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地球のこっち側──天童 マネヒロ 過去拍手
部活もちょうど休憩中だし、今のうちに渡しておこうかな。──

「あっ……牛島くん、今日ね、文化祭のカフェの試作品でお菓子作ったんだけど……クラスの子がこれ、
牛島くんに、渡してって」
「ああ、菓子か。ありがたいが──何を返したらいいだろうか」
「きっと牛島くんに食べてもらえたらそれだけで嬉しいと思うよ」
 瀬見くんが苦笑した。
「礼とかっつっても、こうも数多いとキリないよな」
「瀬見くんにも預かってきたよ」
「うお……っ俺にもかよ」
「獅音くんと山形くんにも渡してって頼まれたんだ」
「俺にもか、ありがたい」
「マジか」
 みんな快く受け取ってくれた。
 けど──
「あのさ……俺にも、ナンかナイのかな〜とか……思っちゃうワケですヨ……この流れ的にネ……?」
 天童くんがなんとも言えない顔で佇んでいて。
「腹が減っているのか」
 あっ……牛島くんのそれがトドメ刺しちゃった!?
「べつにいいケド!? 俺のファンとか今頃地球の裏側でケーキ焼いてっし? 駆けつけるのに何日か
かかってるだけじゃんか!?」
「て、天童くん、落ち着……っ」
「天童はブラジル辺りにも知り合いが居るのか?」
「牛島さんやめてあげてください!」
 白布くんが慌てて牛島くんを止めた。
「あっ、白布くんにも……渡してって頼まれてたんだ」
「あ、ありがとうござい、ます……」
 おいしく食べてくれたらきっと、渡してって頼んだ子も喜ぶよね。──
 自分で渡せたら何よりなんだろうけど、なかなか勇気って、出ない気持ち、やっぱりわかる。私も。──
「ちょ、賢二郎まで!? せめて工はコッチ側っしょ〜?」
 天童くんが工くんに手招きしてる……!
 う、どうしよう、実は──
「あ、あのね、工くんにも、渡してくれって頼まれて……」
「うぁああ嬉しいです! ありがとうございます!!」
「川西くんにも……っ」
「お……あざっす。三年女子の先輩からとか、緊張するっすね」
 よし、これで全部渡せた。──
「ちょ……俺だけナンもナイとか!」
「いや、地球の裏側からならばいささか時間がかかるだろう」
「若利もうやめてやってやれ!」
 瀬見くんが慌てて牛島くんに訴えた。
 今、私は──勇気出して、がんばれ。
「あ、あの、天童くんに、よかったら……これは私が作ったんだけど」
「え!? イイの!? イイの!?」
「……っうん……」
「ハァイ注目〜! SA! TO! RI! クン! 大! 勝! 利〜! いやいや地球の裏側の
俺のファンの子たちゴメンね〜?」
「調子よすぎだろ!」
 瀬見くんがつっこんで、忙しくなってしまったけれど、
「いただきまーす。一緒に食べヨ? 後で二人でさ」
 そう言われて、頷いた。


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