重、かた、でしょ……っ」
私の日本語上手い具合にプリーズ〜!!
「なんつーことねえよ、そっちが大丈夫かよ」
「う、ん……ごめ……ん」
「おう」

なにそれ、輩かと思ってたら、ちょっと男らしいっていうか。
そう思った瞬間、とたんに照れちゃうの、なんで──。
「ご、ごめんっありがとっ」
うわートイレに非難〜!!
顔、赤くないよね……。
鏡に映ってんの、ありえないくらい、まっかっか──。


そういえば倉持くんの隣の席になったんだった──!
そうひしひし実感しながらもっかい謝ったり、「気にすんな」言われたり。
授業が始まって早速だった。──
「なに勝手に席替えてんだー戻れー」
先生に言われて結局元通り──。


あーあ休み時間また倉持くんを避けて離脱しなきゃいちいち……って私が遠慮することもないじゃんね、だよね。
でも、受け止めてくれた感触が残ってるみたいで、なんか照れる。──思い出したら恥ずい。

「あ、鈴花ー御幸君が言ってた、今日練習試合だってさ」
「あ、そうなんだ」
さあ、放課後になったし帰ろうとしたのに……なんで私まで見学するハメに!?

「せっかくだし付き合ってよ、席交換してやったろ〜」
「ありがと……っでも、まさか交換先が倉持くんの隣だったとは……」
「御幸君の近くになれんの嬉しくて一瞬忘れてたわ、ごめんごめん」
「まあ授業中はどうってワケでもないし……」
それにあんなマーベラスに私を助けてくれた倉持くん。
思い出したらやっぱり照れる。──

練習試合、後援会? とか近所の青道ファンの人も見にきてるっぽい。──
うわ、この背のおっきい女の人、記者さん!?
やっぱ強豪なんだな、すごい。──

「お、倉持さっそく出塁じゃん」
「うん……ていうか……」
なにこれ、なにあれ、走ったと思ったら──。

「すご……っはやっ!! うわああ〜!」
倉持くんはここでもやっぱりマーベラス。──
「チーター様!!」
「なにあの子おもしろっ!」
友達はおもしろがってて、早く御幸君打たないかなーとか言ってる。
すごい、倉持くん、足速すぎだよ──。
すごいよ、次のバッターも続くし野球部やっぱ強い。──

「あれ? そういえばなっちゃん……」
「え? テニスの?」
「じゃなくて、中学の時の同級生──あっ、いたいた」
久しぶりにちゃんと顔見れたあ──。
「あっ!」
そうこうしてるうちに倉持くんがまた走った──。
「うあっ! 速っ! うそぉおおお!?」
もう今日はびっくりさせられてばっかり。──

「かっこいと思った?」
「えっ!」
友達ににやりとされてビクッとなってしまった。 

「な、なんかヒャッハーしててヤンキーみたいなノリがやだ、けど……でも……足凄いなあ、ホント……」
なんかドキドキしてくる、させられる。
けどまだまだこんなもんじゃなかったなんて。──

「御幸君マスク姿かっこいーがんばれー!」
「倉持くんはショートか……野球のことはあんまわかんないけど……え!?」
早速なになに? その動き!? ハァ!?
「すげーピッチャーくんもすげー」
友達はそう言ってる、確かにそう、だけど、続いてのゲッツーとかなにアレ!?
「な、にあれ、あんな動きできるとか……」
ヤバイ、きてる。
「カッコイイ……」
素直にあふれ出るくらい、感激こみ上げてきちゃってる、倉持くんばっかり見ちゃってる。──

「げ、後輩にタイキックしてるし」
なのに、慕われてるっていうか、かわいがってるっぽいような──。
あんな動けて信頼があって、いい選手なんだな──。
結局最後まで見ちゃったじゃん。


「御幸君おつかれー」
友達は御幸君にそう声掛けてて、けど野球部はまだまだ練習みたいだ。
「……っ」
倉持君までこっち見たし。

「あっ……話すの久々」
「なっちゃん!」

マネ姿様んなってる〜!

「この後も練習なんだって?」
「みんなは練習終わってもまだやるよ、自主練とか」
「そっか……」

すげ、どおりであんなファインプレー? できるんだ。
さっき目が合った倉持くんは、一度キャップを取って、おでこの汗を拭って、また繰り出してく。──
真剣なんだな、輩とか思って申し訳なかったな、かっこよかったな──。



次の日だった。
私の席は御幸君のまん前のまんま。
御幸くんは朝からスコアシート? ブック? わかんないけど、とにかく見つめて、忙しいっぽい。
もしか、昨日練習試合があったから余計なんだろうな。
「ん?」
「あっ……」
つい、ちらちら振り返って見てしまった私に当然な御幸君のリアクション。
「練習試合の復習かと思って……」
「ま、そんなとこだけど──そういや昨日来てたよな」
「あ、うん……誘われて」
「なんだコイツ見に来たのかと思ったのに」
御幸くんが指差したのは、倉持っていう文字──。
「はぁあ!? んで私が倉持くんを見にいかなきゃなら……っそんなんじゃ……っ」
やば──大きな声出してしまった。
ふと見たら、ちょうど御幸君とこに来るんだったろう倉持くんが微妙な顔してて──。
当然聞かれたよね──。
あ、無言で振り返って、どっか行っちゃう──。
傷つけたー!?

「ど、どうしよう……だって別に倉持くんを見に行ったわけじゃないのはホントだし……」
御幸君はどこかのんびりして見守ってるような──でも、私はそれどころじゃない。
なんでこんな、焦るの、胸が痛むの。

「あああもう!」

「お、追いかけた」

どっか楽しそうな御幸君の声が背中に響いても、気を取られないくらい、倉持くんの背中を追いかけた。──

廊下に居た──!


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