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RAPTORS

「どうなってんだよ…ったく」
 一日にして飽きた牢を、ぐるりと見渡す。…何も見えないが。
 一人ごちたところでどうにかなる物ではないが、言わずには居られない。
 黒鷹が、目覚めると同時にずかずかと入ってきた男達に押さえられ、この牢に放り込まれてから丸一日が過ぎようとしている。
 明かりすら無い根の牢は、寝て過ごすしかないのだが。
 眠りは大好物な黒鷹も、この環境は堪え難い。
 ふと、明かりが見えた。
 近付いて来る。
「やっと出す気になったか?」
 安堵混じりに訊けば、素っ気ない返答が返って来る。
「一人追加だ」
 黒鷹の顔色が変わる。
「隼か!?」
「いえ私です、王子…」
 明かりを持った男の背後で、情けない声がした。
 敢えて無視して、黒鷹は根の男の方に言った。
「お前ら隼をどこにやったんだ!?」
「知らん。それは私の管轄外だ」
 それだけ言って、男は去ろうとする。
「待てよっ!!」
 黒鷹の声は、虚しく闇の中へこだまする。
「あ、あの…王子…」
「カタブツ、何大人しく捕まってんだよお前〜」
「す、スイマセン…」
 阿鹿はどうやら向かいの牢に入れられたらしい。
「まぁいい。どうせこうなると思った」
「そ、そんな…」
「隼を見なかったか?」
「隼ですか…?いえ、全然…」
「どこにやったんだよ…畜生…」
「王子と一緒では無かったのですか?」
「いや、隼は別の所へ連れて行かれたらしい…。それよりもアイツ…」
 部屋から出された時、目に飛び込んで来たもの…
「血ィ吐いてた…」
「――!」
「かなり危ないかも知れないのに…。何もしてやれない…近くにも居られない…」
「王子…」
「何とか…ここを出られないかなぁ…?」
「私にはとても妙案は浮かびません」
「だろうなぁ」
 あまりに素直な黒鷹の物言いに、阿鹿は肩を落とした。
「まぁ、それはともかく、カタブツ?」
「はい?」
「すげぇ根本的な事訊いていい?」
「何でしょう?」
「俺達はなんで捕まってんだ?」
「……」
 闇の向こうで、阿鹿が絶句しているのが伝わってきた。
「だから、“すげぇ根本的”って言ったじゃねぇか!」
「そうでしたね…」
 阿鹿はすっかり呆れている。
「まず第一に、根は地の事を憎んでいます」
「うんうん」
「第二に、根に迷い込んだ者は裁かれ、善悪を測った上で処遇が決められるのが習わしです」
「ふうん」
「第三に、私はお上より、“黒道より入国する者は殺せ”との命を受けておりました」
「ふう……ん?」
 相槌を打とうとした黒鷹の言葉が、止まる。
「第二と第三は矛盾してないか…?」
 阿鹿は溜息混じりに答えた。
「どうやら根では、王が代わった様ですね…。私が来る以前の事の様ですが。何でも冷酷な王だとか」
「そうなのか…」
 ひやりと、冷たいものが背中をつたう。
 隼は、その冷酷さによって殺されてはないだろうか…?
 慌ててその考えを払拭するように、首を振った。
「とにかく、ここを出なきゃな」


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