RAPTORS
2
からっぽだった腹に物を詰め込みながら、“隼二号だ”などと考えている黒鷹。
無論、羅沙の事だ。
――隼よりタチ悪いよな、絶対。
結局、一人ぼっちで夕食を静々と食べている。
そうしていると、扉が開いた。
茘枝と隼だった。
「華南が片付けで忙しそうだから、代わりに来てあげたよん」
「お子様が寂しがってるって、羅沙に聞いたんでな」
口々に言われ、黒鷹は「あのヤロウ」と口の中で言う。
「ところで黒ちゃん、どっか痛む所無い?」
「相変わらず全身痛いでーす」
「そう、華南がね、薬とか包帯とか…あと着替えも用意してくれたから、後で診てあげる」
「…アバラもイッてるっぽい」
「それはガマンしなさい」
「……」
しばらく笑えない日々が続きそうだ。
「ああ、それと」
茘枝が手にしていたカゴを机に置く。
中身は牛乳・チーズ・小魚…
「カルシウムだらけ…」
「アンタ意外と骨弱いからねー」
「今までの食生活が劣悪だったんですー!」
抗議してみたが、さらりと流される。
「後で華南にお礼しなさいよ」
「当たり前じゃん」
言いながら牛乳をむんずと掴み、ぐいと飲み干す。そして、がん!と音をたてて瓶を机に置いた。
「酒じゃねぇんだから…」
一連の動作を見て、隼は低くこぼす。
「ところでさ」
隼の言葉を無視して、視線は茘枝に。
「ここ、どこ?」
「…華南の家」
「ああ、そっかぁ…って違う!ここが地のどこだって訊いてんの!」
「お前ノリツッコミ寒い…」
「放っとけ」
果たしてこれは三人漫才と言うのだろうか。
そして、自分は部外者になったつもりで、茘枝は紙とペンを出す。
丸――正確には楕円を上下に二つ描いた。
「何それ?」
「判んないの!?」
「判れって方が無理だ」
分かった方には賞金モノだ。
「地の国の地図!もぅ、王子のクセして知らないの?」
「知らねーの」
この国は地図が出回る事が少ない。殆どの国民が必要としないからだ。
農耕で暮らす地の民は、遠出する事はまず無い。
二つの楕円のうち、下を指して言う。
「これがアンタ達の知ってる地の国。城はこの辺よ」
下の楕円の中心をぐるぐると印する。
そしてその円の上部分に∧印をする。
「これが三界山。この一帯は山脈になってるの」
そして、その上の楕円を指す。
「今居るのはこっち側。そうね、場所で言えばこの辺かな」
楕円の中心の少し下に印をする。
「地にこんな場所があるなんて知らなかった…」
黒鷹が呟く。
「かつて、鶸のお父様が治めていた場所よ。代々この島は王の親族が州侯として治めていたの」
「鶸の…」
黒鷹は顔を歪めた。
思い出したくない物が、脳裏に蘇った。
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