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月の蘇る
  10
   暗闇の中、朔夜は動き出した。
   階段を昇り、船室を出ようとすると、そこに見張りらしい二人の男が立っていた。
   人の存在など認めていなかったのだから、驚いた顔で迎えられる。
「お前!いつの間に…!何をしていた!?」
   怒鳴られて、朔夜は階段を昇りきり甲板に出ながら答えた。
「ちょっと居眠りしてたらもう舟が出てたんだ。知らなかった」
   すっとぼけてみる。
   当然許される筈は無く。
「これだから農民は使い物にならないんだ!来い!挽芯(バンシン)様に報告して鞭打ちにしてくれる!」
「えーっ、勘弁してくれよお。ちょっと寝てただけなのに」
「煩い!」
   二人に両腕を掴まれて後ろ向きに引き摺られてゆく。
   嫌がる振りをしながら朔夜は肚の中で嗤う。
   そこまで自分達の上官に引導を渡すのを焦らなくても良いのにな、と。
「挽芯様!」
   舟の舳先近くにその男は居た。
「荷駄室で居眠りしていた奴をひっ捕らえました!鞭打ちに処して宜しいですか!?それとも斬首でしょうか!?」
   おいおい、血気に逸り過ぎだろうと思いつつ、あるべき面を探して首を巡らせて。
   その顔を見て、凍り付いた。
   教えて貰った男ではない。否、それどころか。
   首を動かした事で髪を隠す為に被っていた頭巾がずり落ちた。
   長い銀髪がはらりと垂れる。
「こいつ!」
   兵が目を見開いてその髪を指した。
「こいつ…銀髪の…!」
「悪魔か!?」
   その瞬間、朔夜は見えぬ刃で自分を捕らえていた二人を斬った。
   同時に大きく跳びのき、囲む兵達と距離を取る。
   挽芯と呼ばれた男とも。
「あれは嘘だったんだな?あんたが偉い人だとは思わなかったよ」
   その男に朔夜は言った。
「俺は偉かないさ。嘘は吐いてない。ただ、この舟の中では一番上ってだけだ」
   下級兵士に混じって荷駄を運ぶ男はそう答えた。
   朔夜は動き辛い大きな軍服を脱ぎ捨て、その下に装着していた双剣を抜いた。
「仕方ないね。本当に偉い奴を虱潰しに探すしか」
   宣言して、敵の中へ突っ込んで行く。
   兵は多いが、ざっと二、三十人程だろうか。予想していた規模ではない。
   恐らくこの舟は荷を運ぶ為のものだった。そんな舟に偉い奴が乗る筈は無い。
   早く気付いていればと悔いはするが、終わった事よりも目の前の敵だ。
「捕らえろ!生死は問わん!」
   呼び掛ける声と共に兵が増えてゆく。
   刃を掻い潜り、斬りつけながら視線を飛ばすと、別の舟が横に付けられて、そこから兵が雪崩れ込んで来ている。
   これを待っていた。
   頭を直撃しようかという斬撃を身を屈めて躱し、その低い姿勢のまま囲む兵達の足を斬りつけ生じた隙間から包囲の外へと走った。
   走る方向に居る敵の脚を悉く斬りつける。命までは取らない。出来る限り、龍晶の願いを叶えたかった。
   舟の縁に辿り付き、櫂を持って右往左往している農民を一発殴って櫂を奪い取った。そしてまた走る。
   迫る敵を櫂で殴り付け、勢いは殺さずに横の舟目掛けて踏み切り、櫂の先を床に叩きつけて跳んだ。
   水上を飛び越え、舟の甲板に着地しながらそこに居る敵を斬り、二艘の間に渡してある戸板に目を付ける。これを伝って兵が行き来しているのだ。
   標的が移動した事を受けて、その板に兵が群がっている。
   にやりと笑って、朔夜はその板を見えぬ刃で切った。
   人諸共に河へ落ちてゆく。それを見届ける事もせず次の敵へ向かってゆく。
