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RAPTORS

「俺の名前を知ってるとは、何者だテメェ!?」
 鶸が叫んだのは、意外な言葉だった。
…否、鶸らしいと言えばそうなのだが…。
「忘れたのかボケ野郎!!」
 無論、言われた方は甘受する筈は無い。
「その口の悪さまで似てるとは、ますます何者だ!?」
「似てるも何も、誰に似てるって言うんだよ!?」
「故黒鷹親王様々だ!知らねぇのか!?」
「本人だよボケェ!!」
「ひっ!?」
 引き攣った声を出し、接近戦から後ろに飛びのいた鶸の顔は、恐怖と驚きに青くなっている。
「あ…あいつは死んだハズだ…」
「いや、死んでねぇだろ」
「いや、お前は死んでるんだ」
「は?」
「かわいそうになぁ。不本意な死に方で死ぬに死ねてねぇんだなぁ」
「いや、ちょっと…」
「俺が成仏させてやる!!」
「はあぁぁぁ!?」
 ダッシュして鶸は、黒鷹に刀を振り下ろした。
 動きなら人一倍は速い黒鷹だからこそ、事無きを得たが。
「目ェ醒ませ馬鹿ヤロー!!」
「たのむ〜!成仏してくれ〜!そして俺を呪うな〜!」
「呪う価値も無ぇわ!!よく見ろ足あるだろ!」
「最近の幽霊は進化してるからなぁ〜(?)」
「コント長ぇんだよお前ら!!」
 鈍い音と共にようやく場は納まった。


 鞘付きの刀で殴られてうずくまり、静かに悶える二人を尻目に隼が言った。
「で、何なんだ?コレは」
 自分達を囲むように立っている、武装した連中。今は鶸と黒鷹の騒ぎで動きを止めている。
 よく見れば、まだ小さな子供も混じっている。
「盗賊だ。俺様がリーダー」
「威張れねぇよ、そこ」
 立ち上がりながら、多少胸を張って答えた鶸に、黒鷹の冷めたツッコミ。
「俺ら悪くねぇよ!天の奴ら専門だから」
「俺が天の人間に見えたのか?フシ穴目!」
 見兼ねて茘枝が口をはさむ。
「天の人間だからどうこうって問題でもないと思うんだけど…」
 茘枝の言葉に鶸と隼が目を丸くする。
 それを見て、代わりに黒鷹が答える。
「いくら国を滅ぼした奴らでも、その国の全員が悪者じゃねぇだろ。縷紅だってそうだし」
 隼が不満そうに何か言おうとしたが、その横で目の色を変えるヤツがいた。
「あ、カモ発見」
「話聞いとけ」
 鶸への説教は馬の耳並、またはそれ以下だった。
「あぁ、そうだぁ鶸?」
「なに…」
 黒鷹のグーパンチが、気付いた時には、数メートル先に鶸をぶっ飛ばしていた。
 何が起こったのか分からず、固まる場。
「…本日のメインイベント終了」
 両手をはたきながら、黒鷹が言い放つ。
「なんなんだよ!?何が起こったんだ一体!?」
 鶸が立ちながら叫ぶ。
「何が起こったって、当事者お前だから」
 冷めきった隼の一言。
「こんな所で何やってんだっていう、五年分の怒り」
 黒鷹が笑顔でそう説明した。
「俺だって必死だったんだ。この五年、結構必死で生きてた」
「へぇ?」
「コイツら全員、戦火を逃れた子供だ。盗みでもしなきゃ、生きていけない」
「…そうか」
 珍しく真面目な顔の鶸に、黒鷹は相槌を打って、続けた。
「五年間お疲れ様っていう激励の一発だ。気にすんな」
「都合いいなぁオイ…」
「ま、アレだ、昔はよく無意味に殴り合ってただろ?お前ら」
 隼の言葉に鶸の顔はますます渋る。
「そりゃガキの頃の話だろ…。今のはどう受けても本気だった」
 殴られた箇所をさすりながら彼は言った。
「そう変わんねぇよ」
「変わる」
「あの頃は良かった…」
「ジジイかテメェ」
 黒鷹のしみじみな言葉に、鶸と隼のツッコミがかぶる。
「ホンッとに、何も変わらない…って言うか、成長しないのね、アンタ達は」
 三人に対しての、茘枝の鋭いツッコミ。
 今ここに、少年達は再び集う。


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あきゅろす。
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