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RAPTORS

 見飽きた調書室。
 だが今は立場が逆。
 いつも罪人を問い質す自分が、今は罪人だった。
「大体、おかしいと思ってたんだよ。テメェが、しかもそんな若さで将軍なんてな…。初めて見た時から気に入らなかったな、テメェは」
「それはどうも」
「ずーっと考えてたぜ…その小綺麗な顔に泥塗ってやろうってな」
「それならどうぞ。泥くらいなら冷たいだけですから」
 ふん、とかつての同僚は鼻で笑った。
そしてずいと縷紅に近付き、彼の顎を持ち上げて言った。
「明日には堂々とテメェを殺せる。テメェが逃がしたガキの代わりにな」
「……」
「ま、地獄で後悔するんだな」
「これ以上“天”に居るよりマシですよ」
 その時唐突に、一人の男が入ってきた。
 扉の開け方は荒々しく、息が切れている。
「どうした!?」
「し…侵入者です!」
「何!?」
 二人の男が慌ただしく部屋から出て行った。
 閉じるのも荒々しい扉の部屋に、縷紅は一人取り残された、が。
「はァ〜イ縷紅。お元気そうね」
「あ、お久しぶりです。どうも」
 …ここにはツッコミを入れるべき第三者が必要だったかも知れない。
 縷紅の視線の先には、茘枝が手を振っていた。
 因みに“視線の先”とは上、である。
「何だか騒ぎになってますけど」
「ああ、監視番にあっかんべしただけよ」
 茘枝は天井裏から身を乗り出し、手を差し出した。
「手を縛ってあるの、邪魔そうね」
「あ、大丈夫です。解いてあるから」
「…さすが」
 かくして、調書室から人が消えるという怪現象が起きたのだった。
「因みにこれは私の勝手な行動。こちらの組織は貴方の事知らないし、私もまさか縷紅が捕まってるとは思わなかったから」
「そうでしょうか?」
 茘枝はくくっと笑う。
「どうも、この度はウチの黒ちゃんがお世話になりました」
「やっぱりお見通しじゃないですか」
 二人は屋根裏から出、そして再び走る。
「あの件も打合せナシでしたけど」
「でもいつかはやると思ってたし」
「出しゃばってスイマセン」
「いえいえ。でも隼はへこんでるわ」
「ハヤブサ?」
「自分が助けたかった、って言う奴よ」


「…黒鷹?」
「ああ?」
「お前逃がした奴ってどんな奴?」
「ルコウっていう、髪の長いお兄さんだったけど。俺にあの刀返してくれたんだ」
「ふーん…」
「どした?」
「別に」
 隼は敷いてあった布団に潜った。
「何お前もう寝るの?」
「誰のせいで三日寝てないと思ってんだ、テメェは」
 黒鷹は納得したように大きく頷き、言った。
「おやすみなさーい」
 地上最初の夜は更けていった。




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