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お待たせ──天童 彼女ヒロイン
柔らかいシーツがもごもご動いて、絡み付けば口や肌を滑らせたりまた絡ませたり。
「んあ……っくすぐっ」
鈴花が反応すると喜ぶ彼はまたすんなりと楽しみながら弄る、行為の後のひと間際。
着信を知らせる音が鳴った。──
「んぁ? 太一かよ〜どした〜」
鈴花がふう、と息をついた。
せっかくたまのオフに会えればやっぱりコレかと。
まあわかってはいるけれど、と。
「あー連絡キタキタ、今、みんな若利君のとこに集まってるから〜ってさ」
「別にわいわい騒ごうなんてのじゃないでしょ」
前にもこんなことはあったもので、鈴花は軽く口を尖らせるだけ。
「そーそーこないだのゲームのムービー見て〜多分ミーティング雑談〜オフだから軽〜く?」
絶対軽くないわそれ。
わかりつつ、鈴花もむくっと起き上がった。
何も纏ってない肌をシーツで少し、隠しながら。
彼は──覚はというと、既にひょいひょいと服を着込んでいる。
「さーて行こっかなーねェー行ってもいい?」
ダメだなんて言ったこともないし、そんな女と付き合うかあんたが──。
鈴花がひしひしと思うことで、だからこそそっけなく対応してしまった。
「行けば」
邪魔する気は全くないけれど、やっぱり少しは寂しいからだ。
「シャワー浴びてった方がいいんじゃないの」
「ダイジョブダイジョブ、する前浴びたし汗もかいてないし? 鈴花の部屋のエアコングッジョブ〜」
とはいえ、少しはいや、かなり、熱は上がったつい、今まで。
「そりゃ、物理的な汗はそんなかいてませんかね覚くん」
つい、可愛げなく言ってしまえば、まるで平気そうなツラはやっぱり平気そうだ。
「あーゴムもつけたし、キレーにしてもらったし完全にダイジョ〜ブ鈴花グッジョブ〜」
「あっそ」
つい、自分の舌が味わった感触を思い出してしまって目を背けたなら、覚という彼はぱぱっと立ち上がって、
もう行く構えだ。
「んじゃ行くね〜寂しい?」
「……っべつに」
その意地っ張りに、ぎゅるんと見開いた眼が迫った。
「ホラホラ顔よーく見て鈴花、俺のカオ」
「……っなによ」
「このファニーフェイスカワイイデショ?」
「ファニーつうか時々マッドつうか……」
「お〜くれいじ〜? くれいじ〜サトリ!? 俺サイコー」
「もー……さっさと行け」
「ホラホラもっと見て見て」
「……なによ」
別れ際に寂しがらない彼に寂しいと思われたくない──だから意地を張っても、
シーツの下は真っ裸のまま。
「鈴花ちんが夜まで俺のカオ忘れないよーにホラホラ」
「ハァ? どんだけ記憶喪失……っ? だいたい、夜までってなによ、今から部活の子たちと集合して、夜また来るってこと?
何時になんのかわかんないじゃん、覚だって寝ないと……」
「夜寄るからちゃんと待ってるように〜」
「だから……忙しいでしょ」
「じゃー言い方変えっか、鈴花がイイコにして待ってるように〜」
「……忙しいでしょ、早く行かなきゃ」
「アラアラ意地っ張り? もーそーいうの引っぺがす暇もねーから、”帰って来てから”でいーい?」
ここが帰る場所だなんてそんな言い方ずるい──。
かぁっと頬を赤くすれば、また顔を背けても、心音は高鳴る。
「な? 夜寄るから」
「でも、向こうに泊まったりしないの」
「お泊り? ないっしょ。ナイナイ! 野郎同士でパジャマパーティでもすんの? 好きな子が〜とか?
俺俺、俺は今日はカノジョと二回ヤッてきたんだよねって言えばいい?」
「……ッバカ」
「なー夜寄るから」
「だから、遅くなったら、いいから……ムリ、しないで」
「夜、寄るから!」
「だから、」
「寄る夜から!」
「はあ!?」
「YORUYORUKARA!!」
「わーったよもー!」
この、人が心配すれば──だなんて、思っても嬉しいとはまるわかりされているだろうとは分かる。 
頭は、なでなで、撫でられる。
「はい、イイコイイコ」
鈴花は自分の身体をシーツでくるんで──玄関先まで送れば。
「好きなトコちゅーしていいしホラ!」
覚さんはこれみよがしなバンザイポーズ。
「……もー好きなとこって……」
「ハァイ、時間切れ」
鈴花が燻っている合間に、あっという間だった。
唇を奪われて、力が抜けて、またよしよしと撫でられる見送る身。
「そんじゃイイコで夜までちゃーんとこの俺の〜カワイイカオ忘れんな〜」
「忘れるか!」
もう、早く行かないと、と押し出してやれば、
「寂しくても一人でしちゃダメだよん」
「するか〜!!」
もういい加減ぐいぐい押し出してやったなら、
「カワイイカオちゃんと見にくっから待っててね」
とか、
「愛してるよ〜」
だの、
「日付変わったら三回目になんねーの?」
とかとか、けらっと言う覚がやっと、彼自らドアに鍵をかけて行った。
鈴花を鈴花の部屋に閉じ込めるように。


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