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RAPTORS

 周囲が事態に追い付き始めたのは、それからしばらく経ってからだった。
 その少し前から、冷戦は戦争と化していたが。
「何カッコ付けてんだよ、このボケ王子!!!」
「人前で主殴ってんじゃねぇよ暴力側近!!!」
「てめぇが虫酸走りまくる事言うからだ!!」
「人の親切をそんな風に言うのかぁ!?」
「そんな親切要らねぇよ!」
『総帥っ!!』
 お互いがお互いを指し
『こんなボケナス斬って下さい!!』
 …言われた方も戸惑う事は、言う間でもない。
「…少し頭を冷やせ」
 困惑気味にそれだけを言うのがやっとだった。
 疲れた様に、玉座へどっと座る。
「…そんな主従関係だったとは、な」
「ケンカする程、仲がいいんです」
「気色悪ィ」
 にぃーっと笑って言った黒鷹に、最早敬語を使う気になれない隼がぼやく。
「どっちが主か判らんな。――それで、選択はそれで良いのだな」
「せんたく?」
 何だっけ、そう顔を見合わして「あ゙」と気付いた時にはもう遅い。
「その方等は知らぬだろうが」
 二人の事など黙殺して光爛は続ける。
「ここに居る兵は、地に嫌悪を抱く者ばかりだ。地の者など人とも思っていない」
 危険な事になりそうなのは、流石に判った。
「――やるが良い」
 壁際の兵士を見渡して、光爛は言った。
「今、ここで!?」
 黒鷹が意外な事態に叫ぶ。
「逃げられては面白くなかろう?」
 自ら殺すのを見届けようと言う。
 どっと兵が寄る。
 四方を囲まれていた為、逃げ道が無い。
 突然の面会も、武器を全て出させたのも、こうする為だったのだ。
 数人は素手で対応したが、無理がある。
 瞬く間に囲まれ、引き倒されて動きが取れなくなった。
「クロ!」
 遠くで隼に呼ばれた気がしたが、応えられない。
 剣を使えば明らかに終わるが、それは無かった。
――なぶり殺しだ
 痛みが鈍くなっていく。それと共に危機感も薄らぐ。
――今度こそダメだな…まぁ、後は鶸がやってくれるだろうし…
 ぼんやりと考えた時、思ってもみなかった声が耳に飛び込んだ。




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