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RAPTORS

 目眩と共に目に入ったのは見慣れぬ部屋だった。
 続いて何かが横にあるのに気付き、ゆっくりと首を傾ける。
 自分の隣に横たわる、黒いもの。
 それが自分と同伴して来た少年と気付き、隼はぎょっとした。
 添い寝への疑問より、寝起きへの恐怖の為だ。
 今の自分には“あれ”を受けられる自信が無い。
 とりあえず起こさない様に細心の注意を払いながら、寝台から出た。
 こうなったら自然に起きてくれるのを待つしかない。
 折れそうになる足を叱りながら、なんとか外に出た。
 いつもの日の光は無く、ガス灯のぼんやりした明かりのみが満ちている。
 扉を閉め、それに寄り掛かりながら、ずるずると座った。
 自然と深い息が漏れる。まだ目眩と頭痛が続き、呼吸が苦しい。
 しばらく座ったままぼんやりしていた。
 十五年前、自分はこの国に居た。それこそ断片的で無意味で、曖昧な記憶しか残ってはないが、確かにここに居た。
――傷が…
 そっと、布の上から右目を押さえる。
 今だに疼く傷。時々痛むのは何故だろう。
――地に、捨てられなければ…。
 考えそうになって、慌てて別の事を考える。
 その時だった。
 前方から数人の人間が駆け付け、背後から大きな何かが落ちた音がしたのは。


 隼を囲んだのは、自分と同じ容姿の根の人間だった。
「お前は何者だ?」
「それこっちの台詞…」
 囲んだ男の一人が言った問いに、隼は怠そうに目だけを向けて言い返した。
「地から来たのか?」
 隼の言葉は黙殺され、別の男から別の問いが降り懸かる。
「地から来て…問題あるか?」
「もう一人居るだろう。そこを通せ」
「嫌だっつったら?」
「どかせ」
 一人の男が他の男に命じた。
「おい…あんまり手荒い事すると吐くぞ」
 隼の言葉は再び無視され、腕を掴まれてドアから引きはがされた。
 そのまま放り出され、地面に横たわる。
 激しく咳込み、何か温かい物が口に上がってきたが、もはや動く気になれず出るに任せる。
――赤…。
 口の中に鉄の様な、血の味が広がる。
 男達が部屋の中に入った。悲鳴が聞こえなかったのは、黒鷹が既に目覚めていたからだろう。
――さては、寝台から落ちて目ェ覚めたか。
 先刻の何かが落ちた音と重ねて考えた所で、意識は闇と化した。

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あきゅろす。
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