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RAPTORS

 からっぽだった腹に物を詰め込みながら、“隼二号だ”などと考えている黒鷹。
 無論、羅沙の事だ。
――隼よりタチ悪いよな、絶対。
 結局、一人ぼっちで夕食を静々と食べている。
 そうしていると、扉が開いた。
 茘枝と隼だった。
「華南が片付けで忙しそうだから、代わりに来てあげたよん」
「お子様が寂しがってるって、羅沙に聞いたんでな」
 口々に言われ、黒鷹は「あのヤロウ」と口の中で言う。
「ところで黒ちゃん、どっか痛む所無い?」
「相変わらず全身痛いでーす」
「そう、華南がね、薬とか包帯とか…あと着替えも用意してくれたから、後で診てあげる」
「…アバラもイッてるっぽい」
「それはガマンしなさい」
「……」
 しばらく笑えない日々が続きそうだ。
「ああ、それと」
 茘枝が手にしていたカゴを机に置く。
 中身は牛乳・チーズ・小魚…
「カルシウムだらけ…」
「アンタ意外と骨弱いからねー」
「今までの食生活が劣悪だったんですー!」
 抗議してみたが、さらりと流される。
「後で華南にお礼しなさいよ」
「当たり前じゃん」
 言いながら牛乳をむんずと掴み、ぐいと飲み干す。そして、がん!と音をたてて瓶を机に置いた。
「酒じゃねぇんだから…」
 一連の動作を見て、隼は低くこぼす。
「ところでさ」
 隼の言葉を無視して、視線は茘枝に。
「ここ、どこ?」
「…華南の家」
「ああ、そっかぁ…って違う!ここが地のどこだって訊いてんの!」
「お前ノリツッコミ寒い…」
「放っとけ」
 果たしてこれは三人漫才と言うのだろうか。
 そして、自分は部外者になったつもりで、茘枝は紙とペンを出す。
 丸――正確には楕円を上下に二つ描いた。
「何それ?」
「判んないの!?」
「判れって方が無理だ」
 分かった方には賞金モノだ。
「地の国の地図!もぅ、王子のクセして知らないの?」
「知らねーの」
 この国は地図が出回る事が少ない。殆どの国民が必要としないからだ。
 農耕で暮らす地の民は、遠出する事はまず無い。
 二つの楕円のうち、下を指して言う。
「これがアンタ達の知ってる地の国。城はこの辺よ」
 下の楕円の中心をぐるぐると印する。
 そしてその円の上部分に∧印をする。
「これが三界山。この一帯は山脈になってるの」
 そして、その上の楕円を指す。
「今居るのはこっち側。そうね、場所で言えばこの辺かな」
 楕円の中心の少し下に印をする。
「地にこんな場所があるなんて知らなかった…」
 黒鷹が呟く。
「かつて、鶸のお父様が治めていた場所よ。代々この島は王の親族が州侯として治めていたの」
「鶸の…」
 黒鷹は顔を歪めた。
 思い出したくない物が、脳裏に蘇った。


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