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「ふー…ん。ま、セフレならいいぜ」
「せ、せふれ…?」

せふれってなんだろうとは思ったが、直感的にあまりいい言葉ではないことだけはわかった。例えるならそう、親に聞いてはいけない言葉なんだろうなと。

俺、薬師寺真央(やくしじ まお)の性格は一言で表現することができると自負している。その一言とはずばり“ミーハー”である。俺自身の強いこだわりなどということは存在せず、みんながいいものはいいし、みんなが好きなものは好きだし、みんなが欲しいものは欲しい。まあ欲もあまり強い方ではないので、欲しいとは思うが手に入らなくても悔しくて眠れないなんていうことは皆無なんだけど。でもみんながしていることは俺もしたいとは思う。
例えばこの目の前にいる平等院白夜(びょうどういん びゃくや)は、この全寮制男子校一の人気者。明治時代から続く大財閥平等院家の華麗なる血を脈々と受け継ぐ由緒正しい家柄で、名門である我が校で一年次から生徒会長を務める優秀さ。そしてルックスはというと雑誌などのメディアで引っ張りだこの超人気モデルである程のもの。今日も今日とてオシャレにセットされている黒髪で颯爽としているし。その姿は大勢の中の一人である俺なんかに告白されたところで何一つ揺るぎはしない。そんな彼には当然のように人が集まるし、人が集まるところには当然のように俺も集まる。みんなが彼に告白する中、ベルトコンベアーのように俺も告白するのは俺にとっては当然の流れで。

「それでもいい?」

あれ。なんか俺が想像していたストーリーと違う。彼のことは好きだが、きっと俺もみんなと同じように振られて、同じようにみんなと慰めあうものだとばかり思っていたのに。

「は、はあ。じゃあそれで…」

なんだかわからないけれど、もしかしたらみんなも彼のせふれとやらになる流れなのかもしれない。じゃあもうここは流されるままにせふれとやらでいいことにしておいた方がいいのかも。

「あー…お前あれだよな。同じクラスの、なんだっけ。やく…、薬師?だっけ?」
「薬師寺です。薬師寺真央」
「ふーん。真央、ね」

平等院君は少し笑みを浮かべると、ポケットの中から何かを取り出した。取り出したのはスマホと。

「ほら。これ。俺の部屋のカードキー。気が向いたら呼ぶから部屋まで来いな」

そういって手渡されたのは生徒会の特別仕様であろうカードキー。俺の一般部屋のそれとは違うもの。

「それと番号。教えといて」

それが携帯の番号だと気付いて慌てて俺も携帯を取り出した。

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