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満足できない──松川 上の続き 21
ついてくしかできない。
コンビニ寄って、バスの中でも緊張しまくってガッチガチだし……っ
「あ……っあの、私、もしも松川くんちに遊び行けるとしたら……ちゃんと何か、お菓子とか作って、持ってきたいなとか、思って、たんだけど……」
「いきなり誘ったからな、俺が」
あと、気ィ、遣わんで。
そう言う松川くんはさりげに言うのに、ちょこっと目を逸らした、照れてる合図ってやっぱりわかるのは、手、きゅってしてくれるから。──
バスの席、隣同士。
「小さい箱買ったりとかな──すまん、やるの前提みたいになってるし」
「えっ!? いいよべつに!?」
あ──!!
なに、言っ……自分で、自分から、そんな、
「あ、あの、べつにとか、そういう簡単なのじゃなくって……った、だ、松川くん、だったら……っ」
バスの席、隣同士。
私のバックには松川君専用お弁当箱が入ってて、松川くんのスクバにはコンビニで買ったお菓子少しと、ジュース少しと、小さい箱と──。
松川くんが手、きゅっとしてくれた。
「松川くんだったら、いいから……あの、それだけ、」
「なんかごめん、突っ走って”家に連れてくんでゴム買ってくね”とか性急すぎつうかなー」
「……っううん」
そう言うだけ、それしか選択肢ありえすぎて、どうなっちゃうの──。
手を痛いくらいぎゅってされて、なのに離して欲しくなんかない。


