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RAPTORS


「駄目だ。完全にヘコんじまってるわ」
 朋蔓の天幕に入りながら、旦毘はそう報告した。
「全権を叔父さんに委ねたいってよ。…まぁアレじゃあ、これ以上は無理だろうな。俺にさえそう見えたよ」
「無理も無いな…」
 朋蔓は短くそう応じて、報告書に目を落とす。
 今日失った人数が、そこに記してある。
「こんな痛手は初めてだろう。天に居た時も含めてな」
「ああ。俺達も油断していたが…」
 旦毘は溜息を混ぜて続ける。
「アイツ一人に背負わせる気は無かったのにな…」
「真面目な子だ。手を貸そうとしても一人で背負ってしまう。我々には見守る事しか出来ん。…昔からそうだ」
「解ってるよ。解ってるけど、だからこそ手を貸してやりたいのに…」
「お前は十分助けになっている。あとはあの子の性分だ。自分で乗り越えるしかない」
「あーあ…」
 旦毘はさも情けなさそうな顔をする。
「俺の楽観加減を分けてやりてぇなぁ…」
「自分で分かってるなら世話無いな」
「同じ屋根の下で育ったのに、なんでこんなに違うかなぁ…」
「人間の性格は環境だけで決まらないという事だな。いい見本だ」
 じ、と旦毘は朋蔓を見る。
「…俺って実は董凱の子供とかじゃねぇ?」
「…は?」
「いやぁ、叔父さんには似ねぇし、どっちかって言うと董凱に似てる様な…」
「それ自分で言って悲しくはないか?」
 はたと、旦毘は口をつぐみ。
「確かに…ってオイ!アンタがそんな事言っていいのか!?」
「私にしか言えんよ」
 しれっと朋蔓は応える。
「…師匠も愛されたモンだなぁオイ…」
 苦々しく旦毘は呟く。
「心配するな。お前は正真正銘、兄の子だ。私の甥に間違いない」
「何だかなぁ…」
「まぁ、私にもお前の性格が何故そうなったのか、疑問だがな」
「…なんか俺が落ちこぼれみたいに」
「そんな事は言ってない。いい子に育ってくれて私も天国の兄に顔向けが出来るというものだ」
 何だか言いくるめられた気がする旦毘。
「…親父はさ」
 見た事すらない肉親。
「叔父さんに似てた訳?」
「そうだな。何においても秀でた人だったが」
「…やっぱり俺董凱の子だろぉ!?有り得ねぇもん!!白鳥からアヒルだぁ!」
「何、アヒルも必要だ」
「あ。認めた」
「話を戻せ。縷紅の事だ」
 逃げられた。
 どーせ俺なんかどーでもいいんだろ…と思わなくもない旦毘。
「しばらくそっとしといてやらなきゃいけないんじゃねぇ?それで回復するかはともかく。今はこの戦をどう耐えるかが肝要だろ」
「そうだ。とりあえず、肩の傷が癒えるまで様子を見てやろう」
「次男坊は愛されてんなぁ〜」
「頼むぞ、長男。今からはお前がしっかりしてくれないとな」
「へいへい。黒鷹は三男かな長女かな」
「軍議を開く。幹部を呼んでこい」
「…また逃げられた」
 苦笑いしながら、旦毘は天幕から出た。






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あきゅろす。
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