   目指すのは挽芯に教えられた髭面の男ただ一人だ。
   ざっと見渡した所、大きな舟はこの辺りに固まっている。あとは五人乗れば隙間の無い程の小舟だ。
   その大きな舟がこちらへ寄りだした。同じように兵を送り込んで自分を捕らえる為に。
   朔夜にとっては好都合だが、一艘だけ離れてゆく舟を目の端で捉えた。
   舌打ちする。的はあれに乗っている。
   上に立つ者が好き好んで危険に寄ってくる筈が無いではないか。
   押し寄せる敵を、もう容赦する余裕も無く斬り続けながら移動を続ける。
   あの舟に出来るだけ近い方向へ。
   既に跳んで乗り移れるような距離ではない。ならば方法は一つ。
   追ってくる敵を振り切り、走って、河へと飛び込んだ。
   冬の水の冷たさが刺さる。
   これは長時間潜っていれば確実に死に近付くだろうと思いながら。
   握っていた刀を鞘に収め、空になった両手を掻いて浮かび上がる。
   周囲に矢が射込まれる。潜っている間は問題無いが、浮かべば格好の的だろう。
   なるべく浮き上がらないように潜水しながら、目指す舟へと進む。これは得意分野だ。
   子供の頃から水中が遊び場だった。長く潜るのには慣れている。
   だが、水の冷たさが身体を縮こませる。呼吸もいつも程持たない。
   その上、肺の傷がある。今も猛烈に痛いが、傷の所為で息が吸えていなかったようだ。
   仕方なく浮上して息を吸った。
   飛んで来た矢が頬を掠める。急いで再び潜る。
   水面を蹴った足に痛みが走った。矢が当たったようだ。自分の血が河の水に混じって目前に拡がる。
   幸い貫通まではしていなかった。水中で鏃を引き抜き、再び泳ぐ。
   頭上に影が現れた。小舟の影だ。
   右手だけ刀を持って浮上した。
「ここだ!刺せ!刺せ!」
   船上の兵達が刀を水中へ突き立てる。それを刀で軌道を逸らしたが、避けきれず左肩を刺された。
   やむを得ない。頭を出して大きく息を吸うと同時に、襲ってきた刃を兵の腕ごと見えぬ刃で斬り飛ばした。
   恐怖に慄く他の兵を尻目に舟へと手をかけ身体を引き上げる。乗り込もうとする身体目掛けて斬りかかってきたが、その兵は次々と喉笛を斬られ水中に落ちた。
   残った兵は動くに動けず刀を抜いたまま固まっている。
   手を下す間も無いと判断して朔夜は目的へと進む事にした。
   近くにある小舟へと跳躍する。乗っていた兵達はわっ、と驚いた声を出して仰け反る。
   襲って来ないのを良い事に、すぐに踏み切ってまた次の小舟へと跳んだ。
   そしてまた、次へ。
   この小舟に乗らされているのも多くが農兵なのだろう。戦う意思は無いようだ。
   大きな舟から殺せ、殺せと怒鳴り声が降ってくる。だがその声に従う者は少なかった。刀を振り下ろして来る者も居たが、握りが甘いのですぐに弾き飛ばせた。それだけで戦意は挫ける。
   小舟を飛び石代わりにして近付いた目的の船。さてここからどうやって船上へと上がるかと考える。
   と、その船から無数の矢が降ってきた。味方の兵も居るのにお構い無しだ。
   咄嗟に水中へ飛び込む。戦意の無い農兵を巻き添えにしたくは無い。
   少し泳げば、巨大な影が目前に迫ってきた。
   船底に掴まる。首を巡らし、錨を見つけた。
   その錨の縄を登る。水中から水面へ、そして船上を目指して。
「縄を落とせ!」
   こちらの動きに気が付いた兵が叫ぶ。よじ昇る縄が落とされる。
   再び水中に戻される前に、壁を蹴って跳んだ。櫂の出る穴に掴まり、中の兵を蹴り倒しながら船中へと転がり落ちる。
   そこに振り下ろされた刀を転がりながら避けて、左手を軸に起き上がりながら斬り付けた。
   斬られた左肩から血がだらだらと流れる。矢の刺さった右足は力が入らず軸に出来ない。
   無駄な戦いは止した方が良いだろう。敵を警戒しながらじりじりと後退し、ぱっと身を躱して階段目掛けて走った。
   向かってくる敵と追ってくる敵に挟まれながら、見えぬ刃が双方を倒してゆく。だが、格段に威力が落ちているのが分かる。
   とにかく命までは取らずとも、負傷さえさせれば良いと思い直して出鱈目に刃を振るった。
   軍として困るのは死者ではなく負傷者だ。負傷者が多ければ進軍は鈍る。
   甲板に出た。流石にここまで来ると出鱈目では通じない兵が揃っている。
   双剣を握ってはいるが、既に左はほぼ使い物にならなかった。相手の刀を弾くのが精一杯で、右手中心の攻撃となる。
   崩れそうになる足を叱りながら、向かってくる精鋭達を斬って、斬って。
   急に視界が暗転した。
   しまったと思った。限界だ。
   同時に腹も背も斬られたが、即死の傷とはならなかった。無論、時間の問題だ。
「捕らえろ!」
   多くの手が身体を押さえつける。
   そのまま縄で縛られた。
   絶え絶えの息を繰り返しながら、なされるがままに転がされている。
「完銅(カンドウ)様!どう致しますか!?」
   問う声と共に近寄ってきた足音。
   重たい瞼を開けて、その男を目に入れる。
   あの、髭面の大男。
   その足が、目と鼻の先で止まった。
「よくやった。手柄だ。生かしたまま陛下の元へ送るぞ」
「しかし、危険では…!?」
「この状態で危険も何もあるか。しかもこんな子供のような者、なぜ今まで捕らえられなかったのか理解に苦しむ」
   はらりと。
   縛られた縄が斬り刻まれて落ちていた。
   銀色の疾風が、男の首を下から切断し、そのまま舞い上がった。
   誰もが何が起こったか理解出来ず、呆気に取られて。
「あ…に、逃がすな!!」
   事態に頭が追い付いた兵達が怒鳴り声を上げた時には、朔夜は船縁に立って、無感情に彼等を見返し。
   男の首を持ったまま、落ちていった。
   暗い水の中へ。
   沈んでゆく。
   何も無い世界へ。
   誰も居ない、何の言葉も無い、安寧の場所へ。
   銀色の泡が己を撫でて水面に引き寄せられる。
   銀の髪が己を包む。
   このまま、傷の痛みも忘れて眠る。
   永遠の、安からな眠り。
   もう、何も望まないーー
   急に絶望の安らぎは引き裂かれた。
   身体が求めていた酸素を思い切り吸い込む。そして噎せて。
   咳をしながら己を掴み上げた男を見上げた。
「言ったろ。生きて戻れって」
   挽芯が、小舟に乗り換えて朔夜を探しに来ていた。
   呆然とその男を見上げる。
   何かを考える力はもう無かった。
   ただ、このままこの男に引き上げられる訳にはいかないだろうと思った。
「ごめん」
   言葉になったかどうか。
「いっ…!」
   朔夜を掴んでいた手の筋が切れていた。
   流れた血と共に、朔夜は水中に落ちていった。
「おい!」
   挽芯が水中に向けて叫ぶ。
「死んでどうする!?戻って来い!!」
   水の中でその声を聞きながら。
   ごめん、ともう一度胸の中で繰り返す。
   敵では無かった。
   信じても良い相手だったかも知れない。
   それでも、運命は延ばされた手を取る事を許しはしないだろう。
   彼のような善き人にとって、俺は。
   悪でしかない。
   緩やかな大河の流れでも、力の抜けた小さな体を運ぶには十分だった。
   水に弄ばれながら、下流へと流される。
   もう感覚は無かった。苦しくも無かった。
   懐かしい声が耳朶に蘇る。
『朔夜、溺れちゃうよ。危ないよ』
   大丈夫。華耶はそこで見てて。
『やめてってば。お願いだからこっちで遊ぼうよ』
   うん、もう少し潜ったらね。
『なんか…川の水が変だよ。朔夜、こっち戻ってきて!』
   茶色い水が。
   急にどうっと押し寄せてきて。
   為す術も無く流されてゆく。泳ぐ事も、息を吸う事も出来ないまま。
   酷く苦しい。でも、それ以上に。
   華耶は大丈夫だろうかと、それだけが心配だった。
   俺は死んでも、華耶だけは。
   初めて、そして恐らくこれが最後だろう。
   神様に祈った。華耶だけは、助けて下さい、と。

   軍の目の届かない下流の漁村まで馬を飛ばし、家々の戸を叩く。
   子供が川に流されたと言えば真夜中にも関わらず多くの人が戸を開けてくれた。
   網は快く貸して貰えた。だが、問題があった。
「舟が無い?」
   集まってくれた村人に龍晶が聞き返す。
「軍の奴らが全部持って行っちまった。俺らは漁も出来ねえ」
   舟が無ければ網を掛ける事は出来ない。
「参ったな…。何か方法は無いか…」
   頭を抱える燕雷の横を擦り抜けて、龍晶は川辺に立ち滔々と流れる水面を見渡した。
   対岸は闇に呑まれている。それどころか、河の中程までも見えはしない。
   今この時にでも流れてくるのではないか、そう思うと焦りが募る。
「もう少し下流へ行くか。そうしたら舟もあるかも知れない」
「いや…時間が無い」
   燕雷の提案を却下する。
   実際は時間の有無など分からない。だが、早いに越した事は無い。
「泳ぐか」
   冗談とは思えない顔付きで龍晶が言った。
   燕雷には冗談としか聞こえなかったのだが。
「は?お前、泳げるのか?」
「さてな。やった事が無い」
「おいおい。出来る事と出来ない事を見極めて発言しろって言ってたのはどの口だ」
「やってみた事が無いってだけだ。泳げるかも知れないだろ」
「あのな、やってみた事が無いって言うのは出来ないと同義語だ。泳ぎなんてやってみたら出来ましたなんてもんじゃない。況してやこんな冷たい水で溺れてみろ。お前まで死ぬ事になるぞ」
   陸地が殆どのこの国では、泳ぐという行為が習慣に無いのでその何たるかを知らないのは無理が無いとは思うが。
「じゃあどうするんだ」
   苛立ち混じりに龍晶は返した。
   それが思い付かないから頭を悩ましている。
「俺たちが泳いで網を張ろうか?」
   背後から声がした。
   村の若者達が名乗り出てくれたのだ。
「出来るのか!?」
「漁師を舐めてもらっちゃ困る。このくらい出来なくちゃ食っていけねえ」
   言いながらてきぱきと準備してゆく。
「…頼む」
   龍晶の言葉に笑いながら頷いて、若者達は網を引っ張りながらざぶざぶと冷たい河へと入っていった。
   広い河に網が貼られてゆく。
   若者達は声を掛け合い、気合いを付けながら対岸まで泳ぎきり、目的を達成した。
   岸では火が焚かれ、戻ってきた者を温める準備がなされる。
   村人達の協力をただ見ている他の無い龍晶は、後ろめたさに胸が締め付けられた。
   こんなに誠実な人たちを騙していても良いのかと。
「あんたらもこっち来い。寒いだろ」
   村人に呼ばれ、火の側に寄って。
「あんた達は流された子の家族か?」
   村長らしい老人に問われた。
   燕雷が首を振って答える。
「いや、同じ村の者だ。家族は村で待っているからな、早く手元に戻してやりたいんだ」
「ああ、遺体が戻るだけでも慰みになるもんだ」
   龍晶はその会話を膝を抱えて火を見詰めながら聞いていたが、我慢ならず呟いた。
「遺体じゃないからここまで必死になるんだ」
「龍晶」
   小声で燕雷が窘める。そして村人達の方へ向き直って弁明した。
「親友が流されたんだ。受け入れられない事もあるだろう。大目に見てやってくれ」
   膝を抱える腕を固く結んで、龍晶は黙り込む。
   込み入った真実は隠した方が良いのだろう。
   分かってはいるが。
「あんた達、上流の村の者か?少し先で軍が陣取っているが、それよりも上流なのか?」
   別の男が訊いてきた。
   燕雷は少し考え、答えた。
「軍は子供が溺れてても助けちゃくれないだろ」
「まぁ、確かに」
   網を張り終えた若者達が戻って来た。
   暖を取りに火を囲む。
   入れ違いに龍晶は立ち上がって、再び河辺に立った。
   黄浜が付いて来て、水面が見えるよう松明を掲げてくれた。
「…俺は本当に何も出来ない木偶の坊だな」
   つい黄浜に愚痴る。
   人を騙して危険な仕事をさせ、見ている事しか出来ない。
「そうではありませんよ、龍晶様。今しがた村の者に聞いたのですが」
   黄浜は前置いて話して聞かせた。
「この村では漁が出来る代わりに米が出来ぬのだそうです。川が毎年のように氾濫して田を作るどころではないのだとか。その代わり、対岸の灌領の村は国境線の為に漁をする事を禁じられている。でも米は取れる。だから、米と魚を交換するのだそうです。それで何十年も互いに上手くやってきたのだと」
「…へえ」
   市井の民の暮らしに無関心な訳ではないが、それが自分にどう関係してくるのだろうと、その時は分からなかった。
「それが、この度の戦で交易を禁じられて、その些細だが生活を支える重要な交流も出来なくなった。これからどう暮らして行けば良いのかと、この村の者は皆悩んでおるようです」
   黄浜が言わんとしている事がやっと分かってきて、龍晶は少し振り向いた。
   力を込めて、黄浜は言った。
「戦を止めて下さい、龍晶様。今は無理でも、いつか、必ず。あなた様は決して無力では無いのですから」
   龍晶は水面に視線を戻し、その流れを暫し見詰めて、呟いた。
「戦を止めよという母の言葉が、俺を介して、いつか本当の力となれば良いのだが」
   目の前で戦は始まろうとしている。
   まだまだ遠い願い。
   この遠い遠い道程の果てに、理想とする国が有るとは考えられない。
   現実は、血ばかり流れる。
   この河の流れに、血潮の混じらない未来が来るのだろうか。
「あ…あれ!」
   黄浜が指差した。
   その方向へ龍晶も目を凝らす。
   銀色の光が確かに流れてくる。
「朔…朔夜!」
   叫んで、河へと走り出す。
「お待ち下さい!…誰か!!」
   黄浜が村人達の方へと叫び助けを求めた。
   その間に、龍晶は胸の上まで水に浸かって朔夜の流れてくる方へと近寄って行っていた。
   冷たさなど感じなかった。
   ただ、必死だった。
   あいつの感じた寒さや恐怖、痛みに比べたらーー
   そう、あいつだって死ぬ事は怖い筈だ。
「龍晶!待て!」
   後ろから燕雷に羽交い締めにされてやっと止まった。
   これ以上進んでいれば深みに嵌っていただろう。
   その先で、泳ぎの達者な者達が網にかかった身体を取り上げていた。
「もう大丈夫だ」
   耳元で燕雷が言った。
   銀の髪を揺蕩わせた、青い顔の朔夜が、人々の手で岸へと引き上げられた。


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