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RAPTORS

 闇の中を駆ける。
 光は遠い。何も見えない。
 ただ焦る思いだけがある。
 早く――早く。
 間に合って欲しい――間に合え!!
「衝動だけでどうにかなると思っているのか?」
 どぎり、と心臓が跳ねる。
 緑葉は辺りを窺った。馬を駆ける速度を緩めぬまま。
 それでも姿が見えない事は分かっている。
 声の主は楜梛。
「またからかいに来たのですか?それとも始末しに?」
 姿の見えぬ相手に問い返す。
「別に。味方として助けてやるだけさ」
「味方?」
 思わぬ返答に警戒心を強める。
「一体、どの立場からの味方と言うのです…!?」
 本心なら解っているのだろう。それなのに。
 天の立場と言うのなら、危険だ。
 守りたい人を、危険に曝す事になる。
「心配するな。お前自身の味方だと言っている」
 半笑いの声。本心が掴めない。
「それは…」
「後ろ、尾けられてるって知ってるか?」
 思わず今来た道を振り返る。
 当然、目的の存在は見えない。
「見るな。気付かれるぞ」
 ――誰だろう。
 素朴な疑問は、少し切ない想いを残して。
「一人で天に入りたいだろう?俺の言う事を聞くと良い」
「…信じて良いのか?」
「それはお前自身が選ぶ事だな。ま、罠なんか無い。いつもの道楽さ」
「道ら…全く、気楽なお人だ」
 気を損ねて皮肉を言う。
 こちらは命懸けだと言うのに。
「それで?どうする、信じるか?」
 闇が嘲笑っている。
 お前など無力だ、と。
 何も出来やしない、野垂れ死ぬだけの存在だ、と。
 緑葉は虚空を睨みつけた。
「俺は、天に行く。あんたが道楽のつもりでも、それを、後悔させてやる」
「いい覚悟だ」
 鼻で笑う声。
「林に入れ。巻ける様、案内してやろう」
 闇が続く。
 この先の光を、今度は、自ら切り開く為に。
 “仲間”の為に。





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