違った物語も、悪くない。
兄貴(神楽VS神威
馬鹿兄貴が、傘を振りかぶってニヤリと笑う。

兄妹喧嘩

事の発端なんて覚えちゃいない。
ただ戦えればそれでいい、そんな理由だったはずだ。
きっと、きっとそうだったはずだ。

「神威!?なんでここに…!!」
手をひらり、と振って万事屋の手摺りに座った神威はにこり、と表情を変えないまま言葉を発する。
一方の神楽は驚きを隠せないようで目を見開いたまま、唾を呑む。
「あの侍にちょっと会いたくなってね」
「銀ちゃんなら今仕事中アル。とっととハゲのトコにでも帰るアル」
明らかに気分を害したように神楽が神威を睨みつける。
以前神威が明らかに銀時に宣戦布告をしたことを覚えていた神楽は少しでも銀時と近づけてはいけない、と思う。
「まぁまぁ、そんな怒ること?確かにあの侍を殺しに行くって言ったけど、今日はそんなつもりじゃないよ」
手摺りからとん、と飛び降りて傘を差したまま笑う。
「出来の悪い妹だけどよろしく、って挨拶しに来ただけだよ」
その瞬間、神楽が足を突き出し叫ぶ。
「今更妹だとか言うんじゃないアル!!家族を捨てたクソ兄貴なんか私にはいらないネ!!!」
「おっと、相変わらず凶暴だなぁ。その血の気の多さ、あの侍に抑えてもらえば?」
先ほどと少しも変わらない表情で手摺りの上に飛び乗る神威。
「まぁ、そこまであの侍が面倒みてくれるとは思わないけど」
くすくす、と笑いながら傘を突き出す。
「ごめんね?さっき嘘吐いた。ホントのこと言うね。」
傘を握り締めたまま両の手を挙げる。その後小首を傾げながら薄く目を開く。
「率直に言う。あの侍と一つ殺り合いたい。今、どこにいるのか言ってもらおうか」
「いやネ。私は銀ちゃんを差し出すようなことは絶対しないアル」
一方の神楽も臨戦態勢で神威を睨む。
そんな状態の妹を前に呆れたような、困ったような表情で神威は肩をすくめる。
「困ったなぁ。なら無理にでも教えてもらうしかない…かな?」
薄く閉じられた瞳から一転、大きく目が開かれ傘が火を吹く。
神楽がそれを身軽に避け、傘を振りかぶる。
「中途半端に力を持つと自分は強いと過信するんだ。そんなんじゃあの侍は守れないね。だから、前も言ったろ。弱い奴に用はないって」
「私は弱くないアル!」
ただ、傘をぶつけあう。ただ繰り返す攻防。一方は笑いながら、一方は明らかな敵意を剥きだしにしながら。
「弱い奴に興味はない。とっとと死ね」
傘を振り払った瞬間、神楽が地面に綺麗に着地する。
「ほーら、妹だなんて思っちゃいないネ。私は、弱くないアル。私一人でも銀ちゃんを守ってみせるネ。その邪魔をするなら神威も許さないネ」
「許す?そんなに上の立場だったっけ?」
くす、と神威が笑う。神楽も薄く笑い、銃を撃つ。その後直ぐに走り出し、神威に飛び掛る。
「小ざかしいね」
大きく後ろに飛び退いて神威は笑う。
「そこまであの侍を守りたいの?」
神威は再確認のように神楽に向けて言う。
「当然ネ。銀ちゃんも新八も、私が守ってやるネ」
「ふぅん、まぁ精々頑張ったら?まだ伸び代がありそうだ。次の楽しみに取っておくよ」
手をひらり、と振って2階から飛び降りる。神楽はそんな兄貴の姿を追うことさえせずにただ見送る。
「………どうせなら、銀ちゃんみたいな兄貴が欲しかったネ。そうじゃなくても…昔の神威が良かったネ」
寂しそうに、呟いてつい先刻まで神威がいた手摺りに肘を乗せて、目を細めた。
                 -fin-
一度はやりたかった神威VS神楽。でも仲の良い二人の方がいいな。…って明らかに友人に影響されてる(笑)

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あきゅろす。
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