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RAPTORS
10

 旦毘は懸命に瞼が閉じるのを我慢していた。
 軍議は夜通し行われている。
 ちらと外に目をやれば、もう明るい。
 勘弁してくれよと思いながら、再び意識を大人達の会話へと戻す。
「…だが、攻め行った所で相手にあんな兵器があるのでは…」
「恐るるに足らん。気にせず攻め込めば良い。相手も動揺するだろう」
「ふん、お前の様な猪武者ばかりではないわ。今の士気を、どうやってそれが可能なまでに高める?」
「何!?お前は東軍を馬鹿にしているのか!?」
「私も東軍の一員。現実を述べたまで」
「お前っ…」
「まあまあ、防衛戦に切り換えたらどうだろう?」
「防衛した所で守れる兵力はもう無いわ!!城塞がある訳でもない!自ら敗けを推し進めるだけだ!!」
 …話はこの調子でずっと堂々巡りしている。
 もうどうでも良くなって、旦毘は椅子にずるずると体を持たせ掛け、両手を頭に敷いて枕代わりとする。
 寝てしまえ。
「おい旦毘!何だその態度は!?」
 当然、咎められる。
 面倒臭そうに彼は瞼を開けた。
「ぐだぐだ言い合ってても始まんねぇんだよ。大体、俺の士気がもう最悪。一旦お開きにして各自妙案を考え、纏めてから方針を決めた方がいいと思いまーす。なぁ叔父さん?このままでも不毛だろ?」
 今まで黙っていた朋蔓に話を振れば、また別の方向から声が上がる。
「お前は今を何だと思っているんだ!!一歩間違えれば我々は滅ぶのだぞ!?」
「そうだ!!真剣になれ!!命が懸かっている事が分からんのか!?」
「全く、総長の弟子がこんなでは…先が思いやられる」
「ああ。東軍は一体どこで何を間違ってしまったのか…」
「元はと言えば、お前の弟弟子の失策が原因ではないか」
「そうだ。責任も取らず詫びも無く、せめてお前が不始末を何とかするべきだろう!?」
「フン、あの坊主め、自分の不手際が露呈した途端に逃げ失せおって」
「あの赤髪をこの場に連れて来て、責任を取らせるべきだろう」
「そうだ。所詮奴も天の人間、この大事な戦に関わらせたのがそもそもの間違いだった」
「縷紅を連れて来い!!」
「そうだ!!あの赤髪を連れて来い!!」
「てめぇら黙ってりゃいい気になって!!」
 派手に椅子を倒して立ち上がり、怒鳴り返す旦毘。
 口々に罵倒していた連中は、口をつぐむ。
「アンタ達にアイツの苦悩の何が解るって言うんだよ!?俺だって掬ってやりきれねぇのに!!今まで縷紅がこの軍を支えてきた!!だから黒鷹は全権を託したんだろうが!?種族なんざ関係無い!!そんな世界を作る為の戦だろ!?それを、全部アイツのせいにしやがって、自分達は高見の見物かぁ!?そんな腑抜けが東軍に居たとはな!!先が思いやられるのはこっちだ!!」
 一息にまくし立て、キッと朋蔓を見る。
「叔父さん!!黙ってねぇで何か言えよ!!俺は間違ってるか!?そりゃ頭は良かねぇけど、間違った事言ってるか!?」
「…彼らは正しい、旦毘」
 朋蔓の一言に、旦毘は椅子を蹴った。
 出口に向かう背に、いい気になるからだと言わんばかりの嘲笑が向けられる。
 無視して天幕を出ようとした。
「…だが、事実を言っているだけだ。何の解決にもならん」
「叔父さん?」
 旦毘が歩みを止め、振り返る。
「縷紅の失策の責任は、兄弟子である旦毘にもある。そして私にもだ。だからこそ今後の全権は私が握る。この苦境を立て直す為に」
 朋蔓がその場に居る全員に告げた。
「旦毘、席に戻れ。お前は責任を取る為に、ここに居なければならん」
「…言われなくともな」
 笑みさえ浮かべて旦毘は言った。
「話を戻そう――今からどうするべきか、だ」





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