[携帯モード] [URL送信]


小突いてみたい──国見 同クラ女子
高校入って、早速めんどくさいイベント発生。
林間学校ってなんだろうな、一体。──中学とかで終わりだろそういうの。
「部活あるからパスできるとかないの」
「お、練習したいのかよ」
金田一のやつ……浮かれてるし。

自然に触れあうとか何かを育むとかいう触れ込みの林間学校──ほんとめんどくさい。
でも、海なんかをぼけっと眺めるのもまあいいか。
最後の夜は肝試し大会するとかで、面倒だな──。
「男女でペア作って〜他のクラスの子とでもいいです」
はあ、何でわざわ女子とだよ。
周りは誰を誘うってなカンジで盛り上がってるけど。──
めんどくさいし、金田一でも誘うか。
「金田一、一緒行く?」
「えっ!?」
「なんだよせっかくの機会に乗っかりたいわけ、乗っかればいいじゃん、女に……」
「乗っかればっておま……っ」
金田一ピュアだな──。
俺はめんどくさい、いちいち女子と行くとかなんだそれ。
「でも、国見を誘いたそうな女子いるだろ」
「は?」
「ほら、けっこう可愛い子……見てるし」
えーあーそう。
なんかそわそわした感じで近づいてくるし。
普段からたまに話しかけてくる女子が。
普段からって言っても、入学してからまだ一週間くらいだけど。
「ねえねえ国見君さあ、一緒にどうかなって」
──甘ったるい声。
「あ、俺、こいつと回るから、肝試し」
「え? でも、男女でって……」
「まあ、そういう事なんで」
「もしかして……」
その女子は若干恐ろしげに去ってった。まあいいか。
「おい、なんか誤解されたんじゃ」
金田一がぶるっとしてる。
「大丈夫だろ別に。目当ての女子居るならさっさと話しかけに行けって。俺は適当にばっくれる。つか、一人で回ってもいいし」
「国見くん、一緒に行ける?」
あ、こいつって──。
話したことないけど。俺の前の方の席の女子だな。
そういえば、いつも授業中背筋伸びてるんだよな。──勉強熱心か。
「あー……そういうの面倒くさいし、他あたってもらえれば。例えばこいつとか」
「おい!」
金田一が焦って、この子はおまえを誘ってるのに、っつってる。
どっちにしろ俺はこういう女子の誘いとか面倒くさい。
「国見くんがいいんだけど。私もめんどくさいからさ」
ん? なんだそれ。──
「こういうの面倒くさいよね。国見くんだったら、余計なこと言わずにさっさと済ませてくれそうだし、どう? 私と。
ぱぱっと歩いて済ませよう」
「まあ、そういう事ならいいけど」
へえ、めんどくさくなさそうな女子でいいじゃん。
それに何より、
──余計なこと言わずにさっさと済ませてくれそう。
ってヤツが気に入るかも、少し。
       
金田一は結局他の女子と繰り出して、どっかで悲鳴あげてるっぽい。
俺もいざ、暗い林道に繰り出した──。
俺を誘った女子は──名前なんだっけ。
船津……だったか? まあいいや。
特に話すこともないし、向こうも無言だし。
それはそれで気ィ遣うような気もすっけど、
「あ、気遣わないで国見くんのペースでいいからね。さっさと済ませちゃおう」
「だな」
俺が特にそっち見なくても、すんなり隣歩いてるし、静かだ。
怖がったりもしないで、堂々と歩いてる。つうか歩くの速いな、女子にしては。
ふいに、夜の空気を切り裂きそうな声がどっかから聞こえてきた。──
「悲鳴だね」
「ゲ、やっぱオバケトラップあんのかよ……」
「やりすごすしかないね。……っわ」
「出た」
目の前を通過していったのは白い着物の女。
足はある。
「ふう、ちょっとびびった……」
船津だったかがそう言った。
「そうなんだ。びくともしないかと思った」
「えっなんで?」
船津だったかが首を傾げた。
「堂々と歩いてるし、怖がってなさそうじゃん」
「うーん、怖くはないけど、いきなり飛び出てこられると驚くね」
「まあな」
俺が頷いて、再び歩み始めた。
あんまりしんとするから、他の悲鳴とかがまたよく聞こえる。
脇道から、ゾンビみたいなのが襲い掛かってきた。
「……っうお」
さすがにビックリするだろ、これは。でも、
「うわああああああああああ」
船津だったかは悲鳴を上げて、俺の背中にしがみついてるし。──
「あっ! ごめん!」
慌てて離れてるし。
ゾンビは走り去って行ったけど、こいつ、まだ震えてる?
「しかみついちゃって、ごめん、国見くん……」
「別にいいけど……平気なフリして、実はものすごく怖いんだろ」
「そういう訳じゃ……っ」
お、なんか慌ててる。──
「……っく、なんかウケる」
「国見くん!?」
「だって、面倒くさいからさっさと済ませたいってクールに言ってたのに」
「いや、だって、面倒でしょ、こういうイベント……好きな男と歩くならまだしも」
「あーあー誘われた俺がスミマセン〜」
「そ、そういう意味じゃなくって……! 国見くん、やる気なさげに見えたから、どうでもいいからさっさと済ませたいって見えたからね、誘ったの!」
「その通りだけど、けっこうおもしれーかも」
「そ、そう?」
「俺の背中で震えてんの、なんかウケたし」
「そこ!?」
「じゃあ、ちょっと可愛かったって言えばいいわけ」
「お世辞求めてないし!」
「世辞なんか言うわけないじゃん、めんどくさー」
それにしても思い出しウケる。
クールさが崩壊したギャップが──今も、照れちゃってるし。
「船津だったっけ」
「そうだけど……」
「ま、可愛かったけどね」
「か、わいくなんか……っ」
ま、そのリアクションがおもしろいから、言ってみただけなんだけどね。
へえ、ちょっと目を逸らしてる。俺を意識してんの。なんて言ったら、また照れたりして。
いつもまっすぐな授業中のあの背中、シャーペンで小突いてみたらおもしろそう。


前へ
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!