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RAPTORS
14
 火の灯りの中に、地の民、根の軍、東軍が一同に集まっている。
 開戦前夜。
 黒鷹は彼らから見える壇に登った。
 妙な静けさだった。
 人がいっぱいで奥の方は見えない。
 その無数の目が見つめる中、彼は口を開いた。
「…はっきり言って」
 五年ぶりに天から地に戻ってきた日の事が思い出される。
 もう何年も昔の事のようだ。
「俺は戦はしたくない。もちろん国を取り返す必要はあるけど。でもそれを引き換えにしてまで戦なんかしたくないって思ってた。それは今もだけど。…最初はさ、俺と隼だけで、革命起こせって言われても、そんなもん出来るかって思ってたよ。ダメ元だよなって笑ってさ。でもいろんな事があって、今、こんなに沢山の味方が居る。信じられねぇけど。俺は地の民を守る為に味方…いや仲間を探してた。でも今は…そうだな、みんなこの国の民であり、仲間であり、俺の大事な人たちだ。だから生き抜いてほしい。今ここにいる全ての人に。皆は祖国のため…何より自分の大切な物の為に戦ってくれ。それが嫌なら戦わなくていい。命の保証は無いし、自分の誇れる物に命賭けて欲しい。でさ、俺は国と命を同じハカリにかけたくないからさ。皆を守る為に戦う。…全力で」
 にっと笑って、刀を高々と掲げた。
「生きて、新しい国に住もう。みんなで」


 壇から降りると、隼が階段に背を預けていた。
「…お疲れ」
「良かった?演説」
「バーカ、あんなの演説って言えるか」
「そうかなー。なかなか斬新で良かったと思うんだけど」
「そう思ってんのはお前だけだ」
 黒鷹はそれでも首を傾げる。
 それを横目に見ながら、隼は口を開いた。
「…よく、ここまで来れたな」
「ホントだよ。お前が“成功しなきゃ革命にならねぇ”って言うからさ、頑張ってやったんだよ、お前の為に」
「俺はお前の為に言ったんだ」
「…ま、お互い頑張ったな」
「お互い死に掛けたし?」
「ホントだよ。…お疲れ様」
「ま、本番は今からだけどな」
「そうだよ、今からの為にずっと動いてたんだから」
 戦では縷紅の策を採り、軍は天と地に分かれる。
 無論、隼は天に行けないし、黒鷹は王として一軍を率い天に向かう。
「…お別れか、また」
 ぽつりと黒鷹が言った。
「今度はすぐ会えるだろ。って言うより、すぐ帰って来い」
「お前も、今度はちゃんと待っとけよ」
「分かってる」
 階段の上段に座っている黒鷹の手が、隼の目前に差し出された。
 隼はその手を取る。
「…生きて」
「当然だ」
「想い出にふけるのは、その後」
「お前、本当に王になるのか?」
「いい質問だ」
「…は?」
 虚を突かれた隼。にやりと笑う黒鷹。
「まっ、考えてもみろ。戦がありゃ勝手に飛び出す王子様が、大人しく政治なんかすると思うか?」
「…無理だな」
「出て行く時はお前も連れて行くから安心しろ」
「安心できるかアホ」
 黒鷹の手を握っていた手を解いて、額に乗せ、
「あーあ。戦に勝っても先が思いやられる」
「いいじゃん、今度は気楽な旅でさ。ただ人に見つからねぇようにしねぇと…」
「バカ」
「バカって言った方がバカ」
 月明かりの下、二人は笑った。


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