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キスも大丈夫──松川 上の続き 14
慣れた居間、慣れた台所──。
けど今日は、松川くんが居る。
なんてことだよこんなぁあ……! 嬉しすぎんだろ〜!!
「とりあえず家に連絡しといた、夕飯食って帰っからって」
「うん!」
「手伝う?」
「まさか! 松川くん座って寛いでて!」
さー何いっちゃうかなー!
できるだけ早めにできるやつで……。
あんかけチャー……あー豚玉もいいなあ。
「松川くん何がい……ふぁああ!! びっくりしたあ!」
すぐ後ろに松川くんが〜!!
「やっぱ我慢できなくて見にきた」
「そっかかなりお腹すいてんだな! スピードアップすっから〜!」 
「やっぱ手馴れてんなー」
「そそ、そう!? でも台所はあの鬼……じゃねーやかーちゃんの本陣だからね! 私はまだまだ!」
でもこの、作り立てを食べてもらえる感、嬉しい〜!! うまくやるぞコラァー!!
「だって、俺が今、傍にきて慌てたのに、一瞬だけだし、やっぱ手馴れてんね」
うあ! 褒めてもらえてる……!
「そそ、そうかな!?」
「普段あんな、慣れてねーのにな」
すとん、て、
「こーされるの、とか」
シンクにっていうか、私を挟むように、松川くんの手のひら──。
「あ、手、洗っとく。すぐ出来そーだし」
「うん……っバシャってバシャッてっ……でも、まま、待っててすぐに豚卵どんを〜!!」
あああドキッた〜!!
「楽しみすぎ、あ、これで拭いていいの」
「うん……っええと、次は玉ねぎを……っ」
「あーあれだ、他人丼てやつ」
「そうとも言うよね! すぐ作っちゃうから〜!!」
ノッてる〜! 楽しい〜! 松川くんに食べてもらえるなんておいしくするしかねーだろーがぁああ!!
「近くで、見てていい」
玉ねぎ刻もうとする私の肩に近い、松川くんのほっぺ──。
「あ……」
しまったぁあ──!!
「っと」
慌てて流しに落としちゃいそーになった玉ねぎ、松川くんが見事にキャッチ──。
よよ、よかったなあオイ玉ねぎコラァ! クラァ! 松川くんに受け止めてもらえっとか、おまえ〜!!
「……っごめん……」
「いや、こっちこそごめん、やっぱ台所で慌てさせたらいかんね」
「た、確かに、火とか、包丁とか、あるし……っ」
なんか、距離近いやばい、どきる、やばい──松川くんのことばっかり。
「ちなみに我慢できないって腹具合じゃないし」

──我慢できなくて見にきた。

松川くんはそう言ってたけど──。
「おなかすいて、早めにってことなんじゃ……?」
「ん? わかってくれないと邪魔しちゃうんですけど、いい」
包丁、持てない。玉ねぎもまたころっていっちゃいそう。
今、洗ったばっかりのちょっとひんやりした松川くんの手に──捕まえられて。
「……っ松川く、ごはん、作らなきゃ、私……」
「せっかく一緒に居れるから」
「あっ……」
松川くんと、シンクの間に挟まれて動けない、動くなんて無理、そんなの。
「構って欲しくもあったり」
「……っ松川、く」
挟まれて、なのにふわっと腕に支えられて、
「でも、一所懸命作ってくれてるとこ、見れて嬉しかったり」
背中に、うなじに松川くんの感触が迫って、
手は片方、重ねられて、動けない。──
「どっちにしろ、我慢できなくて近くに来たんだよね、そういうこと、了解?」
「……っん」
はぁ……っ呼吸困難になりそうなくらい、心臓ばくばくしちゃってる──。
へたっちゃいそで、でも松川くんが支えてくれてる。
背中ごしでもわかる、体、おっきい、重ねる手もやっぱりそう。
その手に引き寄せられて、
「こっち、向いて」
松川くんの胸板におでこがすとんって着地した。
顔と顔、合わせたら唇が近づいた。──
目、オートで瞑っちゃう。
「キスできたからって、もっとしたくなってんだけど、ダメ?」
「……っして……」
さっきした時よりもっとゆっくりされて、やっぱり支えられないと立ってられない。
もっと──
「あっ!」
二人で顔を見合わせた。
この音は──。
「うあああ冷蔵庫ちょこっとあいてたとか……!」 
そう、うっかりお知らせサインが鳴って、慌てて閉めた。
「はあ……っちゃんと閉めとかなかった私のマヌケっぷりが……」
「ま、ちょうどよかったかも。台所で迫るのはやっぱ危険だし」
「……っでも、松川くんちゃんと支えてくれたし……っだいじょうぶっていうか……」
「そんな見上げられたらもっとしたくなるんで、ほどほどに」
「えっ……でも、私は……」
さっきまでは、”松川くんがしたいんだったら”いくらでも──って思ってたのに、今もそーなのに。
自分からもっとキスしたい、触りたいとか、思い始めてる──。
「ほどほどに、好き、でいるとか無理……」
松川くんのシャツ、掴んじゃって、離したくない。
「……っ一静が、大好き、なの……」
「あ、無理」
一言、ぽつっと聞えただけで後はもう抱き締められたり、ひたすらキスされてくだけ。
「……っは、ぁ」
こんな声、自分から出るなんて前は思いもしなかった。
「せっかく我慢できそーだったのに」
耳にそっと聞えて、舌も上手く辿れない私の、
「やっぱ無理、可愛くて」
ほっぺにキスして、また唇の隙間をなぞって、私の舌に小さく絡んで、辿ってく。──
キスってもっとふあって触るみたいな、それだけだと思ってたなんて、知らなすぎた。
こんな苦しいくらい好きって思い知らされるなんて、知らなかった。
「……っは、あ、料理、つくれ、な……」
「別にいいのに、小さい箱、使いたいし」
「……っあっ、あの、使っちゃうの……」
やばい、顔かぁあってなってるって自分でわかる。
前だったらツラ赤いとか恥ずかしいだろクソが、とか言っちゃってたのに、そんな言葉、思い浮かびもしない。──
「でも、鈴花のオナカ心配だし。減ったっしょ」
「……っあ! ま、まだぐーて鳴ってないけど鳴りそう……っだけど、でも……っ」
「いや、なんつーか……確かに使いたい気ありすぎなんだけども」
「ん……っ」
松川くんの手が、私を撫でてくれた。──
「キスだけでなかなか止めんの大変だったし、えーと、ぶっちゃけですね」
「は、はい……」
「ヤッたら鈴花がへたっても、ガンガン無理させちゃいそーでちょっと自分が怖いわな、と」
私はやっぱ、顔真っ赤──になってるのかな?
松川くんには丸みえなこの顔。
「だから、やっぱ大人しく待ってるわ、ゴハンできんの。──あ、手伝った方いいっぽい?」
「……っん、だいじょぶ……」
「キスも大丈夫なんだ?」
頷いちゃうしかない。──


