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知りたくなりました──2
騙されたのに、あの人は風紀委員長なんかじゃない筈なのに──
いや、騙されたのに知りたくなった名前。
なんで俺の名前知ってたんだろうか──って思ったら、微かな……これは期待なのか!?
とにもかくにも、だ!
見事に騙してくれたあの人になんで騙したんですかって何か言いたいというか、いや、俺はただ何か期待をしてるだけなのか!?
とにかく、騙されたまま引き下がれないこの気持ち!
です!
「……っ天童さんと同じクラスだよな……」
そう、休み時間来てしまった、三年の教室に。
う……乗り込むのも緊張するな、先輩達の教室は。
天童さんは居ないみたいだ。
ところであの人の姿も見えない、どっか行ってんだろうか。
「ん? コソコソ覗いてる怪しいやつ」
「あっ……!」
ばっと振り向いたら、教室の入り口に只今到着したらしき、この人──
「これは是非、風紀委員長が指導しないとね」
「っ違うじゃないですか!」
この人、ニセモノ風紀委員長さん──くっ……今日も俺を騙そうと!?
「……っもう、騙されませんよ俺は!」
「天童くんに用事?」
くっ、軽くいなされた感覚にだって俺は負けない!
「いえ……委員長さん……っじゃない! ニセモノ委員長さんにです!」
「私に用事? なあに? お礼参り?」
「あの……お礼参りってなんですか……?」
「……っはは」
ええ? わ、笑われてしまった!?
「リベンジしに来たの? ってこと」
「えっ!? 復讐とかしません! ただ騙されたので……ほんとはどんな人かと思って……」
教室に出入りする誰かが居て、俺は慌てて避けた。
その瞬間、ニセモノ風紀委員長さんは俺をさっと促した──。
「こっち」
「えっ、ハイ……っ」
「廊下、隅っこで」
確かにここなら、誰の邪魔にも──
「はい、手」
「え?」
「握って」
な──んで、この人にこにこしながら手を──
「あの、い、いんですか……?」
いきなり手とか、おい!
「いいから」
「あの、握ればいいん、ですか……?」
なんでだ!
でも、いいのか!?
「早く」
「……っこ、こうすれば、いいんです、か……」
ウォオオオオ女子の手を握ってしまったぞ俺──!!
「かたい?」
「いえっ、やわらかいです、けど……」
「そう、手はこんなかんじ。次はどこがいい?」
「あの……っ!?」
「どこに触る?」
「どこって、どこって、あの……っ」
「だってどんな人か知りたいんでしょ、私のこと」
「体の感触求めてるわけじゃないですからぁあああ」
「それはそれでなんかショックかも」
「なんでですか!」
「なんでだろう、触りたくもないって言われるとちょっと」
「そういうんじゃ……っただ、俺はどんな人か知りた……なんで制服の、あの、はずして……」
「ん? 感触はいらないなら、見てわかりやすいところから、どんなブラつけてるか、そこから」
そう、制服のリボンとかボタンとか──が、外されてゆくなんて。
「何してるんですかー!!」
俺はばっと目を背けた。
「こっち見て」
「見れませんとてもォオオ!」
なのに腕をくいっと引かれて、思わず見てしまっ……
「なっ……」
この人、シャツの下に、キャミ……着て……た……ました……。
騙された──!!
くそう! 騙されたのに、なのに……!
ただのキャミの筈が刺激テロすぎて俺は──!!
「じゃあ、温度は? どんな温度かなー」
今度は何だ、矢継ぎ早になんだなんなんだ、うぁあああ谷間があああ迫って──!?
「俺! 困りますから──!」
思わず肩を、その露出した肩をがしっとしてしまいました、
「すみませ……っ痛くなかったですかっ、でも……っあっ、誰か通って……きましたね! 俺の背中、隠れてシャツ着なおしてください!」
ただのキャミだろなんかTシャツの袖がないやつだろ、そうだろ工!
けど、刺激が強すぎて……そうだ、こんな刺激的な女子さんの格好を通りすがりの人に見せるワケには……っ!
「ねえ、ただのキャミだよ」
「だだ、って、そんな下着同然のぉお」
俺がせいいっぱい背中で隠しますから──!
「えっ」
その背中に、なんか、感触が──?
「私のおでこはこういう感触、あ、感触はいらないんだっけ、なら、こう」
おでこだったのか……とか、安心できる筈もなかったんだって思い知らされて──俺は。
「あ、なんで、あ、腕を。回し……」
俺の腰にあの、女の人の腕が──!!
「だってもっとくっつかないと、隠れられない」
うぉおおああそんなくっつかれると、背中に嬉しい感触が──!
「ぐぁ……っがっ、困ったことになるのでやめてください!」
「ん? 彼女とかに見られたらまずい? 大丈夫、背中に隠れてるから、こうして」
「あの──!!」
「ハァ? 工おまえナニして……」
疑問顔の先輩が俺には救世主に見えました。──
「瀬見さん……! あの、これはですね……ッあの、離してください!」
「そんなぎゅうっとしてない」
「でもォオオ」
「じゃあ離れる」
ぱっと……離れたら、刺激的な格好が瀬見さんにも見えてしまうじゃないですか──!
「俺の背中から出ちゃだめです!」
「ならやっぱこうしてる。ちょこっちょ、ぎゅうっと」
「うぁあああ」
胸がぁああ胸の感触がぁあああ!
「ダイレクトすぎてあの──!?」
「なんだ? 何がどうしてこうなった!? 彼女か!?」
瀬見さんもびっくりで俺もびっくりで、
「違いま……っ」
「そのワリに随分仲良いじゃねえの……」
「あの、早くシャツ、ボタン閉めてくださ……っ」
「なにしてんだ! おいもう授業」
「うわああ早く……っ」
「ん、はい、わかった、着なおした、シャツ」
ほっ……として振り返った、やっと、俺は。
「着なおしてないじゃないですか──! 下着同然全開じゃないですかぁあああまた騙された──!!」
「ボタン、やって」
「えええええ!?」
「おい、おい、おまえら」
「瀬見さん見ちゃだめです!」
「工だけなんでそんなクソ羨ましい状況だよ、どうなってんだ? おい」
「ええと、あの、ボタン閉めてあげたいんですが……っ指がうまく動きません……っ」
くっ……! 緊張か! これはもしかしてドキドキか工──!
もしも彼女の服を脱がせるなんて展開になったら──いやちょっと待て、その後だ、事後ってやつだ、そうなったら。
──ったく、そんなへたって自分でも服も着れないのおまえ。
とか、カッコつけてぱさっと服を渡してあげるという妄想をいつかした俺はなんだったんだ──!!
アレなのか!? ただの童貞なのか!? いや、そうだけども!
「ゆっくり、がんばれ」
今、目の前の女の人にそう促されて──。
手を握られて、震えそうだ、いっこずつ、ボタンどうにか、かけてあげていって。
リボンはひらっとなびいた。
「ありがとう、またね」
──っはい。
そんな声がかろうじて出ました、俺は──瀬見さんの突っ込みや事情聴取にも煙が出そうな顔で言及するしかできずに、撃沈です──。

教室に戻ってからも撃沈──授業がよく聞えない。
結局からかわれまくって帰ってきてしまったのか、からかわれたんだろうか。
でもあの人、
「またね」
って、言ってた。それを思い出したらなんでかそわそわする、夏休みのプール一番乗りしてえって計画練ってる時みたいにそわそわする、
これってわくわく──!?
なんで、俺は──いや、それより……
「ァアアア名前訊きそびれたぁあああ!」

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