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始まる終わり


夢から覚めてから十分ほどで医療研究所という場所にに着いた。


これから、よく通う場所になるから慣れておけ

と、さっき紫苑に言われた。

戦闘用軍人は、月に1回は定期的に検査があるらしい。

そして、任務での怪我などの治療などもここで全て行うらしい。




車を止めて、建物を見上げる


そこは新しい綺麗で大きいビルだった。


「一番上が見えない....」




そうつぶやきながら、俺は紫苑のあとをついていく。




セキュリティ対策のパスワード認証や、指紋認証を終えると、自動ドアが開いた



「紅蓮の検査室は五階のG-9という部屋だ」


唐突に言われて少しだけ戸惑う。


「紫苑は?」


「俺もこれから検査だから、終わったら迎えに行く」



「....分かった」






エレベーターに入って5というボタンをゆっくり押す


エレベーターの扉が締まる。



紫苑が、こちらに手を振って、エレベーターを締まる瞬間に俺に笑いかけた。


そこから五階まで行くのには一瞬だった


『変な実験も、やってるやらしいがな』


あぁ、もう



心細い気持ちなんて、かき消すようにポケットに手を入れた





G-9


銀のプレートが目についた。



「あ....ここか。....失礼します」



戸惑いがちにスライドドアを開けた。


「こんにちは。紅蓮くん」


中にいた男性から優しそうな笑顔が向けられて。


「お願いします....」


「ふふ、そんなに硬くならないで。今日は君のデータを取るだけだから、楽にして?」


「....はい」


「僕はセレナ=ルーシャ。君の専属医師です。」


「俺の専属...医師ですか?」


「戦闘用軍人の君たちのために僕は技術を磨いたんだ。君の負担が、すこしでも軽くなるように、ね」



「僕たちには、戦うことができないから」



と、切なそうに付け足した。



「っ、そんなことないと思います!」


自分でも、すこし驚いた

予想外に声が大きくて。


先生は俺の否定に驚いたみたいで、亜麻色の優しい目をすこし見開いていた


かまわずに続ける


「...俺たちのために何かをしてくれるだけで、それは一緒に戦ってくれてるんだと思います。俺はまだ任務にもついていないし、まだまだだけど、...みんな、感謝してくれてると思います」


だって、そんなの悲しい


いつだって、みんなは、....俺たちは、誰かに支えられてるんだと思うのに


俺が知ったかぶりして言っていいのか分かんないけど。


でも、それって、俺は、なんか嫌だ




「ありがとう。」


「....ごめんなさい、なんか」


「紅蓮くんは優しいね」


「優しい....ですか?」


「うん」



優しい


優しい?


俺はそんなんじゃない



ただ、自分が傷つくのがこわいだけだよ、ーーー





「あ、そうだ。白は、元気?」

「白...元気だと思いますよ。いつも眠そうだけど。」

作った笑みを見せて、俺は「どうしてですか?」と付け足した


「そっか、僕ね、君が来るまでは白の専属医師だったんだよ」

「え?なんで、俺に?」

「....なんで、かぁ。んー、紅蓮くん、僕のタイプだから、かな」


「え?」


亜麻色の瞳が俺を酔わせた、気がした


「ふふ、ジョーダン」



顔が火照って、心臓がうるさい。


....なんだこの、不整脈


「白、先生が代わって大丈夫だったんですか?白、ちょっと潔癖なとこある気がしたから」



白は、体をベタベタ触られると少しだけ眉間を寄せる癖がある


だからなのか、銀が抱きついているところも見たことがない


人嫌いなのかと思ったけど、そうでもなさそうだし。


ちゃんと、話してくれるし、冗談言ったら少しだけ口元が緩む


豪快に笑ってるところは見たことないけど



「潔癖?....まぁ、他の人が見たらそう思うのかもね」



意味深に先生はそう言った。



「え?」


「ううん、なんでもないよ」




先生は笑ってから、ごまかすように今日のスケジュールを淡々と話した


から、余計に気になってしまった。




だって、白のこと、俺は何も知らないから





他にもなにも知らない人なんて沢山いるのにね





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あきゅろす。
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