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近くの恋
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「本城君、すごい人気だねやっぱり」

隣の奥田君が苦笑する。
休み時間。心の席の周りには人だかりが出来ていて。元々心の人気はすごいものだったけど今日から特に、だ。原因は多分あれ。いや、多分じゃなくて確信なんだけど。

「付き合ってねーよ、凪と」

心が言ったこの一言が切欠だったのだと思う。それから瞬く間に心がフリーであることが学校中を駆け巡りクラスの奴らはもちろんのこと、他のクラス果ては外の学年からまで集まってくる始末。
なぜ心がこんなことを言ったのか。それは俺が奥田君に告白されたという話が学校中に広まっていて、それはいつしか尾ひれがつき俺と奥田君が付き合っているという話が皆の認識になってしまったからだ。そして誰かが聞いた、荒川と付き合っているんじゃないのか、という問いに対しての答えがあれだ。

「あ、そうだ荒川君。この映画見た?」
「え…?」

奥田君が映画のDVDをカバンから取り出した。

「これの続編さ、今公開中なんだ。もしよかったら…」

奥田君の話は耳に入って来ながらも、頭には全然入ってこなかった。なぜなら。

「心様、今日のお昼ご飯一緒に食べましょう?」
「あ!ずるい!僕が!」

やめてよ、心にベタベタしすぎ。
心とその取り巻きの言動が気になって仕方なく、気が気じゃなかったから。
心も心だ。心なしかデレデレしているように見える。俺のこと好きって言った癖に。こっちを見ようともしない。そもそも、あの時言っても良かったんだよ。俺と付き合ってるって、嘘でもさ。俺は別にそう言われても嫌じゃなかったのに。

「荒川君?」
「へ…?あ、ごめんね。その映画、試写会行ったからさ。もう見たんだ」
「え、そうなの」

心と一緒に行ったんだ。帰りに食べたパフェが美味しくて。
心は優しい。いつも俺のわがままに付き合ってくれるし、俺の話を聞いてくれる。だから今回のアレだって、俺が奥田君を好きだと思ってるからあえてああ言ってくれたんだって解ってる。でもね、心。俺、気付いちゃったんだ。自分の本当の気持ちを。

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あきゅろす。
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