[携帯モード] [URL送信]


仮にドエス──15
影浦さんに触られたら、もう、抵抗できるハズがない。
「影浦さんて、わたしのどこがいいんですか……?」
「あ? 今更バカか」
「バカですけどおおおお」
「知るか、お前がいいだけだっつーのマヌケバカ」
「や、やっぱり前半だけください〜!! もう〜!!」
おふとんの中、熱くて、余韻が吐息に変わっちゃう。
抱かれるって、もっとふわふわした幸せかと思ってたのに、ぜんぜん容赦なんかされない。
それがいいんだって思い知らされる。
「あの……まぬけばかなとこも好きってこと……? とか……」
うああ調子乗っちゃったかな……!?
でも、影浦さんの胸板から顔をそらして、ちょこっと見上げたら。
「……っ影浦、さ……」
あ、うそ。影浦さん、そんな顔するなんて──。
なのに、
「おーまーえー調子乗ってんじゃねーぞ」
なのにいいいい!!
「っごめんなさいいいいい」
やっぱり凶暴スイッチ爆押ししちゃった──!?
「うああああおでこくいくいピンポンしないでください〜!!」
あ、影浦さん、笑ってるけど、楽しそうに見えるのって気のせい、かな──たぶん、気のせいじゃない。
裸の私を抱っこしたまま、あやすみたいに髪をわしゃっとしたり、ほっぺをつまんだりしちゃう人。
「私がいいって、言ってくれるから……やっぱり調子に乗っちゃうかも、です……」
「ああ? じゃー上に乗せてやるよ」
「そこですかああああああ!!」
もう、腰とか動かないよ。──



う〜ん。
ハツカレな影浦さんに愛されてる……!
って実感したら幸せ。
なのに、贅沢になっちゃうというか──。
「あ? 何やってんだ」
「影浦さん……っ今来たところですね!」
本部で偶然会えて幸せ──駆け寄っちゃうよ〜!!
「犬かテメーは」
「……っひどいです! 確かにご主人様の言うことはなんでもきくかもですが……!」
もう〜!
愛されてる実感あっても、影浦さんが相変わらず。
大好きだなあ、今日も。
「で? テメーは一人で何モゾモゾしてやがったんだよ」
「えっ! もぞも……モジモジと言ってくださいせめて〜!」
「うるっせーんだよ! 一人でソワソワしやがって、なんか隠してんじゃねーだろな」
ひ、ヒィイ……! ヘビに睨まれたカエルがここにー!? うあああカエルさんごめんなさい!
「隠してませんよ……っただ、あの……た、またま影浦さんのこと、考えて、はいましたけど……」
「で?」
「だから今、食堂から広報室に戻るところなんですけど……」
「で?」
「……っだから、食堂で、訊いてしまって……」
「あ?」
「あの、他の女子隊員さんたちがですね……彼氏のこととかを喋っているのを……。あの、下着がどうとかいうお話を……」
「あ?」
「いや、だから、盛ったらがっかりされたとか、そういう話を……たまたま小耳に挟んでしまいまして……」
「で?」
も、もう〜!
影浦さんなんでキレ気味〜!
「それで私もですね……こう、もうちょっと大きかったら、なあと……影浦さん、喜ぶかな、とか思ってしまって……」
その瞬間、影浦さんが噴出したとか、あああ〜!!
「……っバカか! ぎゃっははは! 今更どーにかなんのかっつーんだよ!」
「ううう〜!! だだ、だって、巨乳とかぶっちゃけて憧れます!」
「デカかったらどーだっつーんだよ?」
うひぃ──!
ドエスなニヤリが炸裂してらっさる──!
「うううバストアップエクササイズを……! したりしますよ! こんなかんじで!」
「ァア!?」
「はぁあ……! くうう……! 両手を広げて……! 手のひらをあわせて……! こんなかんじで……!」
「ァア!? 土俵入りでもすんのかテメーは!」
「酷いです〜!!」
うあ……っ影浦さんに襟をを! 掴まれてしまった〜!!
「で? デカくなんのかよ?」
「う……ない谷間を探さないでください〜!!」
「バーカんなモンどーでもいーんだよバーカ」
「……っ二回も言いましたね!? ばーかって……っあっ」
ぱっと解放されたら、
「デカさだ? それ以前の問題なんだよテメーはこのバカパンツが」
「やっぱりひどい〜!! 耳慣れた言葉なのにエグりますよ! 今! この瞬間は! このない胸を!」
影浦さんは爆笑──!?
うう、お付き合いしてるけど……!
ぜんぜん落ち着けないハードな絡みが毎回毎回……!
「今度また下らねーこと気にしやがったら殺す」
影浦さんは一言そう残して、じゃあな、って作戦室かな、きっと、行っちゃう。──
私はなんか、胸がぎゅうっとなって、落ち着けない。──
殺すって言った影浦さん、楽しみにしてろ、みたいな──なんか、いたずらっぽく笑ってて、また知らない顔、見れたから。



広報室のデスクにちょことんと小さなお花。
「ふふ、かわいい〜」
「よかったなおまえ。二十歳だったら呑みに連れてったけどな」
「来年、お願いします……っ」
先輩に頭を下げたら、デスクにはやっぱり可愛いお花。
広報室の方々にもらってしまった〜!
今日はもうケーキも買ってきてあるし……!
影浦さん、来てくれるかな。──


お仕事が終わって、ロビーうろちょろしてたら、
「あっ! 影浦さん……!」
影浦さんをはっけーん!
やっぱり犬って言われてもいいくらい駆け寄っちゃう〜!!
「お疲れ様でした……っ防衛任務終わったところですよね……っあの、今日はまっすぐ、……あの、帰ります、か……?」
うう、どきどきする。
自分から言っちゃうのもアレだし……。
「あの、もし時間があったら……というか、ですね……」
「あ? モゾモゾしてんじゃねーぞ!」
「もじもじって言ってください〜!」
はあ……っやっぱ、自分から言うのも図々しいよね。
今日、私、誕生日なんです、なんて──。
──鈴花誕生日おめでとう!
なんて、絶対言ってくれないだろうしなあ……。
プレゼントなんか要らないけど、一緒に居たいなあ。──
「帰らねーっつーんだよ」
が、ぐぁああん……!
「用事がおありなんですね……」
でも、意外と平気な自分にもびっくりしちゃう。
影浦さん、お祝いしてくれなくたって、今日は一緒に居れなくたって、いざ一緒に居たらあんなに大事にっていうか……思い知らせてくれるし。
”俺ァテメーがいいんだよ”って。
なんかやっぱ幸せ〜!
今日は帰ったら一人でパーリィターイ!!
あれ? やっぱり寂しいかも……?
う〜ん、でも、影浦さん、用事あるみたいだし、私の誕生日なんかより、明日でも明後日でも一緒に居れたらいいな──。
「テメー何ニヤついてんだ」
「えっ……あの、帰ったらケーキとごちそうな予定なので……」
ってやば! 言っちゃった!
「あ?」
「……っなんで怒るんですか〜! 自分の誕生日だからつい買っちゃったんです〜!」
「で?」
「だから〜! これから帰ったら一人パーティなんです! 影浦さん来て欲しかったけど、用事あるみたい、なので……」
「あ?」
ヒィイ……!
「な、なんでげきおこですか〜!!」
「うっせー! 一人ではしゃぐだ? ダチも居ねーのかテメーは!」
「居ますよ!! うーん、でも、離れた大学行ってる友達からはオメメールもらったし、親戚のおじさんなんて、来年には振袖買ってやるよ、だなんて連絡もらってしまって、広報室の皆さんには花をもらってしまって、私、恵まれすぎて──」
影浦さんはじっと私を見てる。──
「生まれて初めての彼氏ですから……大好きな影浦さんですから、やっぱ誕生日、一緒に居て欲しいですけど、でも、影浦さんちゃんと、私のこと、あの……大事にしてくれてるの、わかってるから、今日一緒に居れなくても……ってごめんなさい! つい欲求がダダ漏……っあだあ!?」
なな、なになに──!?
「私の顔面にナニを投げつ……かふぇうらさぁん!?」
あ、これって──!?
「どっかのバカがせっつくから先に渡してやったんだろボケ」
「わ、わたし、別に私せっついてなんて……えええ!?」
うそ、嬉しい、なに、うそ、ほんと──
「これ、誕生日ぷれぜ……うそお……まさか!? 影浦さんが!? 何で私の知ってたんですか!?」
だってだって、投げつけられた小さい箱、ラッピングしてある──。
「あ? おまえ部屋のテーブルに身分証おきっぱにしてるときあるだろが」
「……っ! それで……こっそりサプライズで……ほ、ほんとに私への誕生日プレゼント……なんですよね……」
「そ−じゃなかったら、ナンだってんだ!?」
──うああ怒らないでください──って
「あ、あ、あ、開けてみてもいいですか……?」
「チッ……勝手にしろ」
影浦さんからのプレゼント──。
誕生日ちゃんと、知っててくれて、プレゼント。
今日一緒に居れなくたって、プレゼントなくたって、激しいくらい大事にしてくれる影浦さんだから、それだけで充分だったのに。──
「……っうああああ嬉いいいいいいすごいいいいいカレシからの初めての誕生日プレゼントです!! きゃああああ!!」
「うるっせーんだよテメーはこのバカパンツが!!」
「ひぃ! でも! この喜びはやばいんですー!」
「うるせえボケ! 目立ってんじゃね──!!」
「ごめんなさいでも嬉しいんです〜!!」
もう、基地の中なのに、ロビーだからってこんなに飛び跳ねちゃって──。
「ご、ごめんなさい騒いじゃって……影浦さん、プレゼント渡してるところ見られるの、照れちゃう、とか、だったり……」
「あ?」
「ひぃいい眼光鋭く──!!」
はっとして周りを見たら、人通りは少ないけど──あっ! あれは村上さん!? な、なんか、にこやかに見守ってらして──!?
「俺なんざどーでもいーんだよボケパンツが!」
「うぁああああ誕生日という今日に生まれた新たなフレーズボケパンツ──!?」
「っせえ! 黙れ!」
「あっ……」
──ごめんなさい。
って、どっかで言葉になった。
──騒ぎ立てちゃってごめんなさいって。
影浦さんはあんま、注目されたりとか、好まないかなって思ったから。──
なのに。
「オメーの泣きっツラ、他の野郎に見せてたまっか、黙れ」
ぐいって、引き寄せる腕は強引、声のトーンは甘くなんかない。
なのに、もっともっと、涙、出ちゃうよ、影浦さん──。
「見てんじゃねー」
「えっ……」
ソファにどすんて座らせられて、影浦さんの片腕に閉じ込められてる、今、何も気にしねーで、黙ってろって、言われてるみたいに。──
「いや、羨ましいよ」
こ、この声は村上さん……かな!?
ばっと顔上げようとしたって、影浦さんがそんなの、許してくれなかった。──
私は閉じ込められて、プレゼントぎゅってするだけで精一杯。
「カゲがそこまで出来るくらい好きになった人って事だろ」
──! 村上さん……!
うああまた腕の中更にホールドされて……!
「うっせーコイツが騒ぐからだってんだよ」
「今度ちゃんと紹介しろよ」
「あー断る!」
「なんでだよ」
な──!
村上さん、ちょこっと笑ってるぽい!?
「……っ影浦さ、あのっうあっ」
また顔上げようとしたら、またホールドされっぱで〜!!
ぎゅうぎゅうで、もう〜!!
「照れてんのか」
「うっせー! んなバカ知ってんのァ俺だけでいーんだよ!」
「俺にまで妬くとか、よっぽどだな」
「うっせー!」
私は──
プレゼント、しっかりぎゅっとして、影浦さんにぎゅってされたまま、またなんか、目頭あっつい。──
好きになってよかった。



村上さんはブースに行ったみたいで、私は影浦さんの腕から解放されても、なんか湯気とか出てそう──
また、出そう。
「ねっくれす……かわいい……」
プレゼント、開けてもいい? って訊いたら影浦さんはやっぱり、勝手にしろボケ〜! とか言っちゃってたし。
ぶっきらぼうなのに、くれたネックレスは、目立たない、チャームが繊細にきらっとしてる。
「首輪つけとけ」
──頷くしかない、大好き。
「首輪でもなんでも嬉しいんです! きゃー! 一生の宝物ですよ!」
「一生とか言っちまっていーのかよ?」
見詰め合ったら、一生を約束する瞬間、そんな空気。──
いいに、決まってる。
しっとり、ゆっくり、頷きたいのに、この嬉しさが、もう抑えきれない。──
「……っ影浦さんダイスキですダイスキ大好ききゃああああ!!」
「うるっせえ──!! モノにつられてんじゃねえ!!」
「え? 気持ちが嬉しいんです!」
影浦さんが私の為に……くう!!
だって、こんなきれいなアクセ、売ってるところに行って、”あ、これください”とか言ったのかな!?
店員さんに”贈り物でしょうか”とか聞かれて……! 頷いちゃったりとか……!
したのかな! したのかな!
「チッ……つけてみろ」
「あっ、はいい! ええと……で、できました! 似合いますか?」
「外しやがったら殺す──」
影浦さんがくいっとした、人差し指のお腹の上のチャーム、するって落ちて、私の胸元に落ち着いた。
きらきら、してる──。
「じゃあな、ケーキ食って待ってろ」
あっ! 影浦さん行っちゃう……ってか、防衛任務終わったんじゃ……っ一回作戦室行くのかな!?
村上さんブース行ったみたいだし、ソロランク戦とか……。
「はっ……はい! あの……! 来てくれるんですね……!」
影浦さん、だから今日はまっすぐ帰らないって言ったんだ。──
「最初っからそのつもりだったっつーのにうるっせえんだよテメーは!」
「ぎゃー! ごめんなさいい……! あの……っ!ごはんも用意しておきますので!」
これは張り切って支度しておかないと──!


前へ次へ
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!