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RAPTORS

 戻ると、進軍の準備がすっかり出来上がっている。
 整列している兵は、地の民と東軍の一部。
「やっと帰って来やがった」
 隼が迎え入れ、黒鷹の頭をこずく…と言うより叩いた。
「いってぇー!!何すんだよ!?」
「しつけ」
「あー、そりゃ必要だ」
 茶化した鶸を、今度は黒鷹が殴る。
「何で俺がとばっちり受けなきゃならねぇんだよ!」
「余計な事言うからだ!」
「だってホントの事だろ、なぁ隼?」
「お前にも必要だけどな」
 あっさりと言ってのければ更に激化。
「なぁっ!?俺は行い悪かねぇぞ!?」
「善くもねぇだろ!!って言うか隼、“にも”って何だ!!」
 ぎゃあぎゃあやっていると、縷紅と東軍幹部の面々がやって来た。
「相変わらず、ですね」
 縷紅が苦笑しながら言う。
「ま、子供はこの位が調度いいわ。元気なこって」
「お前も同レベルだけどな、旦毘」
「師匠それはキッツイっすよ…」
「まぁ、今から彼らのお守りは全てあなたの仕事ですから」
 縷紅がにこやかに自らの師に告げる。
「そーだそーだ。自分の子供の面倒はちゃんと見なくちゃな、親として」
「…ま、まぁ、ガキの相手くらい朝メシ前ってな…ははは」
「何か今、間がありましたよ?」
 乾いた笑いの後、縷紅が痛い指摘をする。
「…まぁ、旦毘がいないだけマシだな」
「うわ、ひでぇ」
「じゃれ合いはこれぐらいにして…」
 何か言いたそうな二人は無視し、
「黒鷹、そろそろ出発しなければ。皆さんずっと待ってますからね」
「…あ、そか」
 兵は彼らの横に整列し、待たされている。
 迷惑この上ない。
「じゃあ行ってきまーす。隼、縷紅、留守番頼むな」
「…留守番って何だよ。こっちのが大変だっつーの」
「そんな事ないですよ隼、黒鷹達には隠密行動を頼まなければならないんですから」
「おんみつ…?」
「あんみつ?」
「いーから早く行けっ!」
 けらけら笑いながら先頭へと走る黒鷹と鶸。
 それを見ながら頭を抱える隼。
 隣に羅沙がやって来た。
「あんなガキ共しょって、静かに動けって方が無理だな…」
 もっともな事を言う。
「ついでに子供とおんなじ様な親父も付いてるから、まぁしっかり面倒見てくれ」
 縷紅と共に去って行った董凱に聞こえない様に“保育士”に告げる。
「先が思いやられる」
「心中察するよ」
 がっくりと落ちた肩をぽんと叩いて隼は同情した。
 先頭に居る二人の声が響く。
「さぁて、早いとこ行こうぜ。いいカンジに曇ってきたし」
 待ち切れない様子の鶸。
「遊びに行くんじゃねぇんだから」
「同じ様なモンだろ?」
「お前だけ!」
 曇天を狙ったのは、天から動きを見えなくする為。
「出発進こーう!!」
「だから遊びじゃねぇし、お前が指揮するな!!」
 黒鷹と鶸のやり取りで、いつの間にか軍は進み始める。
「大丈夫かあんなので…」
 天気と同じ暗澹たる思いで自らも歩き始める羅沙。
「大丈夫、とは言えねぇな」
 他人事になった厄介事に晴れ晴れとする隼。
「失敗したら…バレたらどうするんだ?」
「安心しろ、東軍がなんとかしてくれる」
「無責任だなぁ、お前も王サマも…」
「そりゃどーも」
 数十メートル離れた所から、黒鷹が手を振っている。
「じゃあなぁ隼〜!約束守れよ〜!!」
「約束?」
「ちゃんと待っとけ、とさ。エラそーに」
 手を振り返してやると、満足した様に列に帰って行った。
「本当はちゃんと解ってんだな」
「何を?」
「戦の厳しさ…とか?」
「それ解ってなかったら出来ねぇだろ、こんな事」
「…そうだな。じゃ」
「おう」
 軽く手を振り、隼はそこに止まって進軍を見送った。




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あきゅろす。
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