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呼んで欲しい──松川 上の続き 7
男女別の体育、向こうじゃ男子が卓球始めようとしてる。
松川くん卓球上手いのかな!?
でも運動神経いいんだろしうまいんだろな〜チラ見しちまう〜!
「あっ! 鈴花バカ余所見してんな!」
「のあー!! ごめん〜!」
「も少しで顔面レシーブだったな」
「っぶね〜気ィつけないと〜!」
ふう、女子はバレーなこの時間。
松川くんが好きなバレー、少し触れるとか嬉しいな。──
「……っよっしゃ船津ちんトドメよろー!」
「ぬああああ私がスパイクー!?」
体育とかレクとかでしかちょろっとやったコトしかねーのにハードルもネットも高い〜!
「うぁああああばぁああ」
「船津ちん〜!!」
ひぃいスカしてネットにブチかましてしまった〜!
「ぶはぁ……っタッチネーットっていうか、体当たりネット?」
「うう〜! ごめん〜!!」
笑われてはずい〜! つうか、つうか……んあ……っ! 松川くんが見てるうう〜!
卓球のラケット持った松川くんがコッチ見てるうう〜!!
はっずい〜!
「縞パンちゃん〜」
友達なんかそんなんだし、くっ……!
「シマパン言うな〜!!」
うう、恥ずか……あ、松川くんも同じクラスの男子と話したりし……
「え? あ、まつくぁ、くあ……?」
な、何故かこっちに来る!?
体育館の半分こっちはバレー、男子は半面使って卓球してたけど──。
「船津さん」
「い、あ、はぁいあ!」
ヤバイ──!!
ヘンな声出た──!!
「船津さん、手」
「えあっ!? あ、うん、てっ!?」
どど、この手をどうしたら──!?
あ、松川くん、ほんのり笑った──のかな。
なんか、落ち着かせられるよーな──。
「こう」
「えっ、こ、こう?」
「そ、」
「手、こうするといい。打つ時。船津さん、手首だけ突き出しちゃってたから」
これは──松川くんからの激烈アドバイス──!!
「ありがとう……! こ、こうな、こう!」
「そうそう」
「松川次〜」
あっ……松川くんも戻らなきゃだよな!
「あっ、あっありがとう! がんばる!」
あ、松川くん──
にっと笑ってくれたちょこっと。
そんなちょこっと──これみよがしなニコニコとかじゃないから、余計好き。
「鈴花はよ〜!」
「シァ! 行く行く〜! コイコイ〜!」
松川くんのアドバイス受けちゃった私最強──!!
「うっしゃぁああああ!!」
「うおっ! 打ちよったこいつ〜!」
「でもアウトー!」
「あー!」
「鈴花ちゃんシマパン〜!」
「うぁああそっちは可愛いキモノ柄だったじゃんよ〜!」
あーも、体育の女子バレー忙し楽しい。──


体育終わって着替えて──みんなで教室戻る途中。
「……っ松川くん……」
クラスの男子と、そう、松川くん。
今日のアドバイスで私でも何回かスパイクちょこっと打てたよって──
いうか、当てれた? 程度だけど、それでも、言いたい、言いたい、松川くんアドバイスありがとうって──。
けど、男子と会話してて。
あっ、目が合った。
う、うそ、コッチきてくれる……!
「どうだった? 何本か決めた?」
「う、ん……っへろへろスパイクだったけど、どうにか……っアドバイスありがとう!!」
「いやいやそれほどでもっつうか。でも、成功した一本目は俺も見てた」
「そ、なんだ……っ!? めちゃくちゃヘタだったし、恥ずかしいような……っ」
「バレーやってる俺より上手かったら、そりゃこっちもビックリだよな」
う、松川くんニヤリて──!
な、なんかドキドキするしいいい!!
「そ、だよね……! でもバレー楽しいんだな! なんか、みんなでやるから楽しいなって……」
「船津さんは部活、やってないんだ」
「それがゼンゼン……やりたいと思うのもなかったなあ……ずっとバイトと勉強ばっかで……なんかとりえなくてはずいな……」
「でも、バレー楽しかったっしょ」
「うん!」
「俺の彼女がそう思ってくれるだけですげー嬉しいんだけど」
「松川く……!」
あああ凄いなんていい響きだよ、俺の彼女て──!
あああなんて嬉しいんだよ、松川くんに嬉しいって言ってもらえるだけで。──
「それにとりえ、あるじゃん」
「えっ!?」
「いつも一生懸命で、料理うまいし」
「料理、か……ま、まだまだだけど……っ」
「ぶっちゃけ、俺を好きっつってくれるだけで、充分なんだけど」
にって笑って。──
教室戻る廊下、クラスの子に友達に、みんなそこそこを歩いてて。──
私は、もう。
「あはは鈴花が溶けそうになってる!」
「う、うるへー……」
友達にからかわれても、そんな声しか出ない。
「よしよし、写メるべー松川君も入って〜」
なっ……激写するつもりか〜!!
「……あ! 今スマホ持ってるってことは体育館に持ち込んでたな! 授業をなんだと思っとる〜!」
「ううわ、出たよマジメ番長〜あんたそんなんだから今まで彼氏の一人もいなかったじゃんよ」
「う、うっせー!」
──や、やば……松川くんの前で「うっせー!」とか、言葉遣いヤバいー!
「ホラ早くお入り〜。松川君と松川君が好きすぎて溶けそうになってる鈴花はい、ピース〜」
「と、溶けそうに、確かに、なってるかも、だけど……っいきなり写メとか……っ」
「撮ってもらう?」
「う、うん……っ」
あ、松川くんに促されて、すこんと頷いちゃうとか──。
「はい、撮れた〜! 鈴花にも送っとくからー」
「えっありがとう!!」
「やっぱ嬉しいんじゃんよ鈴花〜」
「そ、そりゃ嬉しいけど……っか、髪とか大丈夫なの!? 大丈夫かな!?」
「オラだいじょぶだっての」
「あっ……」
なんか感激、松川くんとカレカノってかんじで写ってる、とか──。
でで、でも、私のツラはなんか赤いつーか、緊張入りまくりていうか……!
うう、可愛くきゅぴーんピースとか……で、で、できるかあ〜!!
「髪はだいじょぶだけど……っ顔、キョドってるような気が……っごめんね松川くん、一緒に撮ってくれたのに……!」
「いつも通りじゃね」
「え……」
松川くんは画像見ながら、
「いつもこんなカンジで一生懸命傍に居てくれるつうか」
──可愛いんだよな。
そうぽつって呟くみたいに──。
「あー……なんか、きざだったか」
──ちょっと照れたみたいに。
「……っううん」
私は──ううん、私の方が照れまくってるのは確実。
「見えるわ……」
「えっ、なにがよ?」
画像送ってくれたらしき友達がぼそっと呟いてびくっとしてしまった。──
「見えるわ、さっきの写メ、教室帰ってからセコセコ待ち受けにする鈴花の姿が見えるわ……」
「くううなんでそんな未来をわかってー!? サイドエフェクトでももってんのか!」
「船津さん、じゃあそれ、俺にもちょうだい」
「は、はいっ!」
「ブハァ! はい、だってこいつ!」
くうう〜松川くんの前で〜!
でも、写真撮ってくれたとか、マジ感謝──ほんとに。
教室帰って早速松川くんがスマホ出して──私も。
二人で写ってる写真、送ったら、松川くんと交換してしまった連絡先ってヤツ──。
「う……やばい、嬉しい……泣きそう……」
「そんなに嬉しいの」
隣の席の松川くんになんか、見守られてる感。
あったかくて安心しちゃうのに、ドキってしょうがない〜!
「ちゃんと待ちうけにしたんだ」
「うん!」
そう、待ちうけには大好きな松川くんと、その隣で緊張丸出しな私が居て。──
でも、
──いつもこんなカンジで一生懸命傍に居てくれるつうか。
そう言ってくれた松川くんの気持ちが嬉しすぎて、こんな緊張丸出しでも、今はいいかなって。──
「俺も待ちうけにした」
「あっ……ほんとだ! うあ……っおおお嬉しい……!!」
「友達とか部活の連中に見られたら確実にイジられる」
そう言いつつ、松川くん嬉しそう? な顔──!?
「自慢してもいい?」
「うあ……あっ、嬉しい、けど……っ」
「ダメって言われてもするけどな」
あ、そんな、いたずらっぽく、ちょいにやりとか──!!
「俺の彼女かわいいんですって」
あ、もうだめです──。
机に突っ伏して頭ゴンしそう。
松川くんの顔、もっと見たいのに、これ以上はドキドキしすぎて死にそう──。
「そういや俺、気にしてたんだけど」
「へあっ! はあっ! はいっ!!」
くう〜! ヘンな声出た〜!!
「俺、船津さんて呼んでるし」
「え? うん……あ、鈴花でも船津でもなんでも……」
「鈴花って呼べてる辺りにはもっと距離近い写メ撮れてるんじゃねーかなって」
松川くんに、すぐにでも呼んで欲しいって思ってしまった。
そう言いたかったのに次の授業始まってしまった。──
たぶん、まだ始まらなくてもきっと言えなかったんだろうなあって思った。
胸が苦しいくらいで、すぐ言葉になれなかったんだろうなって。


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