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すぐに治る風邪──宮、後輩ヒロイン
やっぱり雨か──。
呟いた鈴花が傘を広げたなら、後方からぱしゃぱしゃと雨水を蹴る音が近づいてきた。
「あっ……宮さん!? 傘どうしたんですかっ」
「予報見てへんかったっちゅうねん──入れといて」
「どうぞどうぞ……っ」
「ごめんやで」
「いえいえ……っ」
その時、突風が吹き抜けた。
「……っあああ!! 傘ァア……!!」
そう、二人の目の前で傘がひっくり返ってしまい、おじゃんになったとは。
「うわああ〜やられたー!」
「コントやんな」
宮は悪気なくふふっと笑ってしまう。
雨は──
「うあっ! ますます激しくなってきた! 宮さん、そこのコンビニで傘買いますよ私!」
「買うても結局またぎゅんってなるで」
この風である。──
「うぁあああ雨ますますやばい、ですね……っ」
「せやな〜」
降りしきる雨は容赦ないというのに、宮がのほほんとしているから、鈴花がつい、見入った。
「ざんざんぶりやなあ」
そんな風に、自然体の彼に──。
しかし、雨は二人の体を好き放題に打つ。
「宮さん……っ走っていきましょう! 体冷えちゃいますから……っ」
「あーええて、ええて、ゆーっくり鈴花ちゃんを送ってくわ」
「えええ!? ダメですよ早く帰らないと……っ風邪引いちゃいますから……っ」
「風邪引いたんはお天道様やろ。ちょっと寝込んどるスキに雨雲さんも好き放題暴れとるな〜」
そんなのほほんと──
「それにな〜こないに濡れたら、なんもかんもおんなじや」
ははっと笑って、ほな行こかなんて──。
鈴花がふいに気を抜かれて、歩み、続いた。
「なんか、宮さんのペースに巻かれてはよ帰りやって言えないです……すみません……」
「君はなにを照れてとるんや」
「っ照れてませんよ!」
「あ〜聞えへんな〜雨の音ごっつ激しいし、聞えへんわ〜」
「ぐ……っ照れてますよ! なんか雨も楽しめる宮さんが……なんか、様になってるというか……」
「そらおおきに。雨はうっとうしいけどな〜」
「聞えてるじゃないですか! 雨は楽しんでないんですね!? 楽しそうに見えちゃいましたよ!」
「君とおるのは楽しいけどな」
雨音に紛れて、さりげなく告げたなら、ほのかに笑って歩んでいく。
鈴花は隣を歩むことで精一杯になってしまった。
「あんまり俺の顔ばっかり見とったらすっ転ぶで」
「そ、そんな見てません……っあ、いえ、見ちゃい、ますけど……」
「そうなん? 俺はそないに鈴花ちゃんのこと見てへんけどな〜。下着透けとるなあとか、中まで濡れとるんやろなあとか、言わんとこ」
「えっ! 見え……っうわ、透けってっ」
「な? 俺が送ってった方がええわ」
何故か上機嫌な宮に逆らえずに鈴花は守られるように送られてしまう。──
「……っ宮さん風邪、引かないように、すぐ帰ってあったまって欲しいんですが……ほんとは……」
「引いたら鈴花ちゃんにうつしたるし、気にせんでええよ」
──そしたらすぐ治るやん、なんて言ってしまう彼に送られていった。


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