──ちょっと待ってて、グラス、氷入れてくる。
そんな松川くんが居間に行って、私は松川くんの部屋の中でスタンバイ。──
松川くんの部屋、小さい本棚、机、テレビ、掛かってる制服のジャケット──。
なんか、やばい、転がりたい、嬉しすぎて──。
……っ落ち着け〜!!
「……っあ」
目に入ったのは──
「あ……プリクラ……アソビバで撮った、やつ」
ベッドサイドに貼ってあるのが、見えた。
思わず、ベッドサイドに近づいてまじまじって見てしまう。──
私と松川くんが写ってるシール。
それと同じやつを、私も部屋とか、パスケースに貼ってる。
あの日、確か偶然会った及川くん達がボーリングしてたんだよな。まだそんな経ってないのに、懐かしいかもしんない。
「寝る前に見れるからここに貼ってた」
「っぉおああお帰りっ」
部屋に戻って来た松川くんがテーブルにグラスを置いて、ジュース注いだ。──
「スマホの待ちうけでも二人で撮ったの、いつでも見れっけどな」
いつかの体育の授業の後、私の友達が撮ってくれたそれ、私も待ちうけのまんま。
お互い知ってることなのが嬉しい。──
「アソビバで撮ったシール、私も部屋に貼ってる、よ……」
やっぱり飲み物飲んで寛ぐ余裕なんかない。──
松川くんの部屋をじっくり見渡す余裕もない。
余裕ないのに、つい、申し訳ないくらい見ちゃう。
なのに、視線すぐ、隣に座った松川くんにオートで移動しちゃう。
「なんで正座」
「……っい、や、そこはこれ、フツーつか……っ」
緊張しっぱで、目が回りそうで、しゃんと背筋伸ばすように意識してないとダメだろうが──!!
「普通て?」
……っ松川くんがもっとすぐ隣に……座った〜!
いや待て、松川くんの部屋なんだ、松川くんがドコに座ったっていいだろ!
でも、ドキってやばい……!
落ち着け……!
「あ、あの、もしも 緊張してなくたって、いくら仲良くたって、初めて邪魔すんのにいきなり我が物顔で寛いだらダメだしな!」
「じゃあ緊張してんだ」
うう──! その通りすぎだよ!!
「俺はすげーしてる」
「……っ松川くん、も……?」
「今日は鈴花にランチボックスつうか専用箱──買うの付き合ってもらう予定だったし、そのまま帰したくない予定というか、気持ち的には確定だったし、ぶっちゃけ昨夜かなり鬼の掃除した」
「え……そ、そんな掃除、したの……?」
松川くんがゆっくり頷いた。
「あーしたなーすげーした。そんな物とかはないけど、大丈夫かって何回も自分の部屋ん中見渡したりした。んな自分がちょっとウケた」
「え!? なんで!?」
「鈴花が俺のことさんざん好きだって自惚れさせっからっしょ」
「えええ!? 間違いなく大好きだけど……っ」
あ、優しく見つめられたら、フリーズしちゃう。──心臓はどんどん、鳴ってんのに。
「ちょっと部屋が汚いくれーじゃ俺のこと嫌いにならないんだろうなーとか自惚れさせんのに、汚いとか思われたくなさすぎて、鬼の掃除」
「……っもし、散らかってたら、私、掃除を……」
え!? それもなんか図々しい!? 押しかけナントカ的な……? 
あ、松川くんがちょっと、深呼吸したのわかった、ちょっとだけ。
私の隣でゆるっとあぐらかいて、ちょこっと上半身屈めて、私の顔を覗き込むみたいにして──
覗き込んで、
「ちょっとくらい散らかっててもいいんだ?」
「えっ? う、ん……そんな、鬼の掃除とか、あのそこまで、気遣いは嬉しいけど……っ」
「あー俺も、気遣いは嬉しい」
「松川、くん……?」
「気遣いは嬉しい。──けど、少しくらいは”我が物顔で寛いで”くれてもいーのになーと」
──彼女なんだし。
「ちょっとだけでもな、と」
そう言った松川くんが、”鈴花マジメなとこあるしなー”って更に言ってて、
更に、
「どうせこっちも緊張してるし」
目をちょっとだけ逸らした、照れてる合図──。
少しだけ、私も覗き込んでいいのかな、松川くんの照れてる表情。
「我が物顔で寛ぐ……とか、できないかも、だけど、じゃあ、少し、」
勇気出して、松川くんの膝の上に手を置いて、
「あ、あの……ほんとは、ちょっとでもい、から、くっつき、た」
──いんだ、ごめん、自分の欲求ありきすぎ、結局、そんな反省。
そんな反省する前に体ごと、
「……っあ」
捕まえられて、腕の中。
そのまま背中が床に、
「少しって何、もっと俺に図々しくなって」
付いちゃって、痛いくらい押し倒されてるのに、また松川くんが引き寄せるから、
「図々しく……?」
「押し付けてる?」
「……っううん」
抱き締められて、押し倒されて、背中が沈んで、松川君の腕の中にいっぱなし──。
「じゃ、じゃあ、あの……」
「なに」
「ずうずうしく……してもいいなら、あの、ちょっとだけ、甘えても、い……?」
「いいから。で?」
ノータイムでそう言ってくれるとか嬉しい、でも心臓やばい、続き、勇気出して、
「……し、して欲しい」
ちょっと、しんとした──。
やっぱ、図々しすぎた、かな。
わかんねえ、わかんない、床に落ちちゃってる背中、痛くないようにって、気遣ってくれてる松川くんの手が背中に潜って、腰から引き寄せて、でも、松川くんの脚の間に私の脚があって──
動けない、動きたくない。
もっと、して欲しい。
天井とかもう目に入らない。
「あ、の……よし、て欲しい」
「よして欲しい?」
あ──松川くんが、切なそな顔、なんで?
って私が、ずうずうしすぎたのか──!!
でも松川くんの部屋の床にこんな体ごと押し倒されて、抱き締められて、隙間があいたと思ったらこんな近くで──もう、沸点が、
「……っじゃなくて……っよして欲しい、じゃなくて……!じゃなくて……!」
沸点、飛び越えたら蒸発した気持ち、湯気みたいにふわふあって飛び出ちゃう、
「よ……」
「よ? なに」
「よし、て……」
ふあって、飛び出て、
「よしよしって、して、欲しい……」
はああ、言えた──。
あ、松川くん、目を真ん丸くしちゃってる──ぽっかんしちゃってる!?
「あっ、あの、ごめ……へんなこと、言っ」
「あ、ちょっと無理」
「えっ」
「我慢とか、無理」
瞬間、体ごと全部松川くんの腕の中。──
「……っ松川、く」
痛いくらい、
「よしよしして欲しいってなにそれ、かわいすぎ」
「だだ、って、ずうずうしく、してって言う、から……っ」
「その結果の要求がこれ?」
「ん……っ」
きゅっと目え瞑っちゃったら、松川くんの手が私をよしよしって──頭撫でて、腕の中で、いたわってくれて。
なにこれ、幸せ、破裂しそう。
松川くんは私をひとしきり──よしよしとか撫でたりとかしたら、
「よしよし、よく甘えられました」
うう〜! そんな笑顔くれるとか!
「たったこれだけでイキそうになっちゃってるけど、大丈夫?」
「えええ!?」
「冗談」
「えええ!?」
私はまだ、寝そべっちゃったまんま、このまま、松川くんに押し倒されてるまんま。
「あわよくばなー。コレ使いたいっつうのに、よしよしだけで満足?」
──ううう!小さいハコ!!
「……っ松川くんに触りたいって、思うけど……」
松川くんはぱって手、離した。──
「はい、どーぞ」
「う……!」
「どこ、触りたい?」
そんな、私から──!?
「い、いいの……? ええと……いつもとどかない。とこ」
「頭?」
「あの、……っ髪、ふわって……」
「けっこー芯あるかも、クセ強すぎ」
「い、いいの?」
松川くんが私を起こしてくれて、私は松川くんの足の間で、膝立ちになって、
いいのかな──
「ちょっとだけ……うわ、わしゃってしてるー」
ガンガン抱き締められて、どうなっちゃうのかと思ったけど、ちょっと、落ち着けたかな──でも、嬉しい感触。
「小せえ頃はコンプあったけど、今はこれでもよかったかなって思うわ、だって俺がストレートのサラサラとか似合わなすぎ」
「……っそうかなあ」
「お、ちょっと笑った」
「うわーごめん笑ってない〜!」
慌てて松川くんの髪から手を離した、その手を引き寄せられた。
「も少し、このままで居て」
「えっ……」
「いや、鈴花を見上げるとか新鮮」
確かに──あぐらかいてる松川くんの前で膝立ちになってる私のが今は、ちょっと目線上。
「ちなみに、真正面もいい眺め」
「えっ……あっ! ムネがああああない胸があああああ」
「はい、もーちょっとこのままで」
腰に、松川くんの手が──触って、引き寄せた。
「髪だけで満足?」
「あ……」
「キス?」
「……っなんでわかっ……」
「だって鈴花、照れくさそーに自分の唇触ったし。気付いてねーとか?」
「……っ! ばればれで〜!」
でも、でも、
「……してもいい、なら、したいよ……」
「じゃあ、鈴花から」
髪先に松川くんの指、試合中はテープ巻いてたよね、思わずほっぺと肩で、はさんでしまった。
「手、好き?」
「いつも、がんばってる手だなあって──」
もう片方の手で、撫でられた。
その瞬間、自分からできた──小さなキス。
「……っは、ぁ」
すとんと、腰を下ろしてしまった。松川くんの足の間に。
「こっちからもしていい? って訊く余裕もうないけど、いい?」
その瞬間また目を瞑ったら身体がきしみそうなくらい、抱きしめられた。

──キスで満足できない

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