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始まる終わり


『国軍第零番隊は国家の忠実な狗である。

国家の驚異を滅ぼし、栄光を手に国家の為に身を滅ぼせ』


毎日毎日、朝七時にめざまし替わりの放送が入る。

この放送では目覚めが悪いから、少し早めに起きるようにしている。


だって、物騒だしなんだか不吉だ


戦闘用軍人は決まった勤務時間はなく、任務がない場合は何時に起きなければならないことはないのだが。


現に、白なんかはいつも昼頃起きてくる。


今日で俺は配属されてから3週間たっていた。


そんなことをふと思いだすと、多忙だった3週間が蘇ってくる


まだ入ったばかりだからと難しい任務にはまだついていない。



わからないことばかりだけど、デスクワークはだいたい慣れたと思う。


情報処理といえば、青葉のネットワーク技術には驚いた。

素晴らしいハッキング技術だ。

素人の俺でもすぐ分かった。




....戦争は、まだ始まっていない

今は少し落ち着いていて、でも緊迫した雰囲気で

冷戦状態がつづいていた

いつ、また戦争が激しくなるか分からない

昔みたいに....




それでも少しホッとする自分に嫌悪感を、感じた


俺はなにをするためにここへきたんだと、自問自答しなくても、答えはすぐ見つかる



ぐっと拳を握って、ハァーと、深呼吸をした



「ちゃんと、大丈夫だ」








「ちーっす、紅蓮さん。今日は暇的な感じ?」


「紺、帰ってきてたのか?」


紺は三日前に、国外への任務についていたから、そろそろかなとは思っていたけど。


零番隊はよく国外出張が多いらしい。


スパイ活動などもあって、あまりここへは帰ってこれない戦闘用軍人もいると銀が言っていた。



「昨日夜中帰ってきた系。ぱねーわ。だるしんぐー」


悪い、今なんて言った?

そんなことは言えないが、紺の言葉遣いの解読には数秒時間がかかる。


「午前中は何もないが、午後からは検診があるそうだ。どこも悪くないのにな」

「あー、それは俺らはいっつも万全の態勢で出動しなきゃだからなわけよ。たぶん紫苑も今日検診じゃね?」

「じゃあ、あとでいっしょに行くよ」

現代語....というのだろうか、俺はそういうのに疎い、とこの前、紺に言われた


紺のは現代語とか、そういうレベルだと思えないんだが....


「じゃあさ、鍛錬場行かね?ちょっと組手付き合ってほしい的な。」


「組手?いいぞ。じゃあ着替えてきてもいいか?」


「あざーっす。了解ー」


紺がピシッと敬礼をすると、紺色に近い結んである黒髪が揺れた


アジアの生まれで中性的な顔立ちで人種的な問題の細い体型からは想像できないが、

初めて組み手をしたときは紺の体術には絶句した。

体型的なことから少し手を抜いた自分が恥ずかしい


紺はカンフーというアジアにある国の体術をベースとした自己流の体術駆使した戦闘員だった。

さすがに本業には勝てないが、俺もそれなりに楽しかった。

俺は飛び道具の方が得意だけど、それになりに体術も体得していたと思っていたのに

あっさり投げられて、


尊敬、したりして。


戦闘用軍人のみんなにはいつだって驚かされる。

俺とほぼ同じ年なのにそれぞれが自分の道を作って戦っている。

俺も早く追いつかないと....



それはそうと、朝から運動なんて、健康的だ


ちょっと職業病ぎみかな


たまには気分転換でもしようかな





鍛錬場についた頃には、紺はもうトレーニングウェアに着替えていた


トレーニングウェアだけにタイトなフォルムで伸縮性に優れている特別な素材らしい


ノースリーブになっているウェアを着た紺は腕を伸ばしてストレッチしているとき、俺に気づいて手を振った


その隣には白もいた。


こんな朝早く珍しい。


「白、今日ははやいな」

「おはよ...」

「いつも昼くらいに起きてきてないか」

「毎日12時間睡眠目標...だから...」

「白さんが早起きとかウケるーww」


ゴスッ!!!

「ぶっ!!?」


眠そうな顔とは対象的に目が追いつかないようなスピードで紺の顔に白の拳がめり込んだ。


「....なにも、ウケないけど」


5メートル先に吹っ飛ばされた紺は、涙目で真っ赤に腫れたおでこをさすった


「イッダー!!!何すんですか的な!!!!」


「は、白?!なにやってんだ!紺平気か?」


「いって、かすったしー」


「なんか....紺、ムカつく」


「俺は白さんのことだぁあいスキ〜。よかったですねー」


「それはどうも」


....このふたりはあまり仲が良くないのだろうか





結局、紺は白と組手と言う名の殴り合いを始めてしまった



三十分ほど経ってから、紫苑が鍛錬場に来たので紫苑と組手をして。


「紫苑も接近戦タイプなのか?」

「俺か?....まぁ、そうなる」

「体術、俺に仕込んでくれないか?」


冗談ぽく、言うと、紫苑はすこしだけ眉をさげて



「体術なら、紺に習った方がいいと思うぞ?」


切なそうに、笑った





やっと疲れきったのか、紺と白が微妙な距離感で戻ってきた。


「おつかれ」


自分に近かった白の方へ近づき、タオルを渡した。

「ありがとう」

少し笑った気がして、顔が赤くなった気がした。


ほんとに綺麗な顔だなぁ




「もーほんとありえない系。モラルとか知って欲しい的な」


紺が少し離れたところでそう愚痴を零すと、白はハァ、と短くため息をついて、





「本当に可愛くないやつ」




呟いた。




ポーカーフェイスの白が、面白いくらいに拗ねた顔で。






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