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RAPTORS


 森の中の夜は暗く、長い。
 楜梛が去って何時間経っただろうか。否、何時間も過ぎてはいないかもしれない。
 このまま明ける事が無いのではないかと思えてくる、夜。
 乾いた咳。
「――隼」
 まだ、生きている。二人とも。
 闇の中に細い安心感と、恐怖を抱きながら。
 いずれ来る朝は、希望か、絶望か――
 乱れた呼吸と妙に静かな森の音を聞きながら、緑葉は待つ。
 もう二度と会えないかもしれない光を。
 目を閉じる。
 木に凭れて座る身は、激戦のお陰で酷く疲労している。
 不安で眠れる訳ではなかったが、目を開けているのが辛くなってきた。
 やがて思考も蕩け始める。
 起きているのか、眠っているのか、その狭間に陥った時。
 呼ばれた――気がした。
 懐かしい声で。
「姉貴?」
 はっと目覚めて呼び返す。
 心のどこかで期待していた姿がある筈もなく。
 空が、白んでいる。
「……」
 その事実が何だか信じられなくて、しばらく息を呑んで天を仰いだ。
 穏やかな朝。
 置かれている状況も忘れてしまうくらいに。
 草を踏む音。
 近付いてくる。
「っ――!!」
 慌てて剣を取り、立ち上がって構えた。
 音は止まった。
――守れるだろうか。
 自分だけならともかく、隼も居る。敵に見つかったらかなり苦しい戦いとなる。
 心臓が早鐘を打つ。鼓動が聞こえそうなくらいに。
「私よ」
 耳に届いたのは、待ち詫びた、声。
 木陰から現れた姿は、疑いようもない。
 茘枝だ。
「お待たせ。迎えに来たわ」
 緑葉は剣を鞘に戻して彼女に駆け寄った。
「迎えに…という事は――!!」
 茘枝はにこりと笑顔を向ける。
「勝ったの」
「…良かったぁ…!」
 心の底からの声に、笑った。
「すっかり地の人ね。隼は無事?」
「相変わらずですけど…」
「早く連れ戻してあげましょう。一番会いたい人が待ってるから」
 緑葉は頷く。
 ふと、光を感じて横を見た。
 朝日が昇る。今日も、また。




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あきゅろす。
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