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RAPTORS


 夕暮れの中、双方の布陣が着々と整っている。
 物見櫓からその様子を窺っていた縷紅は、そこから陣の後方へと向かった。
 朋蔓を見つけ、駆け寄る。
「どうした縷紅?今回の参戦は禁止だぞ?」
「分かっています。そんな無謀はしません」
 肩の傷を押さえて、縷紅は言った。
「一つ、確認がしたくて」
「確認?」
「退却路です」
 朋蔓は縷紅に視線を落とす。
 見つめ返す紅の瞳がそこにある。
「無論、もしもの時の為ですよ」
「分かっている」
 勝ちたい。だが勝てる戦ではない。
「私は二択だと考えています。行くなら、北か南」
「…そうだな」
 北――三界山方面に退却すれば、使者を出した本隊との合流が可能になる。ただし、合流した所で勝利に結び付く保証は無い。
 南――三界山から遠ざかる事で、本隊の存在に気付かれずに済む。本隊は確実に残せるが、自分達が全滅する事は免れない。
「…南に行けば、入り組んだ地形を利用して、多少の反撃も可能かと」
「お前の中では決まっているのだな」
「…ええ。本隊を巻き込みたくはありません」
「残した所で希望は薄いぞ」
「分かっています。でも、彼ら…黒鷹達なら、何かやってくれそうな気がして」
 他力本願ですかねぇ?と笑う。
 朋蔓はそんな縷紅に首を振ってやる。
「私も同じ想いだ。運が良ければ挟撃も可能になるかも知れない」
「では、南で」
「そうならない様に努力しよう」
「はい」
 視線を前に投げると、天の戦力が続々と到着している。
「――勝ちましょう。皆の為に」
 自分に対して呟いた言葉に、朋蔓も深く頷いた。





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