違った物語も、悪くない。
飼殺(高杉と銀時
暗闇から瞬時に獣は現れ、食い殺そうとその牙を白夜叉に突き立てた。

飼い殺すなよ

「ったぁ〜ちっと切れたじゃねぇかどうしてくれんだ?あぁ?こるぁ高杉ィ」
瞬間的に避けたのか、ちょっと息を荒くしながら勝ち誇った笑顔を浮かべる、白夜叉。
その手は肩を押さえ、僅かにだが血がにじんでいる。その血を吸った刀を大きく振り、腰元に戻し、笑う獣。
「よぉ、銀時ィ。ちょっくら俺に食い殺されろよ」
そう言った後再び刀に手をやりながら笑う。
「勿論お断りだバカヤロー。つーか?どっちかっていうと俺は食われるより食うタイプだから諦めろ高杉」
へらへら笑いながら、木刀に手をやる白夜叉こと銀時。
その様子を見て、至極嬉しそうに口元を歪めて高杉は銀時に向かって刀を向ける。
「俺の中のケモノは未だにテメェの血が欲しいと疼くのさ」
だから死ねよ、と高杉が聞こえない声量で言った後銀時に飛び掛る。
「ハッ、んだそりゃ。新たな告白か何かかい?高杉よぉ」
一方の銀時は軽口をとめることもなく高杉の刀を受け止めて、笑う。
「どうせ告白されるならもっと美人で可愛い女の子がいいねぇ」
そんなことを言いながら刀を振り払う。その勢いと共に地面に着地する高杉。
「テメェが女から告白?んなモン一生涯の内に一度もねぇだろうが」
「あーあーそういうこと言っちゃうー?ちょっと銀さん傷ついちゃうよ?」
高杉が首を傾げながら言えば銀時もふざけながら返してくる。
そして、二人が同時に動いた。激しく刀をぶつけ合い、息をするのも忘れるくらいの早さで攻防は続く。
一度間合いを取った二人が黙って相手を見つめる。
高杉は口を開いた。
「何時の間に牙を折ったのかと思っていたがテメェの牙は今も健在のようだな銀時ィ」
その言葉を聞いて、銀時がへらへらと笑う。
「んなこたぁねぇよ。俺の牙は当の昔に自ら折った」
「銀時。飼い殺すなよ。その牙」
意地の悪い笑みを浮かべて、刀を掲げる。
「ただ寂しく残った牙にはちゃんと血を吸わせてやらねぇと、ぽっくり死んじまうぜ?」
銀時は先刻と同様、肩に手を当てながら興味なさ気に高杉を見て「とっくの昔に死んでらぁ」と呟いた。
              -fin-
あの瞬間にもう俺の牙は使い物じゃなくなったさ。


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あきゅろす。
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