違った物語も、悪くない。
風邪っぴき(紫黒)
「あったまいてー…」
布団から顔だけ出して手の甲でおでこを冷やす。
「やっぱりー雨の中お菓子買いに行ったのは間違えだったかもー」
ふぅ、と溜め息をついて目を閉じる。
雨もやんで、清々しいくらいの日曜日。
治りかけの風邪の頃。

風邪引いたよ

普段生きてることって意識しない。だけど怪我とか病気したときにふと思い出す。
あー、生きてるなぁって。そんで怪我したときとか一番に思うのはこんなに辛いなら。
「死んじゃった方が楽かもー」
一人きりの部屋で天井を見上げる。
「お菓子もないしーもー最悪ー」
ごろん、と寝返りを打って目を閉じる。
もう寝てしまおう。きっと午後にはマシになる。
そう願って目を閉じた。

「んー…」
目を覚ます。時計に目をやる。
まだ数時間しかたってないじゃん。
天井を見上げる。
「あー、でもーさっきよりはマシになったかも」
ぐるん、とうつぶせになって自分の腕を枕にして一息つく。
黒ちん何してるかなー、やることがないと頭ばかりが働く。
新作のお菓子出てるかな、黒ちん相変わらずわたあめなのかな、明日学校で黒ちんとお昼食べれるかな。
元気になったら黒ちんに会いに行こっかな。
お菓子いっぱい買って、いつもの定位置で。
「アララー?」
さっきまで死んじゃった方が楽とか思っていた自分はどこにいっちゃったのかしらー。
「んー、まだ生きてた方が楽しそうだしー」
明日からの楽しみがどんどん増えてく。なんだか心なしか病気も治った気がする。
「♪」
布団の中でごろごろ転がりながら、鼻歌を歌う。
病み上がりの日曜日。
ふと、静かなひとりきりの部屋の中にチャイムが響いた。
         -fin-
「あー黒ちんだー!」
「意外と元気そうですね、よかったです」
スーパーの袋を両手にぶら下げて愛しの影が訪ねてきた。
「そんなんでもなかったんだよー?今朝までひどかったんだからー」
頬を膨らませて反論した後黒ちんに伸し掛るように抱きつく。
「1人でよく頑張りましたね。ゆで卵作ってあげましょうか」
「えーおかゆとかじゃないのー?」
首をかしげながら聞いてみると黒ちんが少し不服そうに「そういうのはボクに求めないでください」という。
「じゃあお菓子はー?」
「新しいお菓子出てたので買ってきました」
「黒ちん大好きー」
「重いです。伸し掛らないでください」
ずるずると引きずるように黒ちんが俺を乗せたまま頑張って歩く。倒れちゃいそうでこわい。
「黒ちんー。好きー」
「ありがとうございます」
「黒ちんはー?」
「………ボクも好きですよ」
「んー」

名前が出てないからわかりにくいけど風邪治りかけな紫原くんとお見舞いにやってくる黒ちん。
紫原くんが風邪ひいたら可愛いよねってことです。


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