反射的に僕が出した右手は、グーだった。

対する井上さんは…







…チョキ。




「あっちゃー、負けちゃったあ。」


えへへ、と彼女は頭を軽く掻いた。


それじゃああたしから言うね、と言って、ゆっくりと深呼吸を始める井上さん。
その瞳が、突然真剣なものに変わる。

一瞬の間を置いて彼女が言った言葉に、僕は思わず自分の耳を疑った。


「…あ、あのね、……あたし、石田君が好き!!」

「…え?」


予期せぬ発言に、時間が止まった気がする。
しかしその感覚とは裏腹に、僕の口は勝手に言葉を紡いでいた。


「僕も…好きだよ。」

「ほ…ホント…?」

「うん、嘘じゃないよ。……井上さんが好きだ。」


改めて口にするのはやはり恥ずかしくて、また眼鏡をくいっと上げた。
なんだか、夢みたいだ。
彼女と両想いだったなんて。


「あたし、実はさっきまで泣いてたんだよ……。でも、石田君がきてくれて、なんだか元気になっちゃった!」


照れくさそうに笑う井上さん。
僕は思わず、その身体をそっと抱きしめた。


「い、石田君……」


一瞬で顔を真っ赤に染める井上さん。
しかし、かく言う僕も同じようなものだろう。

やがて、遠慮がちに僕の身体に腕が回った。


「…なんか、幸せだなあ……そうだ!晩ご飯食べていかない?石田君。」


ぎゅっと僕に抱きついたまま、彼女は言う。


「それじゃあ、お邪魔しようかな。」

「じゃあ、サバのアイス添え和風風味をごちそうするねっ!」

「い…いや、遠慮しとおくよ。また次の機会に……」

「えー、すっごくおいしいんだよ?これ。」


ぷうっと頬を膨らませて、それでも井上さんは笑っていた。

そんな彼女に、僕も自然と笑みがこぼれる。

お互いの温もりを間近に感じながら、僕らは声を上げて笑いあった。



end.


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