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RAPTORS

「つい腹減った八つ当たりで鶸殴っちゃったー。悪いな」
 いつものように、全く悪びれる様子は無い。
「まぁ、せっかく帰って来たんだから殴られるくらいどうって事無ぇよ…って、そんな訳無ぇだろ!俺殴ったら腹いっぱいになるのか!?」
「それいいなぁ!一家に一台お前が有ったら便利だな!」
「俺ってば飢餓防止に役立つのかぁ…ってオイ」
「帰って早々、コントですか」
 早い夕食を採りながら、にこやかに縷紅が言う。
「ネタが訳分からん上に、ボケとツッコミが逆だな」
 隼が冷めた感想を言う。
「誰がコントだ、誰が」
 迷惑そうに鶸が言って、一応コントは打ち切られた。
「それにしても、早いお帰りでしたね。本当に治ったんですか?」
「それがなぁ、隼と羅沙が荒治療してくれたお陰で、必要以上に早く治っちまったんだよなぁ」
「治してやったんだろ。感謝しとけ」
 隼が無感情に言う。
「…羅沙とは…?」
 縷紅が聞き馴染みの無い名を尋ねれば。
「ああ、島に住んでる、鶸のダチ」
「そう言えば…茘枝が言ってましたね」
「めちゃくちゃ世話になったからな、あの家には」
 あくまで羅沙本人の事ではないらしい。
「あ、そうだ鶸。羅沙から伝言」
「…俺に?」
 心外だったらしく、気付くのに一瞬の時間を要した。
「どうせ、良い事じゃねぇだろ」
「一度でいいから、島に帰って来い、って」
「……何で」
「華南も会いたがってたぜ。もし国が出来て余裕が出来たら、遊びに来いって」
 複雑な表情を浮かべる鶸。
 黒鷹にはその理由が分からない。
「何だ、嫌なのか?」
「――そうじゃない!そうじゃないけどっ…」
 俯く鶸に、唯一事情を知る縷紅が穏やかに話し掛けた。
「私が言える立場ではありませんが…。少なくとも島の人達は“見放された”とは思っていませんよ」
「…そうかなぁ」
 縷紅は頷いて、続けた。
「州侯とか、国の役職以前に、鶸自身が島の人達に好かれていたのではないですか?」
「……」
「何?お前嫌われてると思ったの?」
 黒鷹が目を丸くして言う。
「バカだなぁ」
「んなっ!!?」
「少なくとも華南や羅沙はそんな事言ってなかった。お前、絶対帰れよ?そんなカン違いされてたら、あの二人も可哀相だ」
「…そうなのかなぁ」
「そうなんだって」
「…そうだな」
 言って鶸は、やっと笑う。
「なんか、懐かしいな。早く帰りたくなった」


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