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RAPTORS
10
 縷紅は休む間も無く剣を振るい続けた。
 中にはかつての同僚や部下も居たかもしれない。
 それでも構う事無く剣を振るった。
 もう何人目か分からない相手と剣を交えた時。
 彼ははっと息を呑んだ。
「貴方は…!」
「再びお会いできて光栄です、将軍」
「何故こんな所に…!?貴方はまだ…」
「見習いですよ、まだね。今回は緇宗様の計らいで、ここに」
「そんな…何の為に…!?」
「惚けるのですか?」
 厳しい口調で剣を交えている相手――緑葉は言った。
 ぎっと、縷紅を睨む。
「緑葉…」
 多少の殺気では動じない縷紅も、言うべき言葉を失った。
「将軍に…俺の無念さを知って頂きたくてね…」
「おやめなさい。私は貴方だからと言って手加減する事は出来ない」
「手加減!?」
 ぐっと、剣に込められる力が強くなる。
「どうやら将軍は何もお分かりでは無いようだ…!」
 ぎん!と音をたてて二本の剣が離れた。
「俺は緇宗様に命じられて…否、許可を頂いて、将軍――貴方を殺しに来たのです」
「あの人が…」
 そんな事だろうとは思っていた。
 あの人――緇宗が、そう簡単に自分の思い通りには動いてはくれないだろう、と。
 だが、こんな仕打ちがあるとは。
 それを、あの人は座興のような気持ちで見ているのだろう。
「緑葉――」
 決意して、彼に告げる。
「貴方が私を殺したいと思うのなら、一度撤退し、今晩人目につかぬ所で闘いましょう。一対一で」
「そんな事を言って逃げる気ですか?」
「逃げません。逃げたくとも逃げられないでしょう。貴方はどこまでも追ってくるだろうから。…でもこれだけは言っておきます。出来る事なら、貴方と敵として向かい合いたくはない」
「何を――甘い事を」
「ええ」
 縷紅は痛々しく微笑した。
「分かっています。彼女からも言われたから」
 緑葉はしばらく縷紅を睨みつけていたが、やがて戦いの中に姿を消した。
 日が暮れる頃、押され気味だった天の軍は、一旦撤退した。




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あきゅろす。
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