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RAPTORS

 あれから二日――隼は、長い眠りから解き放たれた。
 何故か立派な布団の中、辺りは香の芳しい香りに充ちている。
――ここの空気は悪くない。
 そう思って、首を横に向けた。
 窓際の椅子に、人が座っている。
 その人物が、隼の視線に気付いて、体を机からこちらに向けた。
「お目覚めですか?」
 微笑して、その女性は訊いた。
「ここは?」
「王宮内の、診療室です」
「王宮――?」
 あれだけ手荒い真似をしておいて、王宮に運ばれ、この待遇とは、解せない。問おうとして、隼は言葉を飲んだ。
「総帥が、貴方に会いたい、と」
「総帥?」
「この国の、最高権力者ですよ」
「王は?さっき王宮と――!?」
「先王は十年前に倒れました。総帥である光爛(こうらん)様が昏君を倒し、国を再建したのです。この国に、もう王は要らない、と。この王宮は、先王の宮をそのまま仮の住まいとして使っていらっしゃるのですよ。光爛様は自分の事より国の事を考えてらっしゃるから」
「ふーん…。出来た人間だな」
「素晴らしい方です」
 彼女の崇拝にも似た口ぶりに、隼は目を細める。
――何か、ひっかかる…
 十五年前には無かった筈の、空気の汚れ…それを作ったのはその光爛という人物ではなかろうか。
 空気の汚れ――転じて、高度文明の発達は、戦争から生まれる。
――もしや……
 縷紅は言っていなかっただろうか。
“根が地を攻める”と。
 ざわりと、嫌な予感が胸を騒がせる。
「ところで、お体は大丈夫ですか?」
 考え込んでいた隼は、その問いに一瞬、間を置いて頷いた。
「総帥にお会い出来そうですか?」
「今すぐなのか?」
「いえ――さぞかし空腹でしょう。夕食を運ばせましょう。召し上がられたら、総帥の元へご案内致します」
 確かめなければならない。
 この国の、真意を。


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