RAPTORS
12
待ちに待った援軍は、根の軍が一番乗りだった。
基地から根の軍が見えた時、地の人々は騒然とした。
千を越える兵力の威圧感、そして見た事も無い異様な容姿を、天の人間の物と思ったのだ。
黒鷹達は説明に走り回り、兵の全てが基地に入ってやっと出迎えに向かった。
「進軍ご苦労!思ったより早くて焦ったよ」
黒鷹が光爛に言うと、彼女は笑った。
「我らの来る前に天が攻める事があれば、全てが水の泡だからな。私としても隼の事が心配で、気が気ではなかったのだ」
「…そいつぁ有り難いこって…」
これはこれで気恥ずかしそうに、隼がぼやく。
その様を見て二人が笑う。
つられて隼も苦笑混じりに笑った。
そしてそれから数日後。
「黒鷹っ!」
大急ぎで鶸が黒鷹の天幕に入ってきた。
「どうした?」
雑事の手を止め、聞き返す。
「北から大軍が!!」
「…まさか」
天が攻めてきたのではと、椅子も蹴らん勢いで二人は外に出、櫓に駆け上がった。
見れば、確かに北の方向から黒い大群がやって来る。
「鶸、隼と縷紅とえーと、その他もろもろを集めてくれ。早く!」
「うぃっす!!」
アバウトな指示にも関わらず、鶸は駆け出した。
続いて黒鷹も櫓の梯子を降り始める。
すると先に行った筈の鶸が駆け戻ってきた。
「何やってんだよ!?」
緊急事に黒鷹が怒鳴る。
「だって、隼がっ」
言い訳がましく言って鶸が後ろを振り返ると、隼と縷紅が並んで歩いてきた。
馴染まないツーショットである。
「カン違いしてんじゃねぇよ、王サマ」
隼が黒鷹に向かって言った。
「カン違い?何の事?」
少しムッとして問い返すと、縷紅が微笑して答えた。
「あれは敵軍ではありませんよ。そこから旗が見えませんか?」
「旗?」
梯子に捕まったまま、額に手を翳す。
青い旗が翻っている。
「あ、あれ?何か暗号っぽい物がある」
「東軍の紋章ですよ」
縷紅が教えると、しばらく黒鷹の動きが止まった。
そして。
「!!!っぶねぇ!!!」
梯子から、黒鷹の手は離れていた。
当然、落ちる。
それも、鶸の上に。
「痛て…下くらい確認して…」
黒鷹の下敷きになった鶸はたまった物ではない。
だが黒鷹の方は、潰れている鶸を一瞬たりとも気に止めず、駆け出した。
「おとっつぁーーん!!!」
叫びながら門へまっしぐら。
「…どこの田舎モンだ、アレは」
隼がぼやく。
「ま、とにかく私達も行きましょう。見ものですから」
悪戯っぽい笑みで、縷紅は歩む向きを変えた。
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