RAPTORS
7
深緑をかい潜った光が、柔らかい土に降り注ぐ。
その光景はどこか神秘的で、大地の恩寵に溢れている。
そんな光景がこの人にぴったりだと、隼は思う。
城跡への帰途。あの日から二度、日が昇った。
背負っていると、ますます軽く、そして冷たく感じる。
――耐えられなかった。
城跡まで戻して、安らかに眠らせてやりたいと思ったが、結局この林で司祭を葬る事にした。
目の前で穴を掘っていた黒鷹と鶸が手を止める。
「もういいか?」
鶸が訊いた。
『ああ』と口許で応え、立ち上がる。
もう一度、これで最後に、司祭を背負おうとして手を止めた。
「…なぁ」
もう応えてはくれない彼に、呟く。
「あんたは何も後悔してねぇのかな…」
不思議だった。
自分は悲しいという気分ではないし、この人はこの人で笑っている様にも見える。
あんなに不本意な最期だったのに。
背負うと、軽いのか重いのか。
――見ててくれ。
俺達は作ってみせる。新しい国を。
誰も殺し、傷付け合う事の無い、新しい時代を。
あんたが夢として語り聞かせてくれた、新しい世界を。
…絶対に。
埋める手つきは、重い。
鶸も黒鷹も、泣きたいのを必死で抑えている。
その顔を見て、良かったなと、どこかで思っていた。
こいつらが泣くなら、この人は幸せだろう、と。
「そんな顔、してんじゃねぇよ」
埋め終わって、鶸が黒鷹に言う。
「そっちこそ。…男だろうが」
黒鷹が言い返せば。
「それこそ、そっちこそだ」
と、鼻をすすった。
「泣きたいなら、泣いてやれよ。司祭の為に」
隼は二人に言った。
「俺だって、そうしてきたワケだし」
昔の事なのだが。
黒鷹はぼろぼろ泣きながら、
「お前より先には泣けない!!」
と叫ぶ。
「俺も!!」
鶸も同様だ。
「…子供な、お前ら」
微かに笑って言ってやる。
ここまで素直だと、いっそ羨ましいだろうか。
「そんな事言ってたら、一生泣けねぇぞ」
「お前、泣けよ!!」
一体何を強制されているんだ、と思いつつ。
――根の人間は血も涙も無いって?
いつか縷紅に言われた事を思い出す。
――それなら。
血も涙も流さずに済むのならば、それでいい――
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