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白鳥沢動物園──マネヒロ 過去拍手
学校はお休みな週末。昼休憩では部員のみんなで昼食だ。
「工、わんこみたいにガッと食べるネ〜?」
「そうですかっ!? でもおいしいです! ぐぁ……っノドがっ」
「五色くん……っ水……っ」
「ずみませ……っ」
喉がつまっちゃった五色くんに水を渡して──私も早めに食べて午後に備えなきゃ。
「わん公? 工は意外と犬ってカンジ……でもなくね?」
「散歩で言う事きかずに飼い主を引き摺る犬とか」
瀬見くんに白布くんがそう言ったら、工くんが「そんなコトないです!」って言ってて。
少しの休憩時間、ちょっと和んでしまった。
「俺は〜? 動物に例えるなら、カワイイリス君とか〜?」
「天童はアレだな、猿とか」
「ウキ? って、もっとカッコイイのがイイ〜!」
瀬見くんにお猿さんの真似をしてみせた天童くんがちょっと可愛くってまた和んだ。
そうだ、例えるなら……。
「大平くんは名前の通りに、獅子かなあ」
「百獣の王キター」
大平くんは「いやいや船津」って笑ってる。
「若利くんは別に牛ってカンジじゃないじゃんか? 若利くんは若利クンてイキモノってカンジだよネ〜」
た、確かに……! 天童くんの言う事も解るかも。
「英太君は〜リスか、白系のワンコっぽい?」
「それなら白布だろ」
「じゃ、賢二郎チワワ〜」
「そんなに小さくないです」
「天童は蛇っぽい様でそうでもないよな」
「そんなヌルクネしてないよ覚クンは〜。アッ、隼人はさ〜凛々しいコアラ……? アッ! カッコイイカブトムシってカンジ!」
「虫かよ! 虫業界の王様じゃねえか!」
ごはんを食べてる今だけはみんな、全国区の選手って顔からふつうの高校生の顔に戻ってる。
やっぱりなんか、和んじゃう。──

「つうか俺、猿とか蛇とか! もっとカッコイイドウブツイメージ欲し〜!」
「そんなに欲しいんですか」
白布くんが残りのお味噌汁飲み干しながら、天童くんに訊いた。
「だってカッコイイだろ! こう! 登場した時に龍とか背景にあるカンジとか!」
「ハァ? ドラゴンとか一人でカッコよすぎだろ!」
瀬見くんがそう言って、
「架空の生物になってますしね」
川西くんがのほほんと箸を置いた。
「イイじゃんかナンか欲し〜! ねえねえ、鈴花ちゃんは? ナンかない?」
「えっ」
「俺のナンか、カッコイイドウブツイメージとか!」
どうしよう、いきなりふられてしまったけど──。
天童くんが動物さんだったら……うーんと……うーん……
「あっ……モモンガ……とか」
「ッモモンガ!?」
うあ! ハズしちゃったかな──!?
「モモンガて……っブファ!」
「ちょ、英太君笑いスギ!」
「モモンガって確か、夜行性らしいよ」
大平くんがにこやかに言ってて、
「森の木の実とか食べてるんですかね。なんかたまに違うものを食べてそうですが……」
「ちょ……っ太一! 俺って実はそんなそんなケモノじみてナイからネ!? 純粋に木の実とか食ってんじゃナイのモモンガとかって! 太一みたいに雑食じゃないからネ!?」
「モモンガやムササビは夜間、木から木へ縦横無尽に飛び回るらしい」
「若利君、ググんなくていーから!」
「でも、器用に狙って、縦横無尽に飛ぶとか……っていうと、天童くんのブロックみたい……かなて、思ったんだけど……」
「ホァッ! イイネそれイイ! 鈴花ちゃんアリガトー! モモンガ悪くねーカモ〜!」
でもそこで白布くんがちょこっと、笑いを堪えてた。
「必殺技にしたらいいんじゃないですか」
天童くんがはっとした。
「……っモモンガブロックとか!?」
「ぴったりだな」
大平君がにこやかにそう言った。

午後の練習、紅白戦ではさっそく、
「モモンガブローックゥウー!!」
天童くんが縦横無尽に飛んで必殺技を出して、牛島くんに打ち抜かれてしまって、
「覚ィイー!」
「天童くーん!」
監督と私の声が重なってしまった。
けど、
「鈴花ちゃんまたナンか俺の必殺技考えてね! ぜってーリベンジすっから!」
そんな天童くんがちょっとかわいかった。

「じゃあモモンガではなく、ムササビブロックというのはどうだ。同じく夜行性で肢体と胴体の間に飛行を可能にする膜があるらしい」
「若利君ググりすぎ!」
「あっ! 俺が白いワン公なら、いっそのこと白いオオカミとかどうよ!?」
「英太君オオカミてカッコよすぎ! 北の大地とかにいんの!?」
「でも、瀬見くん、ホワイトファングとかかっこいい……!」
「おう船津もこー言ってくれてっしいいだろ!」
「瀬見さんオオカミカッコイイです! じゃあ俺はシャチとかにします!」
鯱だなんて海のギャング……! 五色くん、かっこいいかも。
「工はペンギンとか〜」
「いっ!?」
でで、も、エンペラーとか居るし……っ五色くん元気出して……って言おうとしたら、すぐに天童くんにふられてしまった。
「鈴花ちゃん太一はナンだと思う〜?」
「ええと……カモシカとか、かな……」
「天然記念物ですね。ありがとうございます」
「モモンガて天然記念物じゃナイの?」
「天童さん自体が特別な何かなんじゃないですか」
「ちょっ賢二郎それ喜んでイイの!」
「モモンガとは昔、何者なのかわからん妖しの存在だと思われていたらしい」
「若利君まだググってたトカ!」
結局はわいわい騒いでしまって、こんな時ばっかりはめちゃくちゃ和んでしまう。
「ま、俺はモモンガでいーけどネ? 鈴花ちゃんはアライグマてカンジ〜」
「えっ!? あらいぐま……?」
「ホラ、マメにボトル洗ったり、あくせくちょこちょこ動いてるとこが〜」
う……あらいぐまさんかあ。
「ま、カワイイてコトで〜」
もう、天童くんにはなんか敵わないような気がして、
「アライグマもモモンガと同じく夜行性で、木の実などを好むらしい」
「うわ……っ牛島くん、まだぐぐってたとか……っ」
でも、天童くんはちょっとにやり──?
「気が合うよネ? 活動時間も食べ物も一緒とか〜」
な、なんかどきり、してしまう。
「だが、アライグマは小動物も好むらしい。意外と肉食か」
あ……牛島くんに真顔で訊かれて、どうしたら。
「あ、ええと……」
「え? マネちゃん肉食系女子? ロールキャベツ系?」
「そういうわけじゃ……」
「ま、噛み付いてきてもいいケド?」
う──天童くん。
「噛み千切られたら痛そうですね」
「ちょっ! 賢二郎さりげにスゴイ!」
噛み千切ったりはしないけど、そりゃ噛み付きもしないけど──。
なんか生い会話にヘンな想像をしてしまうとか、いけるけどいけなすぎ。


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