始まる終わり
「じゃあ、つぎいこー!まだ回るとこいっぱいあるよ!」
「まだあるのか...?!」
もう1時間は動き回っている気がするんだが。
慣れない靴だからか、もう足が疲れてきた。
階段が多いな
「うん、僕もね、ここ来て10年だけど、まだあれ?ってなるときあるよー」
「...10年?銀、今何歳なんだ?」
「え?ハタチだよ?」
「え...」
「うそ」
「びっくりした...うそかよ」
「嘘だよぉwwwwww僕が20に見える?レンレンってほんっとバカでかわいいねぇ」
...太陽みたいな笑顔ですごいこと言われた気がしたんだが。
気のせいか。疲れているんだな。
緊張して、あまり眠れなかったし。
「着いたよ!この部屋にいる子は戦闘用軍人だから、仲良くなれるかもね!」
「そうなのか」
しかし、その扉には[立ち入り禁止]と書いてあるプレートがあった。
ドアノブを回しても開く気配はない
「...挨拶はまた今度にするよ」
「え?なんで?」
「いや、入れないし」
「入れるよ?」
いや、だから鍵がかかってて...
銀の言動の理解ができない。
俺がとまどっているのをお構いなしに、銀は当たり前のようにドアノブに手をかけた、と思ったら
ガァン!!!
蹴った!!!!??
銀が細い足で思い切り扉を蹴ったせいで、ドアノブが壊れたらしく、鍵のかかった部屋に難なく入ることができてしまった。
「ホラね!」
「...ほらって言われても」
壊れた扉の向こうは、言葉では表せないような状態だった。
つみあげられたゴミ袋の山、即席料理の残骸、薄暗い部屋、床には埃がかぶっている。
すごい部屋だな...
しかし、部屋の真ん中にはロボットアニメの操縦席ようなマシンがドンと置いてあった。
操縦席のような一人がけのソファはパソコンに連結していて、3つほどの液晶ディスプレイの大画面が目の前に付けてある。
キーボードを打つ音だけが、聞こえていた
...俺はというと、若干じゃない。ドン引き状態だ。
「青くん!」
ヘッドフォンのせいか、銀が呼びかけても気づいていない。
何度か「青くん」と呼んでいたが、銀は諦めて肩を叩いた。
バッ!!!
勢いよく振り向かれて少し驚く。
「なんで俺の部屋にいるんだよ」
「だって、青くんに挨拶しなきゃいけない子がいたから」
「誰、その人。俺の領域に入らないでくんない?」
「紅蓮だ。今日から零番隊に配属されることになった。」
「えっとねぇー、青くんは青葉(あおは)くんっていって、15歳の167cm、50キロだよ!」
「お前が言うのかよ!ていうかなんでそんなことまで知ってんだよ!」
「パソコンを使ってはっきんぐ?とかなんかいろいろ僕らの為にいっぱい頑張ってくれてるんだよ」
「が、頑張ってなんか、ねーよ!あんぐらい楽勝だっつの!これだからアナログ人間は...!」
14歳か、若いな
.
零番隊に入るのに年齢が関係ないのは分かる
でも、
でも
『おにいちゃん』
ハッ!!!!
後ろに人の気配がしてバッと振り向く
しかし、なにもなかった
「...っ」
あぁ、だめだ
過去に囚われてはいけないのに
「...レンレン?」
「っ、なんだ?」
「大丈夫?」
銀が眉毛を下げながら額に手を当ててきた
伸ばされた手をとって、そっと戻す
「あぁ、なんでもない」
『おにいちゃん..』
俺はまだ、アイツとの過去にとりつかれているのか
...はぁ
なんだか、憂鬱だ
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