違った物語も、悪くない。
髪の色(ハウル
「ソフィー!見てよ!」
バタバタとあわただしく階段を駆け下りて、凄く嬉しそうな声色で彼女を呼んだ。

髪色一つ

「あら、どうしたのハウル」
フライパンを片手に卵を割り、殻をひょい、と炎の中に投げ込んでからフライパンを揺らす。
炎の中に投げ込まれた殻は炎が大きく口を広げてむしゃむしゃと食べ始める。
比喩などではなく、まさにその通りに口を動かすような動作で炎が口を開く。
”ハウル。またまじないしたのかよ”
むぐむぐ、と少し可愛いとも思える様子で目の前でフライパンを覗き込む女性に声をかける。
”ソフィー。またハウルの奴まじないしたみたいだぜ。見てみろよ”
「え?」
炎にそう言われはじめて後ろを振り返るソフィー。
そこには嬉しそうな笑顔で髪を持ち上げるハウルがいる。
しかしその色は以前のような黒ではなく、最初のような綺麗な金髪になっていた。
「あら!ハウルったらそんな髪色に!」
「綺麗でしょ!ソフィー!」
ソフィーにぎゅう、と抱きついてハウルが嬉しそうに声を上げる。
「ほら!こんなに美しいでしょ!」
「あら、染めちゃったの。ハウル」
ちょっと残念そうにハウルの髪の毛を覗き込んで眉を下げる。
「え?ソフィーこの色嫌い?」
両側のもみあげらしい髪をつかみがっかりするように目を見開いて肩を下げる。
それを聞いてちょっと焦ったように弁解するソフィー。
「あ、違うのよハウル。今の色も綺麗だと思うけどただ前の黒髪も好きだったからちょっと残念っていうだけ」
「ねぇ、ソフィーはどっちの色が僕に似合うと思う?」
ちょっと真剣な顔つきになって、ソフィーの目をじっと見ながらハウルは問う。
じゅう…と卵のこげる音がするがソフィーは動きを止めたまま微笑む。
「いやね、ハウル。私はあなたが好きなのよ。あなたの髪の色がどんな色でも私、好きになれるわよ」
それを聞いてハウルは幸せそうに笑う。
「じゃあ、今度はソフィーと同じ色にしようかな?」
そんな冗談を言いつつハウルはソフィーを抱きしめた。
               -fin-
あなたの顔がいいんじゃないの。あなたのすべてが大好きなの。





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あきゅろす。
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