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RAPTORS

 深緑をかい潜った光が、柔らかい土に降り注ぐ。
 その光景はどこか神秘的で、大地の恩寵に溢れている。
 そんな光景がこの人にぴったりだと、隼は思う。
 城跡への帰途。あの日から二度、日が昇った。
 背負っていると、ますます軽く、そして冷たく感じる。
――耐えられなかった。
 城跡まで戻して、安らかに眠らせてやりたいと思ったが、結局この林で司祭を葬る事にした。
 目の前で穴を掘っていた黒鷹と鶸が手を止める。
「もういいか?」
 鶸が訊いた。
 『ああ』と口許で応え、立ち上がる。
 もう一度、これで最後に、司祭を背負おうとして手を止めた。
「…なぁ」
 もう応えてはくれない彼に、呟く。
「あんたは何も後悔してねぇのかな…」
 不思議だった。
 自分は悲しいという気分ではないし、この人はこの人で笑っている様にも見える。
 あんなに不本意な最期だったのに。
 背負うと、軽いのか重いのか。
――見ててくれ。
 俺達は作ってみせる。新しい国を。
 誰も殺し、傷付け合う事の無い、新しい時代を。
 あんたが夢として語り聞かせてくれた、新しい世界を。
 …絶対に。
 埋める手つきは、重い。
 鶸も黒鷹も、泣きたいのを必死で抑えている。
 その顔を見て、良かったなと、どこかで思っていた。
 こいつらが泣くなら、この人は幸せだろう、と。
「そんな顔、してんじゃねぇよ」
 埋め終わって、鶸が黒鷹に言う。
「そっちこそ。…男だろうが」
 黒鷹が言い返せば。
「それこそ、そっちこそだ」
 と、鼻をすすった。
「泣きたいなら、泣いてやれよ。司祭の為に」
 隼は二人に言った。
「俺だって、そうしてきたワケだし」
 昔の事なのだが。
 黒鷹はぼろぼろ泣きながら、
「お前より先には泣けない!!」
と叫ぶ。
「俺も!!」
 鶸も同様だ。
「…子供な、お前ら」
 微かに笑って言ってやる。
 ここまで素直だと、いっそ羨ましいだろうか。
「そんな事言ってたら、一生泣けねぇぞ」
「お前、泣けよ!!」
 一体何を強制されているんだ、と思いつつ。
 ――根の人間は血も涙も無いって?
 いつか縷紅に言われた事を思い出す。
――それなら。
血も涙も流さずに済むのならば、それでいい――




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あきゅろす。
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