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RAPTORS
11
 暗がりの中で、黒鷹は起き上がった。
 隣に鶸が眠っている。
 真夜中――全てが寝静まる時間帯。
 一本だけ灯された蝋燭が、ぼんやりとした光を発している。
 眠れない。
 なんとか眠ってしまおうと目を瞑っても、頭の中は休まらない。
 不安、焦り、恐れで目は開く。
 たまらなくなって起き上がり、周囲を見渡した。
 布団――といっても普通の麻布だが――が、一つ空になっている。
 黒鷹は布団から抜け出した。
 古びた鉄の扉を押し上げ、地上に出る。
 そこには案の定、栄魅が座っていた。
「私も眠れなくて」
 黒鷹に気付いて、彼女は言った。
「傷は大丈夫なのか?」
「痛むけど、全く歩けない事は無いわ」
「そっか。無理するなよ」
 栄魅は悪戯っぽく微笑む。
「私とはタメでいけない筈よ、王サマ?一応、私も王族だから」
 黒鷹ははっとして口を押さえる。
「ゴメン…なさい」
 くすくすと、栄魅の笑いは変わる。
「いいのよ。王サマとゆっくり話すのは初めてだから、ちょっとからかってみたの」
「…なんだぁ…」
 どこか上の空で黒鷹は応えた。
 栄魅もそれきり黙る。
 黒鷹も突っ立ったまま。
 しばらくして、彼女はぽつりと言った。
「“無理するな”はこっちの台詞」
「……」
「その円い物、武器でしょう?」
 栄魅が黒鷹の左手に握られている物を見て言った。
「…別に朋蔓や東軍の人達を信用してないワケじゃない。でも…」
「分かってる」
 黒鷹はその言葉に驚いて栄魅を見る。
「私は止めなきゃいけないんだろうけど」
 黒鷹の心中を察して、彼女は微笑して小さく首を振った。
「行って。お願い。…隼を助けて」
 黒鷹は頷く。
 行かなければならない。
 闇の中、進むべき道が浮かび上がる。


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