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言わせて欲しい──白鳥沢 天童落ち
「ハイ! ページめくりでバツゲェームゥウ!!」
食堂で一瞬しんとして、天童くんが、ジャンプをぱらっとめくった。
「ジャンプぱらめくって、ページ数差で勝負とかど? ど?」
一瞬しんとして、ゲーム云々よりも何よりも瀬見くんは、
「ジャンプ買ってんだな……まだ」
そこにつっこんでしまった。
「友情努力勝利にラブコメいいだろ!!」
天童くんが毎週ジャンプ楽しみにしてるのは知ってるから微笑ましいけど、げーむってなんだろう……?
「鈴花ちゃんもやろーヨ?」
「えっ……いいけど……どういうルールなのかなって……」
「目え瞑ってパラッて、予想したページ数よりイチバン遠いヤツがバツゲームとかど? ど?」
「おもしろそうっすね」
うわ、川西くんがノッてきたとか意外かも?
「自分の裁量で止めて、ここは何ページがあてればいいんですよね」
白布くんはやれやれ付き合いますよって感じかな?
「バツゲームは何にするんですか!?」
「めくったページのマンガの台詞をなりきって言うコト!!」
「なっ、演技力がっないです!!」
目を白黒させて、ちゃんとできるかどうか考えてる工くん、生真面目でかわいい。
「なりきるとか、ハードル高けえな」
山形君もちょっと躊躇したけど、ハードな合宿でゴハンの後な今。──
たまにこういうのもいいかなって、みんなジャンプを囲み始めた。──
「ハァイ目え瞑っていっていって〜!」
「じゃあまずは俺がいきます! 俺が……っンゥア〜!! 382ページです! ゼッタイ!」
「ハァイ360ページ! 工けっこーおっしい〜!」
「があああ!」
天童くんの提案で何気に始まったゲームだけど、これ、けっこう難しい……?
「目を瞑ってやらないとダメだし、じっくりめくるのもダメなんですよね」
「イチペー2ペーとか数えながらじっくりトカ、反則っしょ賢二郎〜」
やっぱり一瞬でパラパラして、予測しなきゃいけないみたい。──
「じゃあ俺も──190ページでどうですか」
「うおっ!? 白布すげえな! 181ページだぞ!」
「ふう……難しいですね」
「じゃあ俺も──えーと、10ページめで」
「ちょ! 太一まだカラーページんトコじゃんか! それアテやすいし禁止!」
「じゃあもっかい──ええと、110ページくらいで」
「161ページィイイイ!」
「やっぱむずいっすよ」
「次、鈴花ちゃんもいってみよー」
「……っうん」
緊張する、目をつむって、一瞬でぱらぱらっとして……よし! だいたいわかった!
「180ページかな……? っえ、みんな……」
な、なんかドン引きされてる!?
「まだ51ページだぞ、おい」
「うっ……瀬見くん……ほんとに!? うわあああ」
確かめてみたら、確かに51ページめ……。
「これ、私、罰ゲームぽい……?」
「とりあえず俺もやってみるかな」
「……っ獅音くん」
そうだよ瀬見くんも山形くんもみんなまだやってないし……っ。
「うん、200ページだね」
「ウワオ! 正解はァ〜300ページトカ! 百ページも差ァ開けるトカ、わざとっしょ? わざとっしょ?」
え──。
「マネージャーに罰ゲーはかわいそうだしね」
「獅音君あ、ありがとう……!」
優しい……!
「でも獅音で100ページミスだし、129ページミスっちまった船津は庇えてねえな……じゃ、俺もミスりに行くか」
「ちょっ! 英太君まで! 俺がラスト、カッコよく鈴花ちゃん庇うつもりだったのに!!」
「あっ……獅音君も瀬見君もありがとう……っ天童くんも! でも、そんな、庇わなくても……っ」
「これって最初からめくる方と当てる方分けた方がよかったんじゃないですか」
「まーまー賢二郎、自分でめくって自分で外した方がやっちまった感がスゴイことんなるじゃん?」
──う、確かに……!
「どっちにしろ天童も船津庇って男らしーとこ見せ付ける予定なんだろーが。俺もだけどな! 船津見とけって。──よっしゃ……っ120ページでどうよ?」
「英太君230ページィイイイ!! 110ページのミスゥ〜!」
「うお、129ページ以上ミスれなかったかよ」
「あっ、あの……っ私を庇わなくても……っゲームだしっ」
「なんか、船津を庇うノリになってきたな」
「だいじょうぶだから山形くん……っ」
「でもよ、ここでカッコよく庇いてえって思うだろ──おまえに世話になってるしな」
「あ、ありがとう……でも申し訳なくて……っ」
白布くんがふうっと息ついた。──
「まあぶっちゃけ、庇う気持ちがバレバレですし……ゲームにならないかと」
「賢二郎キマジメすぎっしょ〜?」
「マネージャーを庇う気はないのかな」
「……っ大平さん、俺はそういうことを言ってるんじゃ……っ」
うあああちょっと待って〜!
「たぶんもう私罰ゲーム確定だし……っ」
「まあまあ、若利くんもオネガイ?」
「ああ、ページ数をあてればいいのか」
牛島君がさりげにぱらっとした。
「この感触は201ページだな」
「なっ……」
みんなも私も、驚いたなんてもんじゃない。──
「……っ若利くん、実際めくったトコは329ページィイイ!! 128ページ差ァアアア!! 129ページミスった鈴花ちゃん庇おうとしたの? したの?」
「ああ、そうだが? 明らかに失敗するのもどうかと思い、130ページ差を狙ったが……船津すまない」
「そんな……っ牛島くんあ、ありがとう……気持ちだけで充分だから……っ」
「船津が129ページミスって、若利が128ページミスか……」
「接戦だな」
獅音くんがにこやかにそう言って、山形くんも参戦したら90ページ差。
結局一番ミスッた私は──
「ハイ! 鈴花ちゃん罰ゲームゥウウ〜!!」
──めくったページのマンガの台詞をなりきって言うコト!!
そんな罰げー。
やっぱりやることになってしまった──。

「ところで船津が予想したページ数じゃなくて、実際めくったページんトコ朗読すんだよな?」
「そ、そ、ちょい待ち、51Pな〜ハイ! 鈴花ちゃんいってみ〜」
「うう、なりきって……だよね……」
天童くんは楽しそう。
みんなも51ページめの漫画の展開は!? ってジャンプを覗き込んじゃってる。──
「ええと……あ、スポーツ漫画だね……」
川西くんが私に頷いて、「おっ」と言った。
「バレーの漫画ですね」
「コイキューブレイクキター!!」
天童くんは大盛り上がり!?
「こいきゅーぶれいく、かあ……私、アニメも見た事なくって……」
「俺は読んだことありますよ! 女の子がかわいいと思います!」
「あー工、先週の水濡れマネちゃん回、もしかしてじっくり読んじゃった〜?」
「いぎっ!? て、天童さんが貸して……っくれたので! ジャンプを!!」
水濡れ回!?
「よくわかんないけど、ラブコメ交じりの部活モノって感じだよね……」
「うぇい鈴花ちゃん罰ゲームゥウウ!! 51Pめスターットゥ〜」
「えっ! う、うん……なりきって……?」
「そそ、なりきって〜」
うう。
声あてとか、とても……。
「ええと……”マネージャーって彼氏いないんだろ?”」
「バレーをしてるシーンじゃないんですね」
「そうみたいだなー」
白布くんと川西くん二年ズがほあっと話してる。
「続きを……じゃあ……”いないわよ”」
「鈴花ちゃんもっと〜なりきって〜」
「え!? う、うん……っ”部員の中で付き合うとしたら誰がいいんだよ?”」
な、なんか、マネが部室で一人の部員と話してる場面で……話してるっていうか、攻められてる!?
「”そんな……わかりきってること、聞かないで……っちょっと、何して……っやめて!”」
なにこの展開──!?
「おい、強引だなこの部員の野郎」
そう言った瀬見くんに牛島くんが、
「ユニフォームを着ているが、これから試合なのか? 込み入った話をしている暇はないだろうに何をやっているんだ?」
そう言って、唸った。
「そこホラ、ラブコメだし〜コイキューだし、コイも重要なワケですよん」
天童くんは毎週読み込んでるのかな、きっと。──
「結局”わかりきってる”なら、”誰がいい?”とかわざわざ聞かなくてもいいですよね」
白布くんも首を傾げてる。
「本人の口から言わせたいんだろうね」
なるほど、獅音くん……!
「ハーイ鈴花ちゃん続きもイッちゃって〜?」
「天童くん……うう、うん……」
どうせ1Pだけだし、すぐだよね……よし!
「”だってどうせキャプテンなんだろ?”」
うう、なりきるって恥ずかしいけど続きを……。
「”違う! あんたが好きなのに……っ”」
「おお、告ったぞこのマネ!」
瀬見くん、興奮気味!?
「この8番の野郎、結局”わかって”なかったんですね」
「白布さん俺を見ないでください〜!!」
「いや、でもこの8番、このしたり顔だぞ。やっぱりわかっててカマかけたんじゃねえの」
山形くん、私もそんな気がします!
それに、その後が、
「”ならキス、してもいい? いいよな?”」
……う、朗読とか、恥ずかしいな、やっぱり……って、みんな、私が持ってるジャンプにかぶりつき!?
「っおい!! やっぱ”わかって”たんじゃねーかこいつ!! 何が ”キスしてもいいよな?” だよ!!」
「自分の気持ちは云わずにいきなりこんな真似しようとしてるんですか。なんなんですかこの8番」
「余裕綽々なところがムカつきますね、この8番」
「俺の胸がイタイです!!」
うあ……っ工くんが大変に……!
これは早く終わらせないと……!
「じゃあ、続き……”いいって言えよ、早く。──して欲しいんだろ?”」
「なんだこのイケメン野郎は」
「自信満々すぎて見てるこっちが恥ずいですね」
山形くんと川西くんが淡々とそう言ってて、牛島くんはさっきから顔に疑問浮かべまくりだし……っ。
「試合前の部室で何をしようとしているんだ? 結局はこの男の方がしたいだけなんじゃないのか」
「そりゃしたいし、言わせたいんじゃない? ドエス系ってヤツ〜?」
漫画の中じゃ激しい壁ドンキメちゃってる──。
早く続きを朗読して、終わらせよう、そうしよう……!
「”あっ……だ、だめ……もう、誰か来ちゃう……”」
「”ほら、早く──”」
「”して、欲しい、よ……っ”」
はあ……っよし!
どうにか罰ゲーム終わったあああ! 恥ずかしかった〜!
けどみんな、あれ?
「おい! 続きはどーなったんだよ!」
「バレー漫画なのにバレーしてなかったなあ」
「キスもまだしてねえ」
「次のページでしてるんじゃないですか」
「ぶ、部室で何をしてるんでしょうか!! 羨ましくなんて……っないです!!」
「工カオ真っ赤〜」
「いっ!?」
みんながわいわい騒いでて、私はほうっと一息──。
「はあ……っすごい恥ずかしかった……」
「そういえばさ〜ねーねー、鈴花ちゃんもカレシいないんでショ?」
「え? うん、いないよ……」
「俺達の中で付き合うとしたら誰がイイ?」
「え……天童くん? このくだり、さっきの漫画と同じじゃ……。あ、あの……”わかりきってること、聞かないで”……って言えば、いいの……?」
「だってどうせ若利君じゃん?」
「え!? 違う……!」
やば……っつい、本音を言ってしまった。──
牛島くんごめんって言おうとしたのに、
「”違う、あんたが好きなのに”ってヤツ、プリーズ〜」
「え、う……天童く……」
漫画のくだりを真似るだけなら、
「あ、あんたが、好きなのに……」
そう言えばいいんだよね、でも、なんか──
「なら、キスしていい? いいよネ?」
「天童くん!? えっ……ここで!?」
「そこはダメって言えよ!!」
うわああああ瀬見くんにそう言われて、どうしたら──!?
天童くんは漫画の展開を真似してるだけ、そうなだけって──思えない、ゆっくり見つめられて。
「なーんか英太君に邪魔されちったカモ〜」
「クラァ! キスなんかさせっか!」
ちらっと見上げたら、天童くんはにんまり笑ってるし──もう。
「ダメじゃねーなら、後で、ネ?」
う……逆らえないのは、天童くんと──天童くんにドキッっちゃってる自分に。
「俺は多少残念だと思っている」
「牛島くん!?」
みんなぎょっとしたり笑ったり──和やかになったけど、天童くんは指でとんとんっと漫画の一コマを指した。
そこはマネージャーヒロインがさんざん迫られて、ついにキスを「して欲しいよ」って言っちゃった場面。
「──言わせてみせっから」
ゆっくりそう言った天童くんにやっぱりどきっとさせられた。


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