いっぱいキスしちゃったし、溶けそうだったけど、どーにかゴハン作れてよかった〜!
私の家の居間で松川くんとゴハン食べてちゃってる。
「めっちゃうまいね」
「よかったああ〜!! あーでも、今回のは、気合い入れすぎて味がちょい濃いかも……うう、味見何回もすっから……」
「ちょうどいいけどなー」
嬉しすぎるァア!
おいしいっつってもらえたし、ゴハンの後には松川くんが洗い物手伝ってくれて──。
なんか夫婦感すごいね〜とか言いながら──幸せ。
松川くんは部活で忙しいし、これからこういうこと、殆どないんだろな──きっと。
「ごちそうさんでした。──そろそろ時間もだし、帰るとか名残惜しいつーかな」
「……っそうだね……っ」
「今度は俺ん家来て」
「……っいいの?」
「まあ、鬼のように掃除しておくことになるけども」
「へえ……松川くん、そんな汚くしてるよーには見えないけどな!」
「いや、けど緊張はするっしょ。小さい箱も持ってきてくれたら今度こそ使うかも」
──その、大人っぽい笑顔にいい加減、弱すぎる。
──松川くんのこと、好きすぎる。
「……っいい、のに……私は……」
小さい箱、使うようなことになっても。
「やべ、すげー嬉しいんだけど」
「ウィイクラァア!! 俺達のお帰りダァー!!」
な──!!?
「ヒーハー!! 夜露死苦ネギマってきてやったぜェエ──!?」
こ、この声は〜!!
「手羽先もつくねも食ってやったぜェエ──!!」
ひっ! ひぃい! 鬼と悪魔が帰ってきた!
「ぎゃぁあああ帰ってくるのはええ〜!! しかもデロンデロンに酔ってるっぽい〜!! 松川くん、待ってて!」
はあ……っおかーさんとおとうさんが酔って帰ってきたときの重大ミッション!
鍵を運転代行さんから受け取って、お礼を言って、玄関の鍵を閉めて〜!!
「ヤキトリ最高だったなあ!! オイ!」
「一静ゆっくりしてけやァ! もう寝っからな!」
「っす」
鬼と悪魔があっという間に寝室に引っ込んでったよ……。
なんつー一瞬の嵐……。
「は、はあ……飲んで帰ってくっとは……うちの親、お酒弱いんだよね……二人とも……」
「いきなりでビックリしたけど……つか、介抱、大変そうでない」
「あっ……! それは大丈夫だけど、お父さんの明日のお弁当も私担当かな。これは」
「俺にも作って、また」
「うん!」
当然みたいに約束できるなんて、幸せすぎる。
帰ってく松川くんを見送るのはやっぱり少し寂しかったけど、明日も会える。──


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