第1話
 漆黒の空に、星が鏤められ、月が浮かんでいる。とっくに子の刻を過ぎたというのに、此処、真央刑庭には幾つもの人影が在った。
「……ルキア……!」
「朽木隊長殿……」
「っ、る……きあ……」
 雀部が宥めるが、無駄だった。『六杖光牢』で動きを封じられた身体。虚ろに開かれた、輝きの無い目。白哉には、目の前の囚われの身となっている妹の姿しか、見えていないのだ。
「クソ……っ!」
 恋次は白哉の隣で、歯を食い縛った。そして、拳で地面を思い切り叩いた。
「うっ……う、朽木さん……」
「井上……」
「幾ら何でも、酷過ぎる……」
 茶渡と雨竜は唇を噛みながら、泣き崩れる織姫の肩に、優しく手を置く。
 6人と向き合っていた元柳斎は不意に身体を反転させ、棒立ちのルキアを見つめた。
「……只今より、十三番隊隊士・朽木ルキアの処刑を行う」
 元柳斎の低い声が響き、古めかしい杖が、細長い剣となった。
「万象一切灰燼と為せ、流刃若火」
 その剣からは巨大な炎が吹き出し、真央刑庭は、真昼の如く照らされた。
 元柳斎は、流刃若火の刃先を、ゆっくりとルキアに向けた。炎の大きさが倍増した次の瞬間、流刃若火が、振り下ろされた。
 白哉も恋次も、茶度も雨竜も、俯き、ギュッと目を閉じた。
「いやああああぁあ――!!」
 織姫の叫び声が、瀞霊廷に木霊した。

 突然、ガアンと刀のぶつかり合う音がした。ルキアを除いた、そこに居る全員が、目を見開いた。
「……!」
「な……」
「何……?」
「……やはり、来たか」
 何が起こったのか。そう問い掛けてくる視線を背に感じつつ、元柳斎は刀を握り直した。
「当たり前だ」
 炎の奥から、自信に満ちた声がした。
「……ならば、先に殺してくれよう」
「……させねえさ。……その為に来た」
 炎が段々と小さくなっていき、やがて消えた。奇抜な橙色の頭が、6人の目にはっきりと映った。
「……!」
「く……ろ、さき……君……!」
「黒崎!」
「一護……!」
「……よう、……皆」
 一護は流刃若火を斬月で防ぎながら、笑った。


あきゅろす。
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