[携帯モード] [URL送信]

RAPTORS

 翌朝。
 一行は司祭に礼を言い、寺院を後にした。
 目指すは西海岸。
 その辺りにお目当ての人物が居るらしい。
「今日はどこに泊まるの?」
「…さっき出たばかりじゃない」
 黒鷹が目を輝かして訊いた言葉を、さらっと茘枝がかわす。
 今日は丸一日歩く予定。
「だって、泊まる所がスイーツかどうかでやる気も違うじゃん」
「安心しなさい。好きなだけ鶸を殴っていいルームサービスがあるから」
「予約してあるのか?」
 隼も話に入ってきた。
「ホテルの?」
「ばぁか。鶸の、だ」
「そう言えば、ホントに今日会えるの?」
「…いい賭けになるわね」
 つまり、確率は低い。
「会えねぇんだろうな、どうせ」
「俺もそう思う」
 隼が吐き捨てるように言った台詞に、黒鷹も同調した。
「ま、私の威厳に賭けて会わせてあげましょ」
 茘枝は自信満々に言ったが。
「元から無ぇモン賭けてんじゃねぇよ」
 隼にあしらわれた。
「あら失礼ね。ちゃんと根拠があって言ってるのに」
「根拠?」
 茘枝は数歩後ろを歩く縷紅をチラっと見る。
「囮捜査…なんてね?」
「はぁ?」
「ほら、もうちょっとで海が見えるよ」
 遠く、青い水平線が覗いた。


 それが姿を現したのは、沿岸を歩き出して数時間後の事だった。
 四人とも、感づいてはいたのだ。
――尾けられている、と。
 その気配が、消えた。
 誰からともなく、足を止める。
 空気が凍りついた。
 そして。
 キィィンと、金属のぶつかり合う音が、海岸にこだました。
 飛び道具を、黒鷹の抜いた刀が薙ぎ払った音だ。
「来やがった」
 一連の早業の後、黒鷹は不敵な笑みを浮かべて言った。
 そして間を置く事無く、次の金属音が響いた。
 縷紅の細い刀身に、同じ様な剣が重なっている。
「私目当てか?」
 クロスされた剣の向こうの顔に縷紅は問い掛けた。
 答える気が無かったのか、絶命するのが先か、返答を聞く事は無かった。
 茘枝が投げた苦無が、頭を直撃していた。
 その後ろで隼が刀を交えていた。
 黒鷹を目掛けた襲撃だったが、黒鷹に剣が届く前に、隼が止めていたのだ。
「甘いな」
 隼の挑発に、手に感じる力が強くなった時――
 ドス、と低い音がして、片方の剣はずるずると落ちた。
 黒鷹が横腹に刺した刀を引き抜く。
「天の奴らだよな」
 血糊を払いながら、黒鷹が言った。
「…まだ、居る」
 隼が鋭い目で辺りを見回して、低く言った。
「囲まれている。大勢だ」
「何――!?」
 人を尾行するのに大勢なのか、それとも援軍を呼ばれたのか。
 考える暇は無かった。
 どっと大軍が押しかけ、四人は戦いに散った。
 黒鷹は最初に刀を交えた相手の顔を見て、目を見開いた。
 見覚えのある顔、そして刺青…。
 その相手も同じ――否、それ以上の驚きを顔に表している。
「鶸っ!?」
 黒鷹は叫んでいた。




[*前へ][次へ#]

3/6ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!