違った物語も、悪くない。
どきどき(藤花
なんで、こんなことになっているんだろう………!!!

はーとどきどき

花巻は、顔を真っ赤にしながら腕に持ったノートをぎゅっと抱きしめる。
ちら、と上を見上げてみれば数歩先で頭をかきながら辺りを見回す藤がいて、またボッと顔を赤くして俯く。
「(〜っ…なんでこんなことに…!来世ぶんどころが来々世ぶんの運も全部使いきっちゃってるよもうどうしよう………!!)」
また上を見上げて、顔を赤くして俯く。
遡れば数分前。図書館で勉強しようと家を出て数分、十字路でばったりと彼に出会った。
「おう、花巻」
軽く手を挙げて首を傾げる藤君。その顔を見ただけでもう失神寸前の花巻だったが、更に目を剥くようなことを藤は口にする。
「花巻も図書館行くんだろ?どうせなら一緒にいかねぇ?」
「(あぁ、もう自分一生ぶんの運どころか幸せを全部今使い果たしてる…!!)」
花巻は赤くなる頬をかばんで隠しながら、とりあえずいつものようなドジをしないことを願った。

「花巻、何こけてんの?」
まぁ、そんな願いも神には届かなかったワケで、案の定花巻はど派手に転んだ。
教科書やペンなどの持ち物全部をぶちまけて、派手に転んだのだ。
「(やっちゃったやっちゃったやっちゃった……………!!)」
慌ててがさがさペンやら何やらを拾いながら泣きそうになる。
藤も、足を止めて少し戻って教科書などを拾うのを手伝ってくれる。その優しさに花巻はまたドキっとするが、直ぐ申し訳ない気持ちと自己嫌悪に苛まれる。
そんな感じに黙々と拾って、片付けていたところで藤が口を開く。
「ったくさ〜、何してんの?ホント花巻ってドジだよな」
もっともです、と思うのと同時に恥ずかしくなって俯く。
「花巻もさ、堂々としてりゃ普通なのに。大体お前、普通にしてりゃ可愛いんだから落ち着けよ」
花巻がぴたっと動きをとめる。
「え……………」
「あーほらまた落としてんぞ。しっかり前見ろって」
「あ、ごめんなさい!!」
さきほどの藤の台詞を思い出して、手を滑らせたら藤がそれを上手にキャッチする。
「何やってんだ花巻」
いたずらが成功したときのような笑みを浮かべて拾い上げたノートを花巻に差し出した。
             -fin-
「あれ、藤君だよね?」
「ハァ?藤ぃ?んなワケねぇだろ。ってマジだ。藤と花巻じゃねぇか」
「藤君あんな風に笑うんだねぇ」
「アシタバ親みてぇだな」



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あきゅろす。
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