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RAPTORS

 隼と縷紅が放火をした翌朝。
 黒鷹達は天と地を繋ぐ山“三界山”の山中に居た。
 この山から天までひっそりと進軍しようという作戦なのだ。
 董凱は我が子がまだ眠っている事に気付き、起こそうと近寄った。
 他の者達はとっくに目覚め、朝食を摂っている。
 彼は黒鷹の寝ている横まで来て、“寝顔は母親似でかわい〜な〜”とか、親馬鹿全開の思考を繰り広げている。
 いい加減起こしてやろうと思い、毛布を被っている体に手をかけ揺すった。
「起きろ〜。置いていくぞ〜」
 “父親ってカンジだなぁ、俺”とか思っている。
 それを目撃した鶸が叫び声を上げた。だが。
 時既に遅し。
 短刀は空を切り、父親にも容赦無く襲い掛かった。
 誰もがもうダメだと思った時。
 高い金属音が辺りに響き渡った。
「――っぶねー…」
 奇跡的に、董凱の剣は黒鷹の刀を止めていた。
「…ポスト隼だぁ」
 一部始終を見ていた鶸は、驚きと感嘆の混じった声で言った。
 因みに、この攻撃を受け止められるのは隼だけだったから“ポスト隼”である。
「あ、オハヨーゴザイマス」
 ちょっと気まずい黒鷹。
「おはよう今日もいい天気だねぇ…じゃなくて!なんだ今のは!?」
 父の怒りは尤もである。
「えーと、その…悪意がある訳じゃないですから…そのぅ…」
 言葉に詰まる黒鷹。
「黒ちゃんの毎朝恒例の寝起きの儀式ですよ、お父様」
 フォローを入れたのは茘枝。
「儀式」
「寝込みを襲う悪人もタジタジです。ねぇ黒ちゃん?」
「あ、うんうん。こんなクセ付けておくと、何があっても大丈夫って…」
「お父様も黒ちゃんを起こす時はお気をつけ遊ばせ…おほほ」
「あはは…」
 取って付けた様な笑いに騙された感も無くは無い董凱。
 その時。
「始まったぞ!」
 誰かの叫び声が彼らの耳に入ってきた。
 それと同時に羅沙が走ってこちらにやってくる。
「天の軍が動いた!もうすぐ地と当たるぞ!」
 羅沙は黒鷹達に言って、様子を見るように手招きした。
 彼らは羅沙に導かれ、地の国が一望できる高台へと登る。
 既に兵達が集まり、様子を窺っていた。
 人だかりを割って、国土を見る。
「…あれが…!?」
 思わず黒鷹は呟いた。
「すげぇ…」
 鶸も息を呑む。
 広い草原を、巨大な黒い塊となって進む天の軍。
 その速さも並みではない。
 大勢が地面を踏む音が、こちらまで響いている。
「あれと…戦うのか…」
 唖然として黒鷹が言う。
「あんなモンじゃない」
 董凱が言った。
「まさか今、全軍を出してはいないはずだ。天の兵力はまだ増える」
「あれでまだ居るのかよ…」
「皆は…隼や縷紅は…大丈夫かな…」
 不安そうに呟いた黒鷹の背中を、ぽんと鶸は叩く。
「だーいじょおぶだって。アイツら強いし。しかも根の軍が味方だぜ?」
「朋蔓と旦毘も居る事だし。まぁ負けねぇだろ」
 からりと笑う鶸や董凱に、黒鷹は頷く。
「さーて、あっちが頑張ってる間に山登りするか、俺らは」
 羅沙が言って、宿営地へと踵を返す。
 黒鷹達もそれについて戻って行った。


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あきゅろす。
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