お年玉にはご注意を×× 「あけましておめでとうございます。」 俺は今、並盛中応接室にいる。 ナゼかって? そりゃあ、雲の守護者兼並盛中最強風紀委員長サマに新年の挨拶をするためで。 "ツナ。ボスならボスらしく新年の挨拶してこい" とリボーンに銃を突きつけられ泣く泣くここにきた。 「あけましておめでとう、沢田。」 この人はお正月なのに実家に帰らないのかな? どんだけココが好きなんだよ…;; 俺は雲雀さんの並盛中好きを改めて実感させられた。 「……それじゃあ、俺はこの変で。」 俺は雲雀さんが苦手だ。 なに考えているか全然分からないし、すごく怖いから。 でも好きなんだ。 苦手で好きって矛盾しているって言われるかもしれないけど、惹かれていることはまぎれもない事実。 すき。 この気持ちを偽ることなんて出来ない。 俺、雲雀さんのことどんだけ好きなんだよ…。 「ねぇ…」 自分が哀れになってきたし…トンファーが出てくる前に帰ろうとしたらいきなり雲雀さんに声をかけられた。 やばい…。俺、いきなり地雷踏んじゃった? 今このタイミングで帰るのはまずかったの!!?? 「なにそんなあたふたしてるの。」 え…別にあたふたなんかしていませんよ。 全然。やだなぁ、雲雀さん。 「目、泳いでるけど。」 「……ッ…!!」 俺って本当に顔に出やすいよな…。 もうちょっと雲雀さんを見習ってポーカーフェイスに… 「キミはどちらかというと声に出やすいよね。さっきから考えていることを口に出してるって気付いてる?」 ちょっ、雲雀さん。 その両手に光るトンファーっぽいものは…!? 「トンファーだけどなにか?」 「……ごめ、ん…なさい。」 殺される。 それを悟った俺は、潔く謝罪の言葉を口にした。 今年の目標決まったぞ、リボーン!! 今年の目標は、"思ったことを絶対に言葉にしない"!! 俺は心の中で家庭教師に叫ぶと、フッと雲雀サンからの視線に気付いた。 「…な、なんですか…?」 ビクビクしながら聞くと、雲雀さんはニコッと笑って手を出した。 「え?」 これは握手を求められているのか。 でもこの状況でそれは考えにくい。 俺はどうすればいいのか分からず、雲雀さんを見つめる。 「お年玉、くれないの?」 「……はぁ!!??」 雲雀さんの予想だにしない発言に、俺は大きな声をあげてしまった。 ちょ、雲雀さんがお年玉とか全然似合わないからッ!! それに、中学生の俺がなぜ雲雀さんにお年玉をあげなきゃいけないのか。意味が全然分からない。 「だってキミ、一応ボスなんでしょ?キミを守っている僕に、それをくれないなんておかしいでしょ。」 いやいやいやいや。 雲雀さんの思考のほうがおかしいですから。 「…まさか、ないの?」 ないに決まってるじゃないですか!!!! 「……はい。」 なんて言えない。 「そう…じゃあ仕方ないね。かわりに」 ――ちゅっ 「……ふぇ!?」 い、いま…!!!! 口に…キス……? いきなりのことに頭がついていかない。 なんで雲雀さんはこんなことするの? こんなことされちゃったら、俺…バカだから期待しちゃうよ…? 「なんて顔してるの。」 「い、いま…なんで?」 「だって、お年玉用意してないんでしょ?」 あ…だから だから、雲雀さんは俺にキスしたんだ。 なんだ。 一人で期待してバカみたい。こんなだからリボーンにバカツナって言われるんだよね。 「っていうのは口実…」 え……? 口実って、口実ってなに? 「雲雀さんっ…俺、バカだからはっきり言ってくれないと分からない!!そんな風に言われたら俺期待しちゃうよ…っん…!!」 もうどうしていいか分かなくて叫んだ俺の腕を引き、再び雲雀さんは俺の口を塞いだ。 「…っんぅ……ひ…ばっ…」 「期待しなよ。」 静かに離れた雲雀さんの口から出た言葉に俺の目からは涙が溢れた。 「…す、き…すきぃ……」 「うん、知ってる。」 雲雀さんにしがみついて泣く俺に雲雀さんは優しく頭を撫でてくれた。 十分泣いて、泣き終わった俺は雲雀さんの肩を借りるようにしてソファーに座っていた。 「…その着物姿、他の奴に見せないでね。」 「……は、い…。」 泣いたせいか、すごく眠い。 雲雀さんの言葉に適当に返事をする。 あぁ、もうダメだ…眠い。 重くなる瞼に抵抗することなく瞳を閉じた。 「赤ん坊のおかげ、かな」 すでに夢の中にいた俺が、今日…この強制的に行かされた挨拶がリボーンに仕組まれたものだということを知るのは少し先のお話。 ――― これから始まる不器用な物語…―― 20080